単3配電

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乾電池の直列つなぎ久しぶりにキーボードに向かったと思ったら、電池の話か、確かに最近はLEDをはじめとする省電力機器が増えて単1や単2電池の出番が少ないなぁ・・・というお話ではありません。略さずに書くと「単相3線式配電」のことについてちょっと書こうと思います。
皆さんのご家庭には現在ほとんどこの「単相3線式100/200V」の回路が使われていると思います。工場を併設している建物でも事務所や廊下は単相回路が別で引き込んであるか、大規模なところは屋内変電設備で単相回路をつくっているはずです。以前のページにある三相回路を電力設備というのに対してこの単相回路を電灯設備といいます。今や電灯よりOA機器のほうが主だった用途だったりしますけど「電灯」と呼ぶのが「伝統」。
で、単相回路の特徴としては単相であるという点が挙げられます。・・・アホなこと書いてますね。単相ですから三相回路のように位相を気にすることなく、乾電池の直列つなぎと同じと考えればわかりやすいと思います。
でも「交流だからなぁ」と気になる場合は、上の図のように直列につないだ電池を同時に向きを反転させればやっぱり直列つなぎになっているのです。
単相トランスそんな回路をどうやって作るのかというと、トランスの出力側の途中に端子を出せばいいだけです。この途中から出した端子の前後、同じだけ離れたところにも端子を出せば、それぞれの端子の間は同じ電圧が得られます。理系の世界では途中から出した端子を基準にすることが多く、中点、中性線、センタータップなどと呼んでいます。
そして電池の例でいえば中点(N)からみて上の端子(L1)はプラスの電圧(例えば+1.5V)になり、下の端子(L2)はマイナスの電圧(例えば-1.5V)になります。これを互いに逆相といいますが、最大の電圧になったりゼロになったりするタイミングは全く同じですから「電池を同時に」向きを変えるのと同じですね。
理系に強い方のためにまた交流のグラフを描いてみました。Nの端子を0としてL1の端子は凸凹の形の細い線、L2の端子は凹凸の形の細い線の電圧となります。そしてNをとばしてL1端子とL2端子との間では太い線のような電圧となるので、交流回路でも単相であれば100V+100V=200Vということで乾電池の直列つなぎと同じなのです。(電圧は実効値なのでグラフの頂点はそれぞれ141V、282Vになっています)。
単三のグラフ
ベクトル図で描くと、L1の端子は原点から右に水平に伸びた矢印、L2の端子はそれと180度反対の方向へ伸びた矢印になり、引き算をすると単純に倍の距離となります。が、ベクトル図を読める方がこのページを見に来て”ふむふむ”なんてことになるわけがないので、ベクトル図は省略します。
単相3線式配電をして何かメリットがあるのかというと、200Vの電化製品が家庭でも使えるようになります。IHコンロ、エアコンをはじめとして200Vの家電品はすでに結構多くなっています。「鉄塔はなぜ高い」のページに書いたように、電圧を2倍にすると途中の電線での損失が1/4になるので、大電力を使う機器はできるだけ高い電圧で動かしたほうがおトクです。
それならなぜ家電品を全部高電圧で動くようにすればよいというのは今だから言える後知恵で100Vが標準になっているのには明治時代からの歴史をひもといた説明が必要になります。それに安全ブレーカーの高電圧バージョンというような製品は1つで電子レンジくらいの大きさがあるので、そんなものを10個も20個も並べられないでしょ。とにかく歴史や法律、電力会社やメーカーの都合もあって現在の家電品は100Vの製品と200Vの製品になっています。
屋内配線の例
そして家の中ではこのように配線されています。もちろん分電盤のところでメインのブレーカーがあり、分けられた回路ごとにブレーカーがついています。それから中点を配電線のところでアースしているために、200Vの電圧が得られるのに万一漏電した場合には地面との間に100Vしかかかっていないという利点があります。IHコンロで家事をしてて感電した場合(そうでなくても一般的に感電した場合も)100Vと200Vでは衝撃や被害が格段に違いますから、安全に電気を使うためには重要なことですね。

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