マザルブルの間 −出版情報その2−


 トールキン及び『指輪物語』に関する書籍、また関連ゲームなどもかなりの点数が出版(発売)されています。ここでは、私の低いアンテナでキャッチしえた情報を紹介させていただきます。当然、まだまだ他にもあるに違いないと思います。ご存知の方は、是非お知らせください。(印は「ラウレリンドレナン」に準じます)


『シリーズ もっと知りたい名作の世界9 指輪物語』(成瀬俊一編著、 ミネルヴァ書房刊)★★★(2007年12月2 0日)
 
11人の書き手による『指輪物語』論が収められている。論考自体はたいへん真面目なものばかりだが、雑誌に掲載された文章の再録――改訂は施されている――なども含まれていることを考えると、2520円という価格にふさわしいかどうかは疑問。例によって、上橋菜穂子が書き手に名を連ねているだけで満足している私なのだが。

『トールキンハンドブック』(コリン・ドゥーリエ著、東洋書林刊)★★★(2007年9月23日)
 
トールキンの生涯から始まり、『指輪物語』の概略、『シルマリルの物語』との関係性などについて語られたパート1。
 トールキンを語るのに欠かせないキーワードを取り上げたパート2。
 末尾にはパート3として簡単な「中つ国事典」も収録。
 例によってマニア向け書籍という位置づけになるのだろう。

『THE LORD OF THE RINGS SKETCHBOOK 』(ALAN LEE著、HOUGHTON MIFFLIN刊)★★★(2005年11月10日)
 かなり以前からいろいろなところで話題になっていたアラン・リーのスケッチブック。タイトルのとおりスケッチ(素描)集なので完成された絵は数枚しか掲げられていない。しかし、もはやお馴染みになったといってもいい絵の「元」が見られるというのは逆に新鮮であり、感動的ですらある。アラン・リーのファンはもちろん、『指輪物語』が好きな人間なら買って後悔することのない本だろう。

『ホビット一族のひみつ』(デイヴィッド・デイ著、東洋書林刊)★★★(2005年 5月29日)
 
こんな本も出てたんだなあ。
 全く違う目的で名古屋市内の本屋に行った際、たまたま発見。
 発行日は2004年の12月10日となっている。(半年も前に出てたのかよ。)
 この本の邦訳なのだが、判型はオリジナルのものより二まわりほど小さくなったA5サイズ。
 原書を手に入れたときは内容に興味を持とうともしなかったのだが、「語義や語源からトールキンの世界創造を読み解く」(訳者あとがき)といった狙いで書かれた研究書だったらしい。(苦笑)
 日本の出版社がどういう基準で数多い『指輪物語』関連の洋書の中から翻訳する本を選択しているのかさっぱり分からないことが少なくないのだけれど、この本もそのひとつに数えてよいだろう。
 よほどのマニアしか買わないよ、絶対に。

『ロード・オブ・ザ・リング バトル・フォー・ミドルアース』(エレクトロニック・アーツ)★(2005年3月27日)
 
昨年末に立て続けに出された『指輪物語』関連PCゲームの中のひとつ。
 財政難を始めとする諸般の事情でなかなか購入する機会を得ず、ここにきてようやく手に入れることができた。
 購入をためらっていた最大の理由がとんでもないマシン・パワーを要求するという点。
 なにしろ、「ペンティアム4の2ギガヘルツ以上」及び「高性能ビデオカード」搭載が推奨動作環境。
 というわけで、マシンの買い替えと同時の購入となった次第である。
 で、肝腎のゲーム内容であるが。
 これがなかなか面白い。
 「リアルタイム・ストラテジー」というジャンルに分類されるゲームなのであるが、100体以上のユニットが一つ画面の中で戦うさまは壮観といってよい。
 映画準拠で描かれたグラフィックのクオリティも高く、ユニットの動きを眺めているだけで十分に面白い。(速攻で負けること請け合いであるが…。)
 ボイスも映画吹き替え版の声優が演じているので、映画ファンでも楽しめるだろう。
 「光の軍勢」か「闇の軍勢」かを選択してストーリーを進めていくキャンペーンモードの他、マップを選んでひたすら戦闘を味わうスカーミッシュモードやオンラインで楽しむマルチプレイモードにも対応している。(私の場合、ルーターの設定がうまくいかずにオンラインモードはプレイできていない。)
 なお、キャンペーンモードではボロミアが死なずにすむので、彼がファラミアと肩を並べて奮戦する姿を拝めてしまったりする。
 これはこれでうれしいかもしれない。

 映画のストーリーに沿って進めていくのはもちろん、サルマン様を操作して旅の仲間やローハンの軍勢を虐殺しまくるというようなダークな楽しみ方もできるあたりがひとつの魅力といえる。
 なお、ゲーム批評などを読んでみると、「リアルタイムストラテジーゲーム」としては初心者向けとのこと。(私などモロに当てはまる。)
 映画のファンなら――十分なマシンの性能さえあれば――遊んでみても後悔はしないゲームといえるだろう。
 

『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 コレクターズDVDギフトセット』(日本ヘラルド・ポニーキャニオン)★★★★(2005年2月2日)
 完結編SEEにミナス・ティリスのフィギュア、ハワード・ショアによるシンフォニーのメイキングDVDなどの特典が付属した限定版。
 
こちらに記したように発売開始後数時間で完売状態となったが、2005年2月12日現在、かなりの数がオークションに出回っている。まあ、予想通りの展開。中には「1〜3部のギフトセット一揃いで10万円」などという値段で出品している方もいらっしゃるようだ。お好きにしてください。

『現代英米児童文学評伝叢書7 J.R.R.トールキン』(水井雅子著、KTC中央出版刊)★★(2005年1月15日)
 「日本イギリス児童文学会創設30周年記念事業のひとつ」として刊行された叢書の中の1冊。
 「その生涯 ― 人と作品 ― 」と題する略伝記と「作品小論」の2部構成となっている。
 内容に関して特に目新しいものは見られなかったように思う。
 今回の映画がイギリスで制作されたような記述も見られてがっかり。研究者にとってみれば映画などは「所詮あだ花」という程度の認識なのだろうか。
 映画化が一応の成功を収めた今、新たな切り口から作家論、作品論が編まれてもよいのにと思うのは贅沢というものか…。
 ちなみにこの本、昨年の11月に出版されていたもの。全然知らなかった自分がちょっと悲しい。

『指輪物語 エルフ語を読む』(伊藤盡著・青春出版社刊)★★(2004年8月13日)
 日本初の「エルフ語」入門書。ここ数年で出版された関連図書の中の最高峰のひとつに数えてよいと思う。
 原作だけでなく映画の中で使われたエルフ語にも言及。トールキンが創出したエルフ文字「テングワール」の解説までされている。
 迷わず買うべし。

