ごあいさつ
岐阜県民文化祭運営協議会会長
岐阜県知事 梶 原 拓
第5回岐阜県民文化祭のメイン事業「ぎふ文化の祭典」として上演される、創作音楽劇「紙すきのうた」に多数の御参観をいただき、誠にありがとうございます。
ご承知のとおり、昨年秋、県内各地で開催しました「第14回国民文化祭・ぎふ'99」は、これまでに例のない県民の手づくりによる文化の祭典として、多くの方々に支えられ、112万人に及ぶ過去最高の観客数を記録するなど、大成功のうちに終えることができました。
県では、これを契機に県民一人ひとりの暮らしに文化が根づくよう、「文化一・一運動」を施策の柱とし、新たな県民文化祭を、内容も新たに県内各地で展開しております。
創作音楽劇「紙すきのうた」は、昨年秋、「第14回国民文化祭・ぎふ'99」の前夜祭として岐阜市民会館で上演され、県民参加型の創造的な舞台芸術として高い評価を得ました。今回、県民の再演を希望する声に応え、新たに再構成して上演するものであります。
この作品は、岐阜市在住の女性作家の作品を原作として、岐阜の伝統産業である「美濃和紙」とそれに携わった「女性」がテーマとされています。出演者は、一般に広く呼びかけ参加を募り、県民参加の公演に実績のあるスタッフが関わってこられました。また、事業の実施・運営に当たっては、県内各界の有志の女性が中心となって、実行委員会が結成され、その熱意と固い結束により、本日の公演を迎えることができました。
御覧いただく皆様には、深い感動を味わっていただき、大いに楽しんでいただけましたら、この上もなく幸甚に存じます。
最後に、この創作音楽劇「紙すきのうた」の開催に当たり、御尽力いただきました関係各位に深く敬意を表するとともに、本日お集まりの皆様方のますますの御健勝を祈念いたしまして、ごあいさつといたします。
ごあいさつ
創作音楽劇「紙すきのうた」実行委員会
会 長 吉 田 豊
このたび、第5回岐阜県民文化祭のメイン事業「ぎふ文化の祭典」として、創作音楽劇「紙すきのうた」が上演されるに当たり、一言ごあいさつ申し上げます。
この創作音楽劇「紙すきのうた」は、県内で御活躍の女性の有志の方々が中心となって実行委員会を組織され、昨年度「第14回国民文化祭・ぎふ'99」の前夜祭並びに岐阜市制110周年記念公演として開催され、出演者やスタッフの熱い想いと固い結束により、たいへん素晴らしい舞台が繰り広げられ、県民から高い評価を得ました。
今回、県民の再演を願う声に応え、新たに再構成して上演できますことは、こうした創作舞台が一回限りの上演に終わるケースが多い中、誠に意義深いことであると存じます。
御承知のとおり、岐阜県は地歌舞伎の宝庫です。この創作舞台は、西欧型のオペラではなく、地域の歴史や文化を題材とした岐阜県オリジナルの「地オペラ」、いわば「平成の地歌舞伎」として、全国に向け自信を持って発信できるものと確信しております。
どうか本日は、積み重ねられた厳しい練習の成果を余すところなく披露され、心に残る素晴らしい公演となりますことを御期待申し上げるとともに、この公演を機に、岐阜県の新たな文化振興策である「文化一・一運動」が更に進展することを願う次第であります。
終わりに、本公演の開催に当たり、御尽力いただきました関係各位に深甚なる感謝の意を表しますとともに、本日、ご来場の皆様には、心ゆくまで音楽劇をお楽しみいただきますよう念願し、私のごあいさつといたします。
スタッフ
原作 | 角田茉瑳子 |
作曲 | 藤掛 廣幸 |
