不動産会社社長 困ったなぁ。このままでは伊予(いよ)いよ倒産してまう。あぁ、困った困った。
連合自治会長 ちょっとちょっとそこの仁、どいてくんせぇ。
社 なにな、一体どうしたんやな。
会 おまはん、町の中が讃岐(さっき)から賑やかいのになんにも知りんさらん能登(のと)ちがうかな。きょうは美濃町祭りの飛騨加賀(日だから)、若狭(若さ)にあふれた花みこしが町じゅうを練り歩くんやなも。
社 実はわっちは名古屋で不動産屋をやっとる者やけど、このごろ商売がうまくいかんようになって志摩(しま)ったんや。そこでこのあたりを一手に開発して濡れ手に阿波(泡)の大儲けを駿河(するが)よかろうと思ったんやなも。誰かこの町を案内してくれる人はおらんやろうかな。
会 そりゃ佐渡(さぞ)大変やったやろう。実はわっちは連合自治会長をやっとるもんで、きょうの備前(午前)中は忙しかったけど、肥後(午後)からはヒマやで、市長さんに紹介したるわ。ついておんせぇ。ごめんやす。市長さんはござるかな。市長さん!
美濃市長 はいはい、ドアの紀伊(キー)は開いとるで、入ってくんせぇ。これは連合自治会長さん。おまはんは出雲(いつも)伊勢(威勢)がええ人や。ところでなんぞ河内(かわっ)たことがあったんかな。
会 実はかくかくしかじかというわけで、不動産屋の社長さんが市内の案内をしてほしいといわっせるもんで連れてきたんやなも。
市 そうかな。そんならわっちが案内したるでついておんせぇ。
会 あれあれ、市長さんもそうとうせっかちな人やなも。日向(言うが)早いかでかけやしたなも。
社 そんならわっちらも急いであとを近江(追う)としよう。
市 まずここが小倉公園、桜の名所やなも。
社 この朝日楼と書いてある建物はなんやな。
市 これはちょっと前まで使っとった旅館やけども、新しいホテルを建筑後(築後)は安芸(空き)家になっておるんや。ちょっと展望台に登ってみよかな。展望台から見る景色は和泉(いつ見)ても素晴らしいなぁ。社長さん、この指の先を見てくんせぇ。
社 おまはんの指の先かな、爪があるなも。
市 その爪の先やて。
社 爪の先には赤穂(垢)がたまっとるなも。
市 たいがいに信濃(しな)怒るなも。指のさしとるほうを見るんやな。丹後(たんぼ)の中に見えるのが東海北陸自動車道やなも。向こうの大和(山と)とそっちの山の間には、越後(いちご)畑もあるんやなも。
社 そうかな、高速道路はあるし自然もきれいや。ここならきっとわっちの計画も成功するやろう。
会 それにしてもおまはん、名古屋の不動産屋さんがどうしてここらへんのリゾート開発を始めんさるんやな。
社 このごろはバブル経済の崩壊とやらでわっちら不動産屋は損してばっかなんやて。ここ三河(3日)ほど前からは3度の食事も越前(一膳)飯。美作(まさか)こんなにひどくなるとは思っておらなんだんやけど、これでは壱岐(生き)ていけん。肥前(以前)から考えておったリゾート開発のアイデアが土佐(とっさ)に浮かんできて、これに周防(しよう)と思ったわけやなも。
市 そうかな、不動産屋さんも伊賀(いが)いにたいへんなんやなも。けどリゾート開発は陸奥(むつ)かしいんやないやろうかな。悪いことはいわんでやめたほうが蝦夷(ええぞ)。
社 市長さん、そんな豊前(憮然)とした顔で冷たいこといわんと力をかしてくんせぇ。
会 そうやて、もし成功しやわっちらの町の長門(名がど)っと有名になって、きっと観光客の上総(数が)ふえるんやで、いっぺんやらしたってみたらどうやな。
市 そんな淡路(あわい)期待をして、あとで対馬(しま)ったと思ってもあかん。きっと失敗して会社もつぶれて下総(しまうさ)。
社 市長さん、会社がつぶれるとは人聞きが悪いやねぇかな。つぶれるかつぶれぇへんか開発をやらせてくんせぇ。このまま帰ってはわざわざ名古屋から来た甲斐(甲斐)がないなも。