『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 コレクターズ・エディション』(日本ヘラルド・ポニーキャニオン)★(2004年8月3日)
 劇場公開された完結編のセル版DVDである。内容はもちろん映画公開時のまま。字幕は多少変更されているだろうが、まだ全編を通してみていないのでなんとも言えない。当然、ローハン軍の突撃シーンだけを真っ先に鑑賞。いやあ、やっぱりいいわ。
 それはさておき、いよいよ我々の旅の終わりも近いという感じ。SEEの発売が待ち遠しい。

『ファンタジー・アトラス トールキン<中つ国>地図』(ブライアン・シブリー、ジョン・ハウ著、原書房刊)★(2004年5月31日)
  ずいぶん前から出版の情報はつかんでいたものの、今ひとつ購入意欲が湧かずに今日まで見送っていたもの。「解説編」と「地図編」の2分冊――ただし、分売不可――で3980円(税込み)という値段に見合うだけの価値があるかと問われるといささか困る。ハウのイラストは文句なく美しいので、十二分に鑑賞に堪えうる本ではあるのだが。
 翻訳者は井辻朱美氏。例によって瀬田貞二・田中明子氏の訳業に対する不満も露なコメントを述べながらも、結局のところそれに頼り切った邦題をチョイスしているあたり、十分におかしい。

『図説トールキンの指輪物語世界 神話からファンタジーへ』(デイヴィッド・デイ著、原書房刊)★(2004年2月12日)
 原書房らしく、いつの間にかの出版。『The World of Tolkien』という本の邦訳。原著者はトールキン関係の書物を多数出版している。複数のイラストレーターによる多数のイラストが「売り」なのだろうが、この出版社の常でイラストレーターの名前は黙殺されている。原著のほうもそうなのかもしれないので断定的なことを書いてはならないのだが。

『別冊宝島 僕たちの好きな『指輪物語』』(宝島社刊)★(2004年2月7日)
 この時期には珍しく、「原作」のガイド本である。大半がストーリーダイジェストで構成されており、原作既読者にとっては得るところが少なく、原作未読者にとってはこれだけで「話題作を読了した」気になれてしまうという困った本。

『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』(ジュード・フィッシャー著、角川書店刊)★(2004年2月7日)
 映画のオフィシャル・ガイドブック第3弾である。例によって内容のほうもそれなりのもの。

『PS2版ゲーム ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(エレクトロニック・アーツ・スクウェア)★(2004年2月1日)
 
こちらのゲームの続編。基本的にゲーム・システムは前作と変わらず、アクション・ゲームが苦手な私にとっては、はっきり言って「マゾム」に近い。したがって、購入してから1か月以上経つのにまだ未開封のまま。ただし、ゲームの出来は前作よりもはるかによいらしく、巷の評判も悪くはない。「二人協力プレイモード」があるとのことでパートナー氏に水を向けてみたのだが、あっさり無視された。まあ、無理もないか。

『THE LORD OF THE RINGS THE ART OF THE RETURN OF THE KING 』(GARY RUSSELL著、HOUGHTON MIFFLIN刊)★★★(2004年2月1日)
 美術設定資料集もいよいよ完結編。いや、相変わらずいい仕事してるよ皆さん。
 ピーター・ジャクソンがインタビューで「この映画には7年間を費やした」と語っていた。もちろん、あの原作に取り組んだ以上、それはある意味当然のことではあるが、こういう資料的な本を見てみると、改めて映画作品としての凄さを感じさせられる。

『THE LORD OF THE RINGS THE ART OF THE TWO TOWERS 』(GARY RUSSELL著、HOUGHTON MIFFLIN刊)★★★(2004年2月1日)
 ありゃりゃ。どういうわけだか、この本を収納するのを忘れていた。もちろんシリーズ第2作である。前作に続いてなかなかの出来栄え。こういう手順を踏んで映画が作られているのだと思うとますます愛着も湧こうというものだ。

『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔 コレクターズDVDギフトセット』(日本ヘラルド・ポニーキャニオン)★★★★★(2003年12月6日)
 こちらの製品の続編にあたる限定版。日本では――今のところ――限定5000セットの発売とのこと で完売状態のようだ。
 スペシャル・エクステンド・エディション(SEE)のDVDに特製「スメアゴル」フィギュアが付属する。更にこうしたフィギュア製作の過程を紹介したおまけDVDも同梱されていた。「スメアゴル」フィギュアの出来はなかなかすばらしく、十分に鑑賞に値する。ただし、これひとつでは単なる置物にしかならないところが弱点。そこはそれ、ちゃーんと手が打たれていて、別売の「ゴラム」フィギュアを購入すれば前作同様ブックエンドとして使えるようになってるんですな、これが。世界限定7500個しか販売しないそうなんで、欲しい人は早めの注文が必要かも。
 驚いたのは梱包用のダンボールが、前作より一回りでかかったこと。開封してみてそのわけが分かった瞬間に脱力しましたよ、私は。このセット、アラン・リー挿画によるすばらしい外箱に収められているのだが、先の「スメアゴル」フィギュアを取り出すには、箱をぶっ壊すしかないんですな。なにしろ強力な接着剤であちこち強引にくっつけちまってあるので、丁寧にはがすことなんて不可能。で、コレクター道を邁進する我々のようなファンのために、空の外箱が1個、もれなくついていたというわけ。いや、畏れ入りました。

『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔 コレクターズ・エディション』(日本ヘラルド・ポニーキャニオン)★(2003年10月1日)
 いうまでもなく劇場公開された第2作のセル版DVDである。またしばらくの間は「指輪」貧乏が続くことになると思う。その第1弾といったところか。前作のDVDでは「字幕の改善」という奇妙な点が売り文句になったりしていたことを思い出さないわけにはいかないが、今回はそういったことはなし。まあ、当然ではある。それでも若干字幕の手直しが施されている模様。まだ吹き替えバージョンしか見ていないのでなんともいえないが。
 ところで、前回のパスポートに引き続いて、今回は「モルドール特別通行許可証」とかいうものが付属している。私のには「レゴラス」バージョンが入っていた。このほかに6種類の絵柄があるようだ。ホントはゴクリがよかったけれど、アルウェンでなかったということで満足しておくことにしよう。12月に手に入る「ギフトセット」に期待。

『ペーパームーン 指輪戦争ファンタジイ』及び『ペーパームーン 指輪大戦争ファンタジイ』★★★★★★(2003年7月20日)
 1979年に発売されたムック。かなり以前に一部のコピーだけは入手していたのだが、この度、知己の方から無償で譲っていただいた。まさか手に入るとは思っていなかったので、喜びも一入である。
 2冊とも内容的にはラルフ・バクシのアニメーション『指輪物語』を中心にして構成されているが、荒俣宏、手塚治虫、小野耕世、山田ミネコといった顔ぶれが映画や原作について語っている。
 手塚ファンでもある私にとって見れば二重の意味で超貴重なアイテム。げっこさんには感謝の言葉もない。

『ロード・オブ・ザ・リング 映画版』(文渓堂刊)★★(2003年4月19日)
 映画第1作の公開に合わせて出版されたこの本の翻訳。したがって、内容のほうも第1作オンリー、それもストーリーのネタばれになるようなことはほとんど書かれていない。加えて、明らかに子供向けに書かれている。今さらこんな本が出るというのもおかしな話ではある。便乗商法にしてもいささか乗り遅れの感は否めないところだ。翻訳権の取得に手間取ってしまったのだろうか?