台本・演出 | 松岡直太郎 |
指揮・合唱指導 | 井上 清輔 |
歌唱指導 | 中島 富蔵 |
児童合唱指導 | 矢島 倫子・鈴木恵理子 |
装置プラン | 内山 千吉 |
照明プラン | 浅野 公蔵 |
音響 | 古宇田 玲 |
舞台監督 | 冨田 茂雄・早川 賢治 |
舞台美術 | 綜合舞台はぐるま |
演出協力 | 田村 貫 |
演出助手 | 奥野 葉・梁瀬 景子 |
化粧 | 真津田美紗子 |
衣装・かつら | 松竹衣裳(株) |
結髪 | タカ美容室・福井 孝子 |
練習ピアノ | 田口 育代・篠田 亜紀・篠田 敦子 |
考証 | 馬目 孝 |
実技指導 | 市原 智子(伝統工芸士)・古田あやめ |
技術指導 | 市原 団若(伝統工芸士) |
小道具協力 | 大坪 かな |
緞帳製作協力 | 石原製紙・ワタナベ工芸 |
花御輿の花協力 | 美濃市米屋町自治会 |
練習会場協力 | 美濃保育園 |
スタッフ協力 (五十音順) | 青木由美子・岩砂 由美・大塚 高明・加藤 早苗・加藤 光弘 加納 正子・神谷 純・木村 繁之・纐纈 修司・神山光一朗 後藤 浩子・後藤 康弘・櫻井 道男・篠田 晃治・白木 隆 杉江 美晴・高木 泰子・高橋 順・高橋 貴子・高橋 秀郎 竹中 弘子・棚橋 欣三・鳥居 哲也・中村真理子・長屋 富男 林 達也・疋田 晴丈・日比 雅人・日比野義広・広井 妙子 福嶋 温子・堀 晃運・本田 秀徳・前田 吉弘・松田 精一 村瀬 守・矢野 秀子・山口 量子・山田 誠・吉田 稔 美濃の子役親の会 舞台工房・アクト |
演奏 | 藤掛廣幸ソロオーケストラ |
題字 | 安藤 秀川 |
キャスト
ゆき(元郡上藩士の娘/武本家の養女) | 篠田 弘美 |
弥助(元下男/武本家の作男) | 井上 博嗣 |
彦四郎(美濃の紙商人・小森家の主) | 田村 貫 |
源三郎(武本家の跡取り) | 中島 富蔵 |
つね(武本家の女主) | 澤田 裕子 |
かよ(源三郎の娘) | 〈二幕〉 | 内田 春菜 |
| 〈三幕〉 | 内田 優 |
とね(典具帖紙を教えた郡上の女) | 小川 茂子 |
ちえ(石徹白から来た少女) | 小島 睦 |
仙太(小森家の奉公人) | 吉田 金治 |
村の男・勘助 | 島 源三 |
村の男・常吉 | 青木 茂 |
村の女たち | 浅野 淳子・朝原嘉代子・井戸めぐみ・川島 幸栄・榊原しのぶ 田村満里子・寺町 尚子・丹羽ゆり子・八田喜美子・松野 雅子 安藤 香・稲垣由紀子・宇高 優子・小木曽利代子・木野村有美 桐山なほ美・重山 玲子・西部 節子・二村千恵子・梁瀬 景子 |
村の男たち | 安藤 紘・伊東冨美一・今井 淳・陶 忠廉・平林 弘人 福田 宗仁・松本たけし・奥山 克哉 近藤 博文・櫻田 智志・中村 三郎 |
村の子どもたち | 江崎 華奈・奥田 智勝・小栗 巴羽・猿渡 巳結・庄司 彩希 杉原 颯太・鈴木飛羽衣・鈴木 麗奈・須田 温子・高橋 和子 西部美幸希・服部 早希・服部 友希・服部 由佳・古田 朋香 古田美香子・古田 梨子・森 美月・山口 莉奈 |
プロフィール
原作…角田茉瑳子
岐阜県出身、在住。1983年「竹人形」が『日本キリスト教児童文学全集・別刊2』(教文館)に収録。『ゆきと弥助―紙すきのうた』(岩崎書店)で、岩崎少年少女歴史小説賞、第17回児童文芸新人賞受賞。岐阜県芸術文化奨励賞受賞。『鵜よ、清流にはばたけ』(岩崎書店)。『蘭丸―夢の途中』(岩崎書店)。『ギンギツネの恋』民話集の執筆、監修(関市教育委員会出版)。『洗堰に日は昇る』戯曲執筆。他多数。東海女子短期大学講師。日本児童文学者協会会員。日本児童文芸家協会会員。
