(自治会長登場)
自治会長 さぁさぁみなさん、集まってくんせぇ。
(老人たち自治会長のせりふの間にぞろぞろと登場)
自 きょうは東市場の敬老会をやるで、こっちに料理がまわししたるなも。
老 やぁ、これはりっぱなお座敷やなも。実にありがたいことやて。なまんだぶなまんだぶ。
老 それに料理も豪華やし。こんだけの料理を作れるのは、日本でも神田川俊郎か辰巳家の大将ぐらいなもんやてってマスコミでも評判らしいなも。
老 本当やなも。大将もカラオケ大会だけやなしに料理の鉄人に出やよかったのになも。
老 それに何といってもおかみさんがべっぴんで愛想ええし。辰巳家が繁盛するのももっともなことやなも。
自 おまはんた、ずいぶんと辰巳家の宣伝をしとるけど、きょうはどうしんさったんやな。
老 そらさっき大将からようけご祝儀をもらったで、にわかの筋とは関係ないけど宣伝しなあかんのやねぇかな。
老 けどまぁ、それもこれも自治会長がいろいろ取り計らってくんさったおかげやねぇかな。
老 東市場の自治会長はわっちんた年寄りを心から大切にしてくだれるで、安心して毎日暮らしていけるなも。
自 ちょっと待ちんせぇ。わっちは祝儀を出しておらんのに、どうしたことやな。
老 いや、自治会長さんはきっと後から出しんさるやらぁ。
老 なるほど。それに自治会長さんはもちろんやけど、しっかりとサポートしてござる副自治会長さんもすばらしい人やで。
老 ええかげんにしんせぇ。副自治会長てったらうちの親父やで、あかんて。
老 自治会の理事の人んたぁも……
老 まぁええて。わっちも理事の一人やで、滅多なことは言わんといてくんせぇ。はよ筋に入ろかな。
老 こんだけ誉めて宣伝したんやで、まぁこれで引っ込んでもええんやねぇかな。
老 たわけたことを言いんせぇ。わっちんたはお囃子がまだイマイチなんやで、仁輪加ぐれぇマトモにやらんと怒られるなも。
老 そうかな、ところで自治会長さん、今年の敬老会の記念品は何をくだれるんやな。
自 そのことなんやけどなも、今年はめでたく高砂の人形を贈ろうと思って用意しておったんやなも。
老 高砂の人形っていうと、あのじいさんとばあさんが熊手持って掃除しとるやつやなも。年寄りもまっと働けというおそろしい人形やて。
老 あれは掃除しとるんやなしに幸せを集めておるめでたい人形やなも。
自 その人形なんやけど、特別に石川紙業に作ってもらって、半月も前にうちに届けてもらったんやて。
老 ほんなら早よ見せてくんせぇ。
自 ところが次の朝になったら置いておいたはずの場所から無くなってまっとってなも、あわてて捜したら向かいの駐車場のすみっこでみつかったんやて。
老 誰がそんないたずらをしたんやな。
自 次の日も無くなっておったもんで捜したら、こんどは山車倉の前で見つかってなも、次の日は教泉寺の中、次の日は辰巳家の裏、次の日は夢工房の奥って具合でなも。
老 ずいぶん遠くまで探しんさったんやなも。
自 ほんで次の日に夜中起きて見張っておったら、不思議なことに人形が自分で勝手に出ていってまうんやて。
老 まぁじっきお彼岸やのに、怪談話みてぇなことやなも。
自 どっちにしてもこんな人形を配ったら、明日から東市場じゅうの人が人形を捜して歩かなあかんで、どうしようかと思案しておるんやなも。
老 それは困ったなも。年寄りは朝が早ぇっていいんさるけど、わっちゃ毎晩さくらで飲んでおって、そう早うは起きやへんで、人形を捜しに行けんなも。
老 かといって敬老会に来て手ぶらで帰るのもせんがねぇし、どうしたもんやろうな。
老 誰かのいたずらならあかんけど、人形が勝手に出て行くんならしょうがねぇで、もらうだけもらっておいて、あとは人形の好きなようにさせたらどうやろうな。
老 ほんでもせっかくもらった記念品なんやで、ずっとうちに飾っておきたいんやねぇかな。
老 そうはいっても人形が出て行くのはどうしようもないやねぇかな。
老 人形の足に鎖をつけるとかしや、大丈夫やねぇかな。
老 あかんあかん、ほかの人形ならともかく、高砂の人形なら好きなようにさせなあかんわな。
全 そらまたどうしてやな。
老 高砂の人形といえばなぁ。
全 どうじゃな。
老 ほって置きな(翁)、あとを追うな(媼)で一対じゃわな。
エッキョー
作者のつぶやき ずいぶんいいかげんなものです、この台本は。老人の人数も決めてないしどのセリフがどの老人なのかも決めてない。それに話の前半は余分なことばっかり喋ってます。