『指輪の力 隠された『指輪物語』の真実』(ジェーン・チャンス著、早川書房刊)★★(2003年4月19日)
 英米文学の専門家による本格的な『指輪物語』論。ちょっと前に紛らわしいタイトルの本が出ていたため、同工異曲の内容かと思っていたが、なかなか読ませる本であった。日本で出版された研究書の中では上位に位置付けてもよいのではないかと感じた。実のところ、購入したのは1か月も前。読むのにそれなりの根性が必要だったのも事実である。老眼が進んできたせいでもあるんだけどね。

『指輪物語 フロドの旅 「旅の仲間」のたどった道』(バーバラ・ストレイチー著、評論社刊)★(2003年2月22日)
 待望久しかったこの本の邦訳がついに出版された。それも、最良といってもよい翻訳者を得て。
 多くは語るまい。原作ファンであるならば持っているべき本であると思う。(できれば
この本も一緒にね。)
 余談になるが、本書の出版とほぼ時を同じくして評論社の会長である竹下みな氏の訃報がもたらされた。皮肉なことにその意味でも記憶に残る本となってしまった。合掌。

PS2版ゲーム ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』 コレクターズBOX(エレクトロニック・アーツ・スクウェア)★(2003年2月15日)
  ご存知のとおりのビデオ・ゲームである。アクション・ゲームがからっきし駄目な私にとっては「マゾム」としか言いようがないので、こちらに収めるべきかどうか悩んでしまった。実際、まだ一度もプレーしていないし。プレーをしてみた後に何か書き足すことがあるかもしれない。
 「コレクターズBOX」の内容は、メモ帳と携帯ストラップ。これに3000円分の価値を見出せるかどうかは評価の分かれるところだろう。

『ロード・オブ・ザ・リング 公式メイキングブック』(ブライアン・シブレイ著、角川書店刊)★(2003年2月9日)
 映画の舞台裏を垣間見ることのできる本。第1部だけでなく第2部以降にも関わる内容になっていて、なかなか面白い。SEE版のDVDとかぶるところもないではないが、新たなネタもちゃんと用意されている。やはり、ファンとしては手許に置かないわけにはいかないアイテムのひとつであると言えるだろう。
 下の本と同じくこちらにも参考文献として評論社版『指輪物語』が掲げられている。ま、当然だわな。

『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』(ジュード・フィッシャー著、角川書店刊)★(2003年2月9日)
 映画のオフィシャル・ガイドブック第2弾である。内容のほうも第1弾に準じているのでそれなりのもの。末尾に「評論社」及び瀬田貞二・田中明子両氏の協力を得たことが明記されているのだけは進歩したといえるだろう。なにしろ1年前は、評論社刊行の『指輪物語』からの明らかな引用部分にすら一言の断り書きも入れていなかったのだから。ひょっとしたら、これも「字幕問題」効果なのか?(前作における角川書店の態度は、どう考えたってそれ以前の問題だが…。)

『『指輪物語』の真実』(マーク・エディ・スミス著、角川書店刊)★(2003年2月9日)
 「指輪物語上級者向け」という帯の言葉に惹かれて買ってみたところ、内容は『指輪物語』を『聖書』の視点から考察してみようというもの。1年ほど前にも似たような本が出ていた気がするのだが、キリスト教圏の人にとってみれば『指輪』はそれほどの意味合いを持つ書物であるということだろう。残念ながら、私には理解しがたいところがあるのだ…。いや、面白いことは面白い。くれぐれも誤解なきよう。

『『指輪物語』世界を読む われらが祖父トールキン』(カレン・ヘイバー編、原書房刊)★★(2002年12月31日)
 原題「Meditations on Middle-Earth」の邦訳(正確には抄訳)。例によって出版社の都合によって、とんでもない邦題がつけられてしまっている。内容のほうはトールキンに影響を受けた作家たちによるトールキン原体験や評論といった趣になっており、なかなか読み応えがある。末尾に収録された「謎の鼎談」を除けば納得の1冊である。購入の価値は十分にあると感じた。

『ロード・オブ・ザ・リング アートブック』(ゲーリー・ラッセル編、角川書店刊)★★(2002年12月31日)
 まさかと思っていたのだが、ついに邦訳が出てしまった。それも原書よりかなりお得な3200円という価格で。(原書についてはこちらを参照のこと)
 どこかの出版社のようにサイズを縮めてしまうという暴挙にも出ていないので、原書購入を見送った方にも安心してお薦めできる。できれば、第1作公開中に出版してほしかったものだが…。
 なお、この本の帯を見ると2003年早々からまた関連本の嵐が吹き荒れそうな予感。破産覚悟で買いまくることになりそうだ。

『ファンタジー画集 『指輪物語』の世界』(原書房刊)★★(2002年12月19日)
 原書房による『指輪物語』関連のイラスト集第2弾である。第1弾とは異なり、ジョン・ハウ作品のみで構成されている。というのも当然のことで、この本はこれの邦訳なのだ。邦題のセンスの悪さはこの出版社の特徴。例によって本のサイズは縮められてしまっているし…。しかしながら、ハウのイラストのすばらしさには文句のつけようがない。最近になって彼自身の公式ウェブサイトもオープンしているようだ。ファンとしてはどんな形にせよ、彼の作品集が日本で出版されたという事実を喜ぶべきなのだろう。

『ロード・オブ・ザ・リング コレクターズDVDギフトセット』(日本ヘラルド・ポニーキャニオン)★★★(2002年12月6日)
 当初、日本での発売の予定はなかったが、ファンの熱望に応えて――あるいは単純に商売上の理由で――11月11日に予約受付が開始されたもの。日本では限定5000セットの発売とのことだ。
 12月4日に発売されたスペシャル・エクステンド・エディション(SEE)のDVDに特製「アルゴナスの門」型ブック・エンドが付属する。小さなおまけではあるが、登場人物の写真を用いた16枚組みの絵はがきセットも同梱されていた。
 定価ベースで比較すると通常のSEE版DVDとの価格差は3000円ということになる。このブック・エンドにそれだけの価値を見出せるかどうかということであるが、私は文句なく満足した。本当によくできている。
「そんなにブックエンドにこだわるなら、US版を買ったほうが安くついただろ?」なんてツッコミは厳禁。「限定」という言葉に弱いのがコレクターというものである。別のところにも書いてあるとおり、我が家には2つのセットが届いた。ひとつは未開封のまま完全保存版ということになる運命である。これぞコレクターの王道というべきであろう。(単なるバカという説も有力だが。)
 なお、本日現在、まだ若干の在庫が残っているようだ。2つも買ったのは日本広しといえども我が家ぐらいか?