作曲…藤掛廣幸
岐阜県出身。日本音楽コンクール入賞、国際エリザベート音楽コンクールグランプリ、笹川賞作曲コンクール2年連続第一位、ほか数々受賞。交響曲、オペラ、ミュージカル、室内楽曲、合唱曲、TV、ラジオ、映画音楽等、作曲発表した作品は多岐に亘る。「銀河交響曲」はじめ世界中で発売されているアルバム多数。編曲では、イ・ムジチ合奏団の「日本の四季」がある。シンセサイザープレーヤーとしては、フルート奏者ゴールドウェイ、ジョージ川口、小口大八らと共演。指揮者としても、NHKホールなどで活躍。
台本・演出…松岡直太郎
岐阜県出身、在住。フリーの演出家として活動。ギリシャ悲劇「トロイアの女」をオペラ化以来、岐阜市、各務原市の合唱オペラ・揖斐郡坂内村の舞踊音楽劇・大垣市民創作ミュージカルを担当。最近は日中国交正常化25周年記念日中合作オペラ「太陽を探して」の台本演出、岐阜新聞企画 岐阜杭州友好都市20周年記念合作ミュージカル「ブンナよ木からおりてこい」日中公演の共同演出。プレ国民文化祭「オペラ・ハイライト」総監督、岐阜の民話「尾なし龍」の構成演出。岐阜県芸術文化会議会員。
指揮・合唱指導…井戸清輔
岐阜県出身、在住。ピアノを宮川三男、声楽を水谷俊二、故内本実、作曲を中田直宏、住友淳治各氏に師事。現在約10団体の合唱団を指揮、指導、日中合作オペラ「太陽をさがして」ほか県内創作オペラの中心的役割を果している。日本合唱指揮者協会会員。岐阜県民俗音楽学会会員。名古屋芸術大学非常勤講師。
ゆき……篠田弘美
岐阜市民芸術祭、大垣市民芸術祭、岐阜県美術館・岐阜市歴史博物館コンサート等に出演。ひとりオペラ「ぞう列車がやってきた」を企画し、50回の公演。岐阜市文化センター開館10周年記念の創作オペラ「黄金の街へ」の主役チンツに抜擢。岐阜市民会館開館30周年記念・日中合同音楽劇「太陽をさがして」に母親役で主演。プレ国民文化祭オペラハイライトで再演。日中合作ミュージカル「ブンナよ木からおりてこい」にスズメ役で出演。
弥助……井上博嗣
オペラ「フィガロの結婚」のフィガロ、伯爵。「魔笛」のパパゲーノ、モノスタトスに出演。岐阜県内で行われた「信長天下を取る」、創作オペラ「トロイアの女」「かかみ野の空」「オりべ焼文様」「夜叉池」に出演。
羽島郡少年少女合唱団はじめ合唱指導多数。現在、羽島郡岐南町立岐南中学校教諭。岐阜演奏家協会会員、スコラーズ岐阜のメンバーとして活躍。
源三郎……中島富蔵
岐阜市民芸術祭、「志んの会」、護国神社野外音楽祭、加納高校音楽科40周年記念演奏会、「ニューイヤーコンサート」等に出演。オペラでは、「こうもり」のアイゼンシュタイン、「ヘンゼルとグレーテル」の魔女、「魔笛」のタミーノ、「コジ・ファン・トゥッテ」のフェランド、「カルメン」のダンカイロ、「かかみ野の空」の高市王子役等に出演。現在、岐阜県立加納高等学校音楽科主任。岐阜演奏家協会副会長。
小森彦四郎……田村 貫
舞台芸術学院卒業後、東京を中心に40年余の俳優活動を続けてきた。
主な舞台は「桜の園」「マクベス」「じゃじゃ馬ならし」「橋」「早春の賦」「セツアンの善人」「初蕾」「青春の砦」「山頭火」「村岡伊兵次伝」他多数。「劇団はぐるま」でも「どん底」「郡上一揆」「タルチェフ」他出演。映画「戦争と人間」他。TV「人間の条件」他多数出演。96年帰岐後、「舞台工房・アクト」を結成主宰。岐阜を拠点に、演出、講師等を含めて、東京、名古屋でも活動中。