市 あかんあかん。わっちのみたところリゾート開発も失敗するし、おまはんの会社もつぶれてまうことには間違いはねぇわな。
社会 そらまたどうしてやな。
市 さぁ、国づくしのことならなぁ。
社会 どうじゃな。
市 これで美濃(身の)尾張(終わり)やわな。
越中(エッキョー)!‥‥‥‥‥
作者のつぶやき 初めて作った“づくしもの”。あまり語呂は合ってないです。
クマさん やぁ、めでたいめでたい。他人事ながらわっちも本当にうれしいなも。そうやねぇかな、皆さん。
八っつぁん おいおい、そこで一人で浮かれておるのは向かいのクマやねぇかな。いったいどうしたんや。
ク そういうおまはんは八っつぁんやねぇかな。どうしたんやもあるもんかな。実はなも、今朝がたあの紀子さまに赤ちゃんが生まれたんやて。
八 何な!本当かそれは。そんならおめぇが浮かれとったのもわかるなも。てっきりおめぇのこっちゃで人間がめでたいだけやと思ってまったやねぇか。
ク たわけたことを言っちゃぁあかんて。
八 そりゃぁたしかにめでたい。で、男の子やったか女の子やったんか。
ク あ、それは聞いてなかったなも。
八 やっぱりおめぇはおめでたい人間や。そこが大事なことやねぇか。赤ちゃんが生まれたらまず母子ともに健康かどうか、そして男の子か女の子か、そういうことを聞いておかなんだら人にたわけにされるなも。
ク たしかにそうやったなも。こりゃわっちとしたことがちょっとうかつやったなも。
八 おめぇはうかつだらけやて。
ク そんならこれから皇居へ行って、どっちやったか聞いてこよまい。
八 そうかな、そんならさっそく行ってみよかな。
ク やぁ、着いた着いた。ここが皇居やなも。
八 ごめんやす。ごめんやす。広いお屋敷やで奥まで声が届かんのやろうかな。ごめんやーす!
紀子さまの侍女 はい、どなたやな。
ク 実はわっちんた、岐阜の美濃町から来たんやけどなも、今朝生まれた紀子さまの赤ちゃんは男の子やったか女の子やったか教えてくんさらんかえ。
侍 は?何やな?おまはんたの喋らっせることばは、ちょっとなまりがあってようわからんなも。
八 おまはんもおんなじようになまっとるやねぇかな。
侍 そうやったかな。皇居の中ではこういうことばを使うんやなも。
ク そんなたわけたことがあるんかな。それはそうとおまはんはどなたやな。
侍 わっちは秋篠宮紀子さまの侍女をやっとる者やなも。
八 そうかな、そりゃちょうどよかった。たのむで紀子さまの赤ちゃんが男やったか女やったか教えてくんせぇ。
侍 おまはんた、どういうぶしつけな仁や。突然入ってきてそんなことを聞くやなんて、失礼なやっちゃなも。
ク そんなこと言わずに教えてくんせぇ。
侍 あかんて、おまはんたには教えたらへん。
八 そんなら紀子さまに会わせてくんせぇ。
侍 おまはんた、ますますてぇもねぇ話をするもんやなも。紀子さまは赤ちゃんを母乳で育ててござってなも、授乳時間というもんがあるもんで、たとえ紀子さまの親といえども簡単に会わせるわけにはいかんなも。
ク なんでやな、せっかく岐阜の山の中からでてきたんやで、なんとか会わしてくんせぇ。
侍 そうかな、そんならなんとか話をしてあしたにでも会えるようにしたってもええなも。
八 わっちんた今夜で美濃町へ帰ってまうんやで、それでは間にあわへんなも。今日のうちに会わせてくんさらんかな。
侍 それだけは何ともならんなも。ずっと授乳時間やで人に会わせるわけにはいかんなも。
ク どうしても会わせてもらえんかな。
侍 絶対に会わせるわけにはいかんわな。
ク八 そらまたどうしてやな。
侍 さぁ、紀子さまのことならなぁ。
ク八 どうじゃな。
侍 乳(父)は今日中(教授)やっとるわな。
エッキョー
作者のつぶやき 当時大騒ぎした秋篠宮紀子様、そして真子さまの誕生。ちょうどうちの長女と同級生なので、うちの娘を学習院に入れれば授業参観とかPTAとかで紀子様と会えるかもしれない…と今でも考えています。