『ロード・オブ・ザ・リング コレクターズ・エディション』(日本ヘラルド・ポニーキャニオン)★(2002年10月3日)
 待望の日本語対応版DVDである。既にUK版は持っていたが、やはりわたしのような英語音痴には日本語版は嬉しい。公開時に巷でさんざんな評判だった日本語字幕がずいぶん改善されていて、違和感なく楽しむことができた。クレジットの「字幕版協力:田中明子 評論社」に納得。たしか、公開前にも田中氏は意見を求められはしたものの、その際は配給会社側に冷遇されたとの噂を聞いた。字幕があれだけの批判を受けて、ようやく表舞台に立っていただけたことになる。
 「まだまだ言いたいことが山ほどある」というファンも多いと思うけれど、一応の勝利を勝ち取ったと言ってよいだろう。しかし、こうなってみると、「劇場公開時(戸田奈津子)オリジナル字幕」が懐かしくなるのは私だけだろうか?(もちろん「記念」としての意味だけしか持たないけれど…。)
 特典として付属してきた「中つ国パスポート」はなかなかの力作。私のは茶色の表紙で種族はドワーフ。旅券番号の頭文字は「GM」となっていた。既にあちこちの掲示板で語られているように「ギムリ(GIMLI)」から採られたものだろう。12月のエクステンド・エディションにも付属するようなので、別の種族が当たるのを楽しみにしていたいと思う。

『指輪物語とトールキン・ワールド』(TDKコア)★★(2002年10月2日)
 2001年に制作された「J.R.R.Tolkien Master of The Rings」の日本語版。これを見てしまった直後に鑑賞したので、ずいぶんまともな内容に思えた。トールキン自身の映像や朗読がいくつか収録されているが、基本的には関係者や影響を受けた人々、研究者といった面々のインタビューが中心。その背景にヒルデブラント兄弟のイラスト及び謎の3DCGが流れるといった形になっている。このCG画像のちゃちさのおかげで今回の映画のできばえが再認識できる仕掛けになっている。(もちろん、制作者にそんな意図はなかっただろうが。)
 インタビューの中では士官学校の教官とかいう人物の発言が興味深かった。(首を傾げたくなることも言ってはいたが…。)
 なお、本CDの日本語版監修者として井辻朱美氏の名がクレジットされているが、翻訳名はほとんど瀬田訳準拠。氏があれほど悪しざまに言っていた「馳夫」すらそのままなのには笑えてしまった。よほど我々が怖いらしい。
 もうひとつツッこんでおくならば、ナビゲーター役のナポリとかいう人物が終始一貫して「サウロン」を「ソロン」としか聞こえない発音をしていたのがなんともはやであった。

『ロード・オブ・ザ・リングを創った男』(徳間ジャパンコミュニケーションズ)★★(2002年9月6日)
 1996年に制作された「J.R.R.Tolkien A Film Portrait of J.R.R.Tolkien」を日本語ナレーション及び字幕を付してDVD化したもの。おそらく、日本で初めて「トールキンの生前の映像」が収録されたDVDであろうと思われる。 パッケージには「トールキン協会オフィシャル」と明記されている。
 内容のほうは、生前のトールキンを知っている何人かの人物に対するインタビューを編集したもので、トールキン自身の映像はほんのちょっとしか出てこない。それを期待して購入するとがっかりすることになるだろう。ただ、クリストファ・トールキンやシッピー教授、レイナー・アンウィンといった、トールキンファンにはこたえられない人物の口から語られるトールキン像は一見の価値があるといってよいものと思う。特にクリストファ・トールキンの語りには父親に対する深い畏敬と愛情が感じられて嬉しい。
 なお、字幕や日本語ナレーションには明らかな不備がある。冒頭にいきなり登場する「ロスリアン」とかいうナレーションで脱力してしまわないようにしないと、本編を楽しめなくなること請け合いである。さらには、チャプター7で出てくる「C.S.キャロル」という字幕にも唖然とさせられるし、固有名詞
だけは瀬田貞二訳に準拠しているのもいささか気にはなる。だが、こうしたマニアックなDVDが日本で発売されたという事実だけでも大きな価値があるような気がするのである。

『トールキンによる『指輪物語』の図像世界(イメージ)』(W.G.ハモンド,C.スカル著、原書房刊)★(2002年6月24日)
 1995年に出版された『J.R.R.Tolkien Artist&Illustrator』の邦訳である。
 絵画作家としてのトールキンを知るには好適の書であることは間違いない。ただ、トールキンファンの間ではいろいろと言われることの多い出版社と翻訳者による本なだけに、すぐにミョーなところに目が行ってしまう。まず、邦題の意味不明さに首をかしげる。判型を原書よりも小さくしてしまった神経にもブーイングしたくなろうというもの。内容以前の部分でイチャモンをつけたくなってしまう本って、なんなのだろう。いや、だがこれはもう私自身の姿勢の問題。トールキンの絵をこれだけたくさん見られるというだけで貴重な本なのである。原書のほうが値段も安いし、判も大きいし…なん ていうのは野暮というものだ。黙って「買い!」に行くべし。

『THE LORD OF THE RINGS THE ART OF THE FELLOWSHIP OF THE RING』(GARY RUSSELL著、HOUGHTON MIFFLIN刊)★★★(2002年6月10日)
 題名から察しがつくように、映画の美術設定資料を収めた本。アラン・リーやジョン・ハウによるラフスケッチの類だけでなく、映画では今ひとつ姿かたちがはっきりしなかったバルログのクレイモデルの写真なども収録されていてうれしくなる。我が家ではパートナー氏がすっかりお気に入りである。
 現段階でUK版とUS版の2種類が存在するが、Amazon.com
.jpで入手しようとするとUS版のほうが若干お買い得である。いずれにしろ4000円以上はする本なので決して安くはないが…。おそらく日本語訳が出る可能性は低いと思うので、「映画がとても気に入った」という方は買って損のない1冊であると思う。

『BBC RADIO COLLECTION The Lord Of The Rings』(BBC発売)★★(2002年5月11日)
 長いこと迷いに迷って、ついに手に入れた1981年にBBCが制作したラジオドラマのCD。現在入手できるさまざまなバージョンのうち、私が購入したのは、本作品でフロドを演じ、2001年公開の実写映画ではビルボを演じたイアン・ホルムによる追加録音の収められた最新版(2001年〜2002年発売)で、三部作がそれぞれ4枚のCDに収録されている。(「The Return Of The King」の4枚目のCDには全編のサウンドトラックが収められている。)
 英語などほとんど分からない私であるが、おおよその内容はつかむことができる。それだけよくできたドラマであるということの証明であると思う。今さら書くのも恥ずかしいけれど、紛れもなくファン必携のアイテムである。旧版ならばAmazon.com.jpでも8000円そこそこで買える。CD13枚組でこの値段はリーズナブルです!

