以下に取り上げたのは、全て一読の価値ある作品ばかりだと思います。
くれぐれも「あの作品が入ってないのはけしからん!」なんてお怒りにならないでください。
まあ、飽くまでも個人の好みの問題ですから、ね。
『どろろ』
誰が何と言おうと、私にとってはベスト・オブ・ベスト。
この作品については、語りたいことが山ほどあるものの、未だにうまくまとめることができません。
少しずつ整理してなんとか形にしていかねばと、ずっと思い続けています。
当然「ベスト・キャラクター」の第1位も百鬼丸で決まり。
『ブラック・ジャック』
今日(2000年1月21日)までこの作品について取り上げなかったのには、私なりの理由があります。
正直な話、私はこの傑作の全体像がつかみきれていないのです。
(付け加えるなら、「長編作品」に分類するのにも若干のためらいがないわけではありません。しかし、こちらのほうはなんとか説明ができるつもりです…。)
もっとしっかりとした分析を進めてからでないと何も語れない気はするものの、今後「非科学省」本省で本格的に取り上げる「予告」としての意味も込めて、ようやくここに記す決心がついた、とだけ書かせていただきます。
なお、スタアとしてのブラック・ジャックについては、こちらで少しだけ語ってあります。
『ハトよ天まで』
民話風絵物語。
ちゃんとどんでん返しが用意されているのが手塚作品らしいところ。
私がはじめてこの作品に触れたのは中学時代。
『火の鳥』目当てで友人に貸してもらった「COM」に再録されていたものを読んだときです。
その後、なかなか機会に恵まれず、全集版で全編を読み通すことができました。
知名度は低い部類でしょうが、紛れもない傑作です。
『奇子』
手塚作品の中でも異彩を放つ名作ではないかと思います。
主人公の数奇な運命と戦後政治の暗部を巧みに絡ませて忘れがたい作品。
別の場所にも書きましたが、下田警部の息子の名前が波奈夫って…。
彼って超重要キャラクターなのに。
『ブッダ』
宗教書のような題名が災いしているのか――実際、この作品の関連図書である『手塚治虫のブッダ 救われる言葉』『手塚治虫のブッダ どうしたら救われるか 実践講座』の2書(いずれも講談社発行)が、宗教書のコーナーに置かれていたのを見たこともあります――、敬遠されているきらいがあるのですが…。
いいですよ、この作品。
個人的にはアッサジ(『三つ目がとおる』の写楽保介くん好演!)が好みです。
ヤタラとブッダの出会いのシーンはよかったなぁ。
『鉄腕アトム』
この作品を抜きにして手塚治虫を語ることはできないと思います。
『三つ目がとおる』
事業に失敗した(虫プロの倒産など)ために結果的にマンガに専念できる状況になって、後期の傑作群が生み出されたといわれています。
本作品もその一つ。
1998年末から1999年はじめにかけて文庫化されましたので、入手が容易になりました。また新たな支持者を得ることは間違いないと思います。
『来るべき世界』
いわゆる「SF三部作」の中では、この作品が一番好きです。
とにかくスケールが大きいのが特徴。
ロックの悲劇はここから始まったのですね。
『メトロポリス』
これも「SF三部作」のひとつ。
ミッチイが素敵だった。
ラストシーンがせつなかった…。(作者お得意のパターンですから、ここらあたりも宮崎駿に言わせると「
手塚治虫の神の手」なのでしょうね…)
昭和20年代の作品は「描き版」であるため、この作品も手塚治虫の生の絵は使われていません。
そのため稚拙さが目立ちますが、ストーリーは抜きん出ていると思います。
『火の鳥』
未完に終わることを運命づけられていたとは知りながら、やはり未完であることが残念でなりません。
「未来編」のスケール。
「宇宙編」のコマ割りの斬新さ。
そして「鳳凰編」…。
我王の過酷な運命、そして、彼が「生命」についての解答を得る過程は、中学時代の私に多大な影響を与えずにはいませんでした。
『アドルフに告ぐ』
こういうテーマを漫画にしてしまう力量って…。
正直驚かされました。
単行本化に際して、マンガとしては初めて「一般書籍」扱いで出版されたことも忘れがたい事実です。
『きりひと讃歌』
発表当時「白い巨塔」との類似を云々されたことがあったはずですが、エンタテイメントとしてはこちらに軍配が挙がるのではないでしょうか?
主人公の恋人の名にちょっとばかりの思い出がある私です。
『百物語』
『新・ライオンブックス』シリーズとして発表された作品。
手塚治虫が終生こだわったゲーテ作『ファウスト』の翻案のひとつですが、私としてはこれがベストだと思っています。
『0マン』
手塚治虫のニヒリズムが端的に表れた作品だと思います。
小学生時代に一部を読んで、相当のショックを受けました。
『鳥人大系』
これを長編に分類するのは間違いかもしれません。
しかし、全体として1つのテーマを描き上げているという意味では長編といってもよいと思っています。
『雨ふり小僧』
いいです、この作品。
立川談志師匠も絶賛です。
アニメーション版もかなりいけます。
『おけさのひょう六』
文句なく、泣けます。
初めて読んだのは講談社コミックス版『三つ目がとおる』第1巻のページ合わせの付録(?)でだったと思います。
『三つ目がとおる』本編に負けないぐらいの衝撃を受けたことを記憶しています。
『安達が原』
『新・ライオンブックス』シリーズ中で最も印象深い一作。
任務を終えた主人公が「遺された手料理」を食べるラストシーンは
手塚作品中の白眉と言ってよいと思います。。
『落盤』
小学館サンデーコミックス版『W3』の第2巻(※なぜかこの巻だけ買ってもらったんです。)に併録されているのを初めて読んだとき、私は小学4年生だった模様。
『グロテスクへの招待』
書いてしまうと興醒めですので内容には触れませんが、こうしたテーマって私好みです。
『鉄腕アトム・植物人間の巻(原題「アルソア12星人の巻」)』
反則ですけれど、敢えて短編の部に入れてしまいました。「少年」誌で読んで、えもいわれぬ切なさを覚えたことをはっきり記憶しています。
このエピソードは昭和36年発表。
当時私は小学1年生。
やはり私は「アトムの子」です。
『雨のコンダクター』
レナード・バーンスタインの名は、この作品を読んで初めて私の記憶中枢にインプットされました。
『紙の砦』
自伝的作品の1つ。
終戦を知った主人公の叫び。
奇しくも、あの横溝正史もほとんど同じ意味の叫びをあげていたとのことです。
『ジョーを訪ねた男』
『ブラック・ジャック』の原型をこの作品に見ることができると思う私です。
『るんは風の中』
なぜか、すごく好きな作品。
……ただし、後のアニメーション版は苦手です。
この話って一歩間違うと「二次元コンプレックスの超オタク少年」の物語になってしまいますよね。
前者はその辺を全く感じさせずに展開するのに、後者ではみごとにドツボにはまっている気がするのです。