三相交流

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三相回路図
交流モータの次はやっと直流モータの話かと思っていた人がいたら、残念ながら違います。交流モータの最後に“3組の交流を使って”とさらっと書きましたが、そのときの図には3本しか線がありませんでした。模型工作をしたことがある人はわかると思いますが(模型工作をしたことがない人もおそらくわかると思います)、3組の電気を送るには6本の電線が必要になります。その片側を共通にしたとしても共通の1本とあと3本で計4本ないと困りますね。
そうやって交流を3組作って、負荷へ送ってみましょう。3組の交流を区別するため、仮にR、SとTという符号をつけてみました。こうすればとりあえず交流を3組送ってモータを回すことができます。この方法は現実に三相4線式といってごく稀に使われています。
ところで、モータをスムーズに回すためには、この3組の交流はどうなっていればいいのでしょうか。まず、3つとも同じ電圧でないとスムーズにいかないでしょう。それから、+と-になる瞬間が均等にずれていなければなりません。全部揃って同じタイミングで+になっていたら、モータの中で全部いっせいにNになってしまい、モータは回りません。大体、同じ電圧で同じタイミングならわざわざ3本の線でつながなくても1本でいいし。
三相交流
そこで3組の交流を1サイクルの3分の1ずつずらしてみました(左図)。こうすればモータのページで見たように、3つのコイルが順にNになってモータを回すことができます。電圧を3分の1ずつずらすと、電源も負荷も3組ともまったく同じもの(1台のモータの中身だから)なので、電流も3分の1ずつずれます。力率のページのように電流が遅れたとしても同じ遅れ方をするので、左図は3組の電流の変化と考えてもかまいませんね。では、それぞれの瞬間ごとの電流の合計を考えてみましょう。たとえば、「→t」の文字のすぐ上にある目盛りの瞬間は、ピークが1[A]とするとRとTの電流がそれぞれ+0.5[A]、Sの電流が-1[A]ですね。次の目盛りではTが±0[A]、Rが約+0.866[A]、Sが約-0.866[A]、次の目盛りではRが+1[A]、SとTが-0.5[A]。・・・てな具合です。さて、このとき共通の線にはどれだけの電流が流れるのでしょう。
キルヒホッフの法則(のページ)を思い出してください。負荷からでている4本の線を流れる電流の合計は0になるはずです。ここから考えると共通の電線を流れる電流をX[A]として、「→t」の文字のすぐ上にある目盛りの瞬間は+0.5+0.5+(-1)+X=0、次の目盛りの時は±0+0.866+(-0.866)+X=0、その次の目盛りの時は+1+(-0.5)+(-0.5)+X=0。がんばってXを計算しましょうね。
できましたか、と聞くまでもなく、いずれもX=0となります。3か所の計算をしてみましたが、実はどの瞬間を計算してもX=0が成立します。疑り深い人は、ぜひ任意の瞬間で検算してみてください。

sin(t)+sin(t+2π/3)+sin(t+2×2π/3)=0

という式がどのtに対しても成り立つ…というと数学っぽい表現ですが、そういうことです・・・よね、たぶん(自信ないけど)。
常に合計電流が0ということは、共通の線にはまったく電流が流れないということですね。それなら電線でつないでおく必要はありません。共通の電線そのものをなしにしましょう。これで無事に3本の線で3組の交流を送ることができるようになりましたとさ。めでたしめでたし。
あ、これを三相3線式交流といいます。

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