『「指輪物語」 その旅を最高に愉しむ本』(吉田浩著、 三笠書房刊)★(2002年5月6日)
 「王様文庫」と題されたシリーズの中の1冊。冒頭に「本書は、J・R・R・トールキン作『指輪物語』三部作と、その前段を描いた『ホビットの冒険』の≪ダイジェスト版≫であり、……概要書である。」と断られているとおりの内容である。極論すれば、手っ取り早く『指輪』を読み終えた気分になりたい人向けの本であって、それ以外の価値はないと思う。我が愛すべき「木の鬚」が終始一貫「木の髭」と記されているだけでも焚書ものだよなあ…。なんでこうなるの?

『「指輪物語」 中つ国(ミドルアース)の歩き方』(柊美郷とファンタジー研究会著、青春出版社刊)★(2002年4月27日)
 関連本ブームもそろそろ一段落かという時期の出版。いろいろ頑張ってはいるが、どれも中途半端という感は否めない。
 どうしても重箱の隅をつつきたくなってしまう人間としては、p86における記述の間違いは気になる。そう、キアダンがナルヤをガンダルフに譲ったのは「指輪戦争後」ではないのだ。著者自身が「ナルヤが欲しい」と公言している以上、こういうミスは決して許してもらえないと思うのだが。せっかく「エレギオン(柊郷)」からペンネームをいただいたのだから、もう少し校正をしっかりしてくれないと、と思う。

『ユリイカ 4月臨時増刊号 総特集「指輪物語」の世界 ファンタジーの可能性』(青土社刊)★(2002年4月9日)
 書き手の顔ぶれや内容など非常に充実した特集であると言ってよいのではないかと思う。映画に言及した部分も多く、賞味期限が気になるところはあるが、そこは雑誌の宿命ということで納得しておきたい。
 『指輪』に対する賛辞ばかりでなく、辛口な批評も収録しているところに逆に好感が持てた。また、上橋菜穂子やル=グウィンの文章が読めたのも個人的には満足である。
 この雑誌、10年近く前にもトールキン特集を組んでいた実績がある。前回も今回も本邦初訳のトールキン作品が掲載されていたあたり、出版社の意気込みが感じられてうれしい。

『ロード・オブ・ザ・リング 聖なる旅の黙示録』(カート・ブルーナー他著、PHP研究所刊)★(2002年3月30日)
 今年になって出版された関連本の中では異色の存在といってよさそうな本である。帯に記されている「世界の二大ベストセラーが奏でる究極のハーモニー」というコピーが意味深長。『指輪物語』のストーリーの流れに沿いながら、登場人物たちの言動を『聖書』の言葉に結びつけていく、というような基本構成になっている。人生訓というのか箴言集というのか、そんな雰囲気。悪い本ではないと思うが、『指輪物語』や映画『ロード・オブ・ザ・リング』の解説を期待して購入すると肩透かしを食らうことになる。星の数ほど存在するであろう本場のトールキン関連本の中からこの本が選ばれて邦訳されることになった経緯に興味が湧いてきてしまう。

『鳩よ!4月号』(マガジンハウス刊)★★(2002年3月21日)
 60ページに及ぶトールキン特集が組まれている。かの遺稿集『Unfinished Tales』の中から「イスタリ」の項が翻訳されているのが特筆もの。一部とはいえ、この本が公式に翻訳されたのは初めてのはずなので、これだけでも500円は惜しくない。トールキン研究家の第一人者といわれるトム・シッピーの文章も収録されてい てお買い得だ。個人的には、図版として使用されている「MECCG」のカードぐらい統一してほしかった気はするけれど。(なにしろ、日本語版も英語版も、更に限定版も非限定版もごちゃ混ぜなのだ。ま、分かる人にしか分からない話なのだが。)

『指輪物語ガイドブック』(イアン・ローソン他著、 イースト・プレス刊)★(2002年3月21日)
 これもまた便乗本のひとつだが、内容 はなかなかしっかりしているといえると思う。特に、過去の『指輪』映像化の歴史や今回の映画化までの過程をまとめた第3章と第4章は参考になる。バクシ監督のアニメに関して私が誤解していた(無知だった)部分を教えられただけでもうれしかった。

『「指輪物語」の秘密の教科書』(綾野まもる著、データハウス刊)★(2002年3月10日)
 これもお約束の便乗本である。内容的に目新しいものがあるわけではなく、コレクターでもないかぎり買うまでの価値はないかと思う。ざっと見ただけでもいくつかの誤植を発見…。(スマルグってなんじゃ?)
 しかし、なによりもいただけないのがこの本のタイトル。ご存知の方も多いと思うが、同じ出版社から『ハリーポッターの秘密の教科書』と題する「ハリポタ」関連本が出ており、今回の本はそれにも「便乗」した形になっている。「ハリポタ」の場合「教科書」はかなり重要な 小道具であるから、それを冠した題名も許されると思うけれど、『指輪物語』と「教科書」とは結びつきようがない。よもや今後もずっと「秘密の教科書」シリーズを出版し続けるつもりじゃあるまいな…。

『「指輪物語」のファンタジー・ワールド 指輪をめぐる環』(粥村寄り合い編著、アートブックス本の森刊)★(2002年2月26日 /3月3日追記)
 正直なところ、この本については論評する資格がない。なぜなら、私自身の文章が収録されており、あまつさえ、少しばかり編集にも首を突っ込んでしまったからだ。
 インターネット上に存在する多くの『指輪』ファン・サイトに収められた文章や絵を寄せ木細工のように纏め上げたという成り立ち上、一貫性に欠ける部分があるのは事実ながら、各執筆者の『指輪物語』に対する精一杯の愛情が伝わってくる本であることだけは保証できる。
 それにしても、最後にある「附章」の文章だけが奇妙に浮いて見えるのだが…。
追 記

 ガーン!!…自分の書いた文章にとんでもないミスがあるのを発見してしまった。p180にある「スマウグとはなれ山」は「スマウグとお山」の間違いではないか。ホビット穴があったら入りたい…m(__)m