つね……澤田裕子
第5回新・波の会日本歌曲コンクール第3位入賞。名古屋芸術創造センターでオペラ「アメリア舞踏会へ行く」のアメリア役。サラマンカホールにてドラマチックリサイタル、スイトピア音楽堂にてピアニスト小澤英世氏とのジョイントコンサート、岐阜市民芸術祭にてオペラ「ヘンデルとグレーテル」出演。「紫のドレス」他数多くのオペラや演奏会に出演。
とね……小川茂子
桐朋学園大学声楽科卒業。同大学研究科2年修了。存学中、室内楽で多数の現代曲を演奏。存京中、合唱・宗教曲のソリスト、合唱指揮、ヴォイストレーナーとして活動。1991年ミラノ短期留学。東京・岐阜にてリサイタル開催。県民ふれあい会館主催、ランチタイムコンサート出演。主なオペラ出演は、秋山和慶指揮オペラ「アルバートヘリング」ヘリング夫人。外山雄三指揮オペラ「カルメン会修道女の対話」
ちえ……小島 睦
岐阜県新人演奏会、岐阜市民の劇場・創作オペラ「トロイアの女」、岐阜市民会館開館30周年記念・日中合同制作音楽劇「西湖伝説・太陽をさがして」プレ国民文化祭高山公演では同音楽劇のユーラン役に出演。「春の音楽会」等に出演、美濃市第九演奏会にソリストとして出演する。
仙太……吉田金治
岐阜・各務原・可児各市にて合唱音楽を中心に活動。
昨夏、岐阜市友好訪問使節合唱団「スコラーズ岐阜」に参加し、ウィーンにて「日本の音楽を演奏。一昨年と昨年の秋には合唱オペラ「かかみ野の空」に出演。2001年にはオペレッタ「こうもり」の再演に出演予定。ピアノ調律師を経て現在、愛知県内の精神障害者社会復帰施設に勤務。
勘助……島 源三
「風化」「郡上一揆」「岐阜わが街」他、「オセロー」「タルチェフ」「どん底」など外国の古典、「王子と乞食」「ピーターパン」「はだかの王様」など劇団はぐるまの名作作品の舞台に立つ。「はぐるま」を退団後は名古屋での舞台を中心に活躍。「舞台工房・アクト」の結成に参加。岐阜、大垣の学校演劇の指導にあたっている。
常吉……青木 茂
「どん底」「郡上の立ち百姓」など劇団はぐるまに参加して出演。退団後、小幡バレー団、名古屋の五織流の公演に参加した。五織流で「十三夜」「大つごもり」「にごりえ」、落語芝居「らくごの馬さん」「ゆうれい貸します」「たらちね」に出演。現在は「舞台工房・アクト」に所属している。
村の女たち(ソプラノ) | 村の女たち(アルト) |
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村の男たち(テノール・バス) | 村の子どもたち |
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かよ(二幕) | | かよ(三幕) |
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あらすじ
美濃紙は、1300年の昔から、いつの時代も女が紙を漉いてきた。
【一幕】
明和元年〈1764年〉浅春。
郡上街道を南に向う山道を元郡上藩士の娘「ゆき」と下男「弥助」が歩いていた。
両親を亡くしたゆきは、武儀部長瀬村の“武本家”の養女となり、弥助は作男として働くことになった。
峠にさしかかると、大矢田の豪商「小森彦四郎」に声を掛けられ、小森家で年期奉公する「仙太」や、紙すきとして買われた少女「ちえ」と出会う。