『「指輪物語」冒険の手引き』(坂本犬之介+オフィス新大陸著、KKベストセラーズ刊)★(2002年3月1日)
 サイトのURLを載せることを承諾したところ、献本としてお送りいただけた。
 冒頭のあらすじ紹介があまりにもネタばれ過ぎるのが難点だが、後半でQ&A方式を採用するなど、それなりに工夫が凝らされていて面白い。 もちろん、「?」マークのつく説明もあるけれど…。
 さて、「指輪のファンサイトはあるの?」と題された項目で全部で6サイトが紹介されている。その中では間違いなく私のサイトが最もおちゃらけていて、恥ずかしさでいっぱい。スミアルがあったら入りたい(~_~;)

『ロード・オブ・ザ・リング 「指輪物語」完全読本』(リン・カーター著、角川書店刊)★(2002年2月26日)
 ずっと以前にこういう題名で出版されていた本に若干の改訂を施したうえで出版したもの。資料的にはかなり古いものと言わざるをえず、前掲の本を所有している者にとって改めて購入する価値は薄い。そのうえ、愛蔵版と文庫版の二本立てというラインナップ。収集マニアにはつらいものがある。さすがの私も文庫本を購入するにとどめた。
 それにしても、恐るべきは角川書店。最新のトールキン研究本の邦訳を出せるだけの資本を持っているはずなのに、既出本を模様替えするだけで済まそうという態度が凄い。打算だけで本を出版していると批判されても仕方ないのではなかろうか。そういえば、「ハリポタ」がブームになりかけたときにも、真っ先に便乗本を出版していたよなぁ、角川書店。

『指輪物語完全ガイド J.R.R.トールキンと赤表紙本の世界』(河出書房新社刊)★(2002年2月23日)
 
関連本出版ブームのさなか、さりげなく、ほんとうに静かに出版された一冊。しかし、他の便乗本と一括りにはできない好著である。『ホビットの冒険』と『指輪物語』の作品解説だけでなく、成立に至る経緯や改訂の過程など、要所を押さえた内容になっている。後半には1970年代に雑誌に掲載された記事の再録もあり、資料としても貴重。
 装丁の地味さといい、帯の言葉のおとなしさといい、埋もれていってしまうことを運命づけられた本であるには違いないのだが…。
 なお、帯の裏表紙部分に紹介されている『石と笛』と題するドイツ製ファンタジーは、一読に値する傑作であることを付け加えておきたい。

『ロード・オブ・ザ・リング 公式ガイドブック』(ブライアン・シブレイ著、角川書店刊)★(2002年2月18日)
 映画公開に合わせて出された解説本のひとつ。映画成立までの経緯や設定資料などが豊富な写真とともに紹介されている。著者が、かの有名なBBCのラジオ・ドラマを生み出した人物であるというだけでも購入の価値があるといえるのではないだろうか。
 タイトル以外でいちばん気になったのは帯の文句「宇宙を変えた指輪のものがたり」と、出演者紹介のところで「セレボルン」が登場してしまったことだ…。

『ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間』(ジュード・フィッシャー著、角川書店刊)★(2002年2月18日)
 上の本と同時出版されたもの。こちらは主要登場人物を写真入りで紹介した内容である。購買層を低く設定したものらしく、活字が大きめであるだけでなく、ルビが豊富に振られている。
 明らかに評論社の翻訳からの引用と思しき部分があるのだが、
特に注釈もないのが気になる。上の本と違って、こちらではちゃんと「ケレボルン」になっているあたりがなんともはや…。
 もうひとつ突っ込みを入れるならば、帯の言葉。「指輪を手にした者が世界を救う。」って、いったい…。

『「中つ国」歴史地図 トールキン世界のすべて』(カレン・ ウィン・フォンスタッド著、評論社刊)★(2002年2月10日)
 こちらで紹介した本の邦訳版である。著者が地理学の専門家ということで、そのこだわり具合も並大抵ではない。『指輪物語』の地理関係に悩まされたファンは少なくないはず。値段は決して安くはないが、ぜひとも手元に置いておきたい一冊である。

※相田信敏氏よりゲーム関連の情報をいただきました。 こんなゲームが出ていたんですね。★★★★★★(2002年1月 23日)
『WAR OF THE RING』(SPI)
 
アメリカSPI社のボード・ゲームです。厚紙製のゲーム盤面がフルカラーでとても美しく、中つ国の地図として飾るだけでも価値があります。ゲームは難解で所要時間(日数?)も長大なため、ゲーム・システムの緻密さに感心しただけでプレイしていません。(ホビージャパン社の依頼で解説書の翻訳をしたのですが、結局日本版は発売されませんでした)
The Fellowship of the Ring』(I.C.E.)

 シュミレーション・ゲーム。セット内容(ボード、カード、駒、サイコロなど)は1のSPIのものと似ている。ただし、盤デザインはSPIの圧勝!
『Riddle of the Ring』
(ホビー・ジャパン社)
 
I.C.E.社のシステムをホビージャパンが日本語版として発売したもの。複数人でプレイする「簡易型シミュレーション」とでもいうか、紹介した中では一番遊びやすそう。

『トールキン ―『指輪物語』を創った男―』(マイケル・コーレン著、原書房刊)(2001年10月12日)
 
『指輪物語』の映画化に合わせて出版されたと思われる本の翻訳。原書房のトールキン関連本というと尻込みをする向きもあるだろうが、今回はそれほど恐れをなす必要はない。題名から分かるとおり、『指輪物語』の原書名を「指輪の王」と言って譲る気配のない人物による翻訳ではないからだ。そう、訳者は井辻朱美氏なのである。
 それはさておき、内容のほうは極めて平易で読みやすいといえると思う。私が今まで知らなかった事実にも言及されていたりして、十二分に楽しめた。1時間もあれば通読できてしまうので、その意味でもお薦めである。

『絵物語 ホビット ―ゆきてかえりし物語―』(ディヴィド・ウェンゼル画、原書房刊)★(1999年10月22日)
 『ホビットの冒険』を絵物語化――というより、すっかり劇画化したものと言ったほうが分かりやすいかもしれない。オール・カラー版で、それなりに美しいと言えると思う。
 問題なのは、セリフ部分の翻訳者である。そう、原書房といえば、あの山本史郎氏。正直な話、テキストを読む気にならないので、しっかり見ていない。おそらく、2年前に出版した『ホビット ―ゆきてかえりし物語―』から大きな改変は行われていないであろうと思われる。例の「ナンタルチア!」は健在だったし…。
 それにしても、山本氏の見識を疑わざるをえないのは、本書の訳者あとがきにある次のようなくだりである。
「トールキンといえば『指輪物語』(原題『指輪の王』)で有名ですが、…以下略…
 「原題」って、あなた…。『指輪物語』の原題は『The Lord of the Rings』でしょ?

『ファンタジー文学入門』(ブライアン・アトベリー著、大修館書店刊)★★★(1999年5月23日)
 アメリカの大学教授によるファンタジー論。
「トールキンのファンタジーは、英語で読む読者にとってのいわば「心の型板」である。このことは、トールキンの作品にとって代わるような作品で、トールキンに劣らぬ人気を持つ別な作家が出てくるまで変わらないだろう。いまや、『指輪物語』になんらかの形で似ていることが、ファンタジーのジャンルの指標の一つになっているのである。」(本書・45ページ)
との基本姿勢で貫かれているため、『指輪物語』に対してきわめて好意的で、割いているページ数も多い。勢い余って、『指輪物語』批判を展開した評論家の論を粉砕しようとまで試みている。
 巻末において翻訳者に内容の批判をされてしまっているのはご愛敬か。

『フィルムブック指輪物語(前編)』(評論社刊)★★★(1999年3月17日加筆)
 ラルフ・バクシ監督によるアニメーション映画を書籍化したもの。賛否両論を受けたこの作品で、バクシ監督は大きな負債を抱え込んだとかで、結局後編は映画化されないままである。当然、フィルムブックの方も前編のみしか出版されていない。後編を探して本屋を駆けずり回った人もいるという噂も聞いたが……。
 なお、私は、これを書いている時点では、この本は未読(つまり、持っていないというわけである)。映画の方はビデオ化されたものを一度観たが、正直「うーむ」という感じであった。
 
このところ、私の周りには思いもうけぬ慶事が相次いでいた。そして、1999年3月17日。ついにこの本も我が手許にやってきた…。
 ビデオで一度見て分かったつもりになっていたが、改めてこの本を読んでみて、原作における「グロールフィンデル」登場シーンに「レゴラス」が充てられていたことにはじめて気がついた。やはり何度でも見てみる必要がある。どこかでビデオを探し出さねば…。

池本浩行氏より情報をいただきました。ご協力に感謝。★★★★★(1998年9月22日)
『幻想の解読』(天沢退四郎著、筑摩書房・1981年刊)
 
この中に、「トールキンの幻想世界」「指輪物語」論の2論文が所収。日本人が書いた論文としては、上位に位置すると思われます。

『指輪物語CCGプレイヤーズガイド』(上総理佳編訳、新紀元社刊)(1998年7月12日/8月25日・9月18日・10月21日・11月21日 ・2002年8月8日追記)
 下に紹介しているカード・ゲーム『ミドルアース ザ・ウィザード』の解説書。高橋誠氏の仲介で入手させていただいた。今度こそはゲーム内容の全貌が分かるかも、と期待していたが、やはり十分には理解できなかった。恐怖の専門用語のオンパレードで、「パソコン初心者が初めて同梱のマニュアルを読んだ時」状態である。が、それでいいのだ。私はプレイヤーになる予定はないのだし、「旅の仲間」9名が揃ったら手を引こうと心に決めているし。…でも、やはり「一つの指輪」や「ガラドリエル」のカードも欲しいよなぁ。――かくして私は「滅びの罅裂」に引き寄せられるのであった。
 
とか言っているうちに、「旅の仲間」は集結。ロリアンの奥方にもお目通りがかない、指輪所持者にもなった。さらに、あろうことか馳夫殿の許婚者まで奪い取ってしまった。それでも(いや、だからこそか?)私の足は止まらない。ゴクリに導かれるままキリス・ウンゴルに挑み「シェロブの棲処」に踏み込んでしまったのであった。嗚呼、老セオデンの運命やいかに…。
 
そして、9月18日。ついにコンプリート達成。さらに10月21日、「ザ・ドラゴンズ」もコンプリート。怒涛のように「ダークミニオンズ」へ突入!(To be continued)
 
11月21日、「ダークミニオンズ」コンプリート。これでしばらく安らかな気分で過ごせそうだ。しかし、噂によると来年には第四弾「リドレス・アイ」が出るとのこと…。やはり(To be continued)です。
 結局、第四弾が日本で発売されることはなく、英語版の発売元であるICE社は倒産、日本語版を発売していた「やのまん」も販売から手を引いてしまった。なぜかイトーヨーカドーが販売権を獲得したようだが、いつまで続くことやら…(2002年8月8日追記)

『ファンタジー画集 トールキンの世界』(原書房刊)★(1998年2月22日)
 ここ数年、トールキン関連の本の出版に熱心な原書房から、また一冊新刊が出された。下に示してある『TOLKIEN'S WORLD トールキンズワールド  中つ国を描く』(評論社刊)の続編的な趣の画集。イギリスで1996年に出版されたらしい『REALMS OF TOLKIEN』(Harper Collins)の翻訳である。訳者は山本史郎氏。かの『ホビット』新訳を手がけた方である。
 原書房様。ここまできたら、ぜひ本邦未訳のトールキン遺稿集を出版してください。

『トールキン神話の世界』(赤井敏夫著、人文書院刊)★★★★★(1998年2月22日)
 
下記、谷口氏その他の方の指摘によりその存在を知り、しばらく前から探索をしていた「本邦初のトールキン論」(同書・帯による)。絶版(1994年4月刊行)ということで入手を断念していたが、久しぶりに当たってみた神田の古書店街の検索ページでたまたま発見。早速注文したところ、1日で届いた。内容よりも書店の迅速な対応に驚いてしまった。古本とは思えない美麗な本が新品定価で買えてしまったことに大満足している。

『ミドルアース ザ・ウィザード』(やのまん社)★(1997年12月23日)
 いわゆるカード・ゲーム。「スターターデッキ」と「ブースター」に分かれている。ゲームの内容自体は私の頭では理解不能であるが、カード全てをコレクションしようとすると大変なお金と労力が必要であろうことだけは想像できた。また一つ恐ろしい世界に入り込んでしまいそう。

※谷口陽一郎氏より以下の4点について情報をいただきました。この場を借りて感謝の意を表したいと思います。(1997年10月5日着信)
『トールキン神話の世界』(赤井敏夫、人文書院刊)★★★★★

探求物語としての『指輪物語』」(W.H.オーデン、青土社刊『ユリイカ』’79年8月号)★★★★★★
 
この号は妖精物語特集。アラン・ガーナー『レッド・シフト』など関連15編ほど。

「夢見る人々(7)『ホビットの冒険』」瀬田貞二、福音館刊『子どもの館』’75年1月号)★★★★★★
 訳者自身のホビット論です。

「トールキンからM.ピークへ」(高桑啓介、中教出版刊『児童文学世界』2号)★★★★★★
 
ピークは私の最愛の作家です。特集「トールキンの三つの輪」には15編が収められています。

『J.R.R.トールキン 或る伝記』(ハンフリー・カーペンター著、評論社刊)★★
 唯一の公認伝記。“公認”というのは、遺族、友人、トールキン著作の版元の全面的な協力を得て書かれたものだからである。それだけに信頼性は高いと思われる。1992年に私が決行した「トールキン墓参ツアー」」に際しては、大変世話になった。