長瀬村、女たちが唄う「紙すきのうた」が聞こえる。
「勘助」「常吉」をはじめ村人たちは、行き倒れの老婆に困惑していた。
付き添う娘「とね」は必死に助けを求めていた。見かねたゆきは、持ち合わせていた南蛮薬で老婆を救う。とねは、お礼に、自分が漉いたという紙入れをゆきに渡し、去っていく。
子供たちが、だんだら蝶を追いかけ、陽が落ちる頃。
孫娘「かよ」を抱いた武本家の女主「つね」と息子「源三郎」が出迎えに来た。
源三郎は、ゆきの手にする紙入れが、幻の典具帖紙という紙であることに気付き、美しい典具帖紙を、いつか漉きたいという。
【二幕】
そして4年が過ぎ、武本家で紙を漉くゆき。
弥助は、庭に咲いた椿の花をゆきに届け、ゆきはこの美しい花をすかし模様の紙に漉きたいと思う。
小森の世話で、すき子として働く病弱なちえを、仙太は心配している。ちえの夢は、もう一度郡上に帰って暮らすことだが、金儲けしか頭にない仙太は理解できない。そんなちえを、ゆきは慰め励ましている。
武本家が寺に納めていた紙の権利が小森彦四郎に取られた。ゆきは、椿の花のすかし模様の紙を漉こうと決心する。
嵐の日も、ゆきは、すかし模様を工夫している。
板取川が増水し、村人たちが不安そうに集まってきた。川の見張りに源三郎と弥助が出ていったあと、すかし模様を何度も何度も漉き試みるゆきは、ふと手元に置かれた投網から、すきすに、網のように糸を編み込むことで、紙に模様ができることに気づく。源三郎に嬉しそうに報せるゆき。
その時、仙太が飛び込んできた。ちえが、雨の中で血を吐いて死んだのだった。
いつまでも、ちえを抱き、泣き続けるゆき。
いつしか嵐は止み、暗い月が出ている。
【三幕】
さらに4年が過ぎ、村人は夏祭りのまわしに忙しい。
小森が、ゆきの漉いたすかし模様の評判を聞きつけて、つねをさがしにくる。
ゆきと弥助は、岐阜へ出かけた源三郎を迎えに、土手に来ていた。二人は幼い頃から一緒に暮らしてきたのに、心のうちを言葉にすることはなかった。
武本家のつねは、孫娘かよのためにも、息子源三郎に早く継がせたいと思っていた。その日、典具帖紙のとねとの再会に喜ぶゆきに、源三郎の嫁になってくれと、つねは頼んだ。
弥助は子供たちと、花みこしを作っている。
ゆきは郡上の両親の墓参りに行くことにした。弥助にも行って欲しかったが、弥助は断った。せめてもの思い出にと、かんざしを手渡すゆき。いつまでも紙を漉き続けてほしいと頼む弥助の目にも涙が光っていた。
村人でにぎわう、祝言の日。
弥助の気がかりは、ゆきの漉く典具帖紙であったが、とねからきっと漉けると言われ、もう思い残すことはなかった。ノリウツギの木を探してほしいと言うとねの頼みに、弥助はゆきの花嫁姿を見ることもなく、山に向う。
宴たけなわ、勘助が裏山の崖を弥助が登っていくのを見たと知らせにくる。
ゆきの、悲鳴が、春雪の中に消えた。
そして季節がめぐり、春祭りの日。
弥助の墓前に、武本家の人が、典具帖紙ができたことを報せていた。
ゆきは、弥助と歩いた遠くの山々を見ていた。
今日も村の女たちが唄う「紙すきのうた」が聞こえる。
第5回岐阜県民文化祭・ぎふ文化の祭典
親と子に捧げる音楽劇「紙すきのうた」
日時 平成12年11月25日(土)午後6時
11月26日(日)午後2時
会場 県民文化ホール 未来会館 長良川ホール
主催 創作音楽劇「紙すきのうた」実行委員会
岐阜県・岐阜県教育委員会・岐阜市・美濃市
岐阜県民文化祭運営協議会
協賛 西濃運輸(株)・カンガルーメセナ協議会