『トールキンの世界』(リン・カーター著、晶文社刊)★★★★
 『指輪物語』を中心に据えた、ファンタジー文学全体への案内書といった趣の一冊。ガンダルフをはじめとする登場人物の名前の源泉を『古エッダ』に見出したことが、筆者の功績の一つか。筆者は著名なSF作家。ちなみに、翻訳者は、かの日本博物学の大家(こんな表現は失礼か?)、荒俣宏である。

『トールキンとC.S.ルイス』(本多英明著、笠間書院刊)★★★★
 英文学者による論考。トールキンとルイスの人間関係に焦点を当てつつ、二人の各作品を分析している。トールキンとルイスの微妙な友情(愛情)については、避けては通れない問題を含んでいるのは事実であろう。

『TOLKIEN'S WORLD トールキンズワールド  中つ国を描く』(評論社刊)★★
 イギリスのイラストレーターたちによるトールキン世界のイラスト集。本国イギリスでは、毎年「トールキンカレンダー」が発売されているようで、それらを中心に選び出したものではないかと思う。

『トールキン指輪物語事典』(デビッド・デイ著、原書房刊)
 最近になって、にわかにトールキン関係の書物を2冊立て続けに出版した原書房の大著。『指輪物語事典』となっているが、内容は中つ国の歴史全体を俯瞰できるものになっている。ファン必携の本と言えるだろう。

『トールキン指輪物語伝説』(デイヴィッド・デイ著、原書房刊)
 原書房のトールキン本第2弾。面白いのだけれど、とにかくなんでもかんでも『指輪物語』と結びつけ過ぎている観も。
 それにしても、同じ著者名の表記法を僅かの間に変えてしまう原書房、恐るべし。

『ミドルアース・ハンドブック』(佐藤康弘著、HOBBY JAPAN刊)★★★
 副題に「指輪物語RPG完全入門書」とあることから分かるように、これはテーブルトークRPGの解説書である。しかし、当然のことながら著者は原作『指輪物語』に精通しており、RPGプレーヤーでなくても大変参考になる。
 なお、HOBBY JAPAN社からは『指輪物語ロールプレイング』と題されたテーブルトークRPGの基本セット、モジュール、言語ガイド等が数点出されている。私自身はこの世界に疎いため、基本セットと言語ガイドの2点だけを取りあえず所有しているのみ。この分野については
井上和佐(加津沙槻)さんのページMiddle-earth Fantasy Role Playingを参照されたし。

雑誌『ユリイカ 詩と批評 1992年7月号』(青土社)★★★★
 生誕百年を記念して組まれた特集号。表紙に「特集トールキン生誕百年――モダンファンタジーの王国」とある。250ページほどの誌面のうち200ページ近くがトールキン関係の記事で埋め尽くされている。中でも本邦未訳であった『The Lost Road』(失われた道)が翻訳されているのは貴重。これは中つ国第2紀の物語である。
 私は発売当時はこの情報を知らず、2年ほど前に、偶然大型書店のバックナンバー置き場で発見した。ラッキー以外の何ものでもなかった。

パソコンゲーム版『指輪物語』第一巻・第二巻(スタークラフト社)★★★★★★
 移植版ゲームの雄スタークラフト社から、PC98用として第1巻「旅の仲間」と第2巻「二つの塔」の2作が発売されている。
 第一巻は286マシン全盛時に出されたのだが、386マシンでもイライラさせられるほど動作が遅かった。また、これは私のマシンだけの問題だったかもしれないが(実際、486マシンに買い換えてから再度チャレンジしたときはノープロブレムだった……)、ハードディスクにセーブしようとした途端にハングアップし てデータが失われるという恐るべき必殺技を繰り出し、私を悩ませてくれた。
 第二巻は動作速度の大幅な改善が見られ、更にはヒントブック(ほとんど解答そのものという噂もあったが)までついているという親切設計であった。しかし、これにも恐怖のクリティカルヒットが隠されていて、私を茫然自失の状態に陥らせた。なんと苦労に苦労を重ねた末に、最後の最後、キリス・ウンゴルの場面に到達するや山々のど真ん中にフロドの顔だけが表示され、一歩も動けなくなってしまうのだった。気を取り直して最初からチャレンジしたところ、今度は無事にエンディングに辿り着くことができた。それにしても、あれが私のマシン固有の問題でなかったとしたら、多くのプレーヤーが怒りにまかせてハードディスクからゲームの削除を決行したことは想像に難くない。
 結局、第三巻は発売されることなく、スタークラフト社の名も最近はゲーム雑誌誌上で見かけない。

『指輪物語【第一巻】旅の仲間 ゲームハンドブックシリーズW――J』(楠見哲男著、BNN刊)★★★★★★
 上に紹介したパソコンゲーム版『指輪物語 第一巻』の攻略本である。結構シビアなゲームなので、高得点をマークするためには必須の書と言えるかもしれない。尚、パソコンゲーム版もテーブルトークゲーム版も「ヌメノール」を「ヌーメノル」と表記している。これらは新訳版『指輪物語』が発行される以前に発売されていた。こちらの方が原発音に近いのではないかと考え、新版が出た際に真っ先に確認したが、改められていなかった。このあたりに詳しい方があったらご教示を仰ぎたいところである。

ゲームブック『指輪物語』(?)★★★★★★
 覚えておられる方は少ないであろうが、「ゲームブック(いわゆるサイコロ本)」なるものがブームになった一時期があった。そのブームの最中、私の記憶によれば確かに『指輪物語』のゲームブックが出版されたはずである。当時、現在ほどのマニアでなかった私は、書店で見かけたその本を素通りしてしまった。今にして思えば、悔やんでも悔やみきれない失策であった。この本に関する情報をお持ちの方は、是非お知らせ願いたい。

※ ホームページ公開直後に、早速情報がいただけましたので、ここに紹介します。
『イセンガルドの密偵』(テリー・K・アムサー著、佐藤康弘訳、HOBBY JAPAN刊)
『角笛城の反乱』(ケビン・パレット ソール・ピーターズ著、佐藤康弘訳、HOBBY JAPAN刊)
「次回予定」は
『モリアの坑道』なんですが本当に出たのか?
 情報提供者は高橋誠氏です。この場を借りてお礼を申し上げます。