「ブラック・ジャック」命名考 その3

第11巻〜第1 7巻

2003年8月20日更新

11 名  前 由    来 エピソード名

 

 

 

手塚先生  ほとんどレギュラーの「手塚治虫」医師。実際に名前が出るエピソードは意外に少ない。 けいれん
ポン骨大学  「ポンコツ」…辞典を調べてみると、「鍛冶屋が使う大きな槌」が本来の意味だそうだ。山田野先生の出身大学である。
トキワ荘  p64に出てくる。いうまでもなく、かの漫画家アパートの名である。さりげなく石ノ森章太郎や藤子・F・不二雄とおぼしき住人が出てくるあたりがニクイ演出。 とざされた記憶
は−4545  p71に出てくる車のナンバー。「はーよいよい」とでも読むのか?
ヒゲオヤジ  珍しく実名(~_~;)での登場である。
ヌーピー  「スヌーピー」ですな。 犬のささやき
阿部小路忠明  金持ちのおぼっちゃんという設定だからだろうが、とてつもない名前である。
大病院  すごくいい名前(?)の病院である。 雪の訪問者
〆沢  手塚が悩まされ続けた「〆切り」からのネーミングのような気がする。 話し合い
無理先生  上の「〆沢」とワンセットの名前と考えると推理しやすい。
 「〆切りに間に合わすのは無理」といったところが元ネタだろう。
妻良内役(つまらないやく)  なにせいきなり死んじゃうという「つまらない役」だからなぁ。 ポケットモンキー
亜里灰運送  「アリバイ」ね。
横縞(よこしま)  たしかに「邪(よこしま)」な考えを持ったヤツではあった。
三界島  「三界」とは仏教用語である。迷いの世界とか。欲界、色界、無色界… 青い恐怖
イル国とイラヌ国  「イラン・イラク戦争」を思い出さないわけにはいかない。 戦争はなおも続く
12 名  前 由    来 エピソード名

 

 

 

トリュフォー先生  この名が映画監督にして俳優「フランソワ・トリュフォー」から命名されたものであることはすぐに分かった。
 しかし、同監督が『野生の少年』という映画を作っていた事実は『手塚治虫キャラクター図鑑 2』を読むまで知らなかった。
山猫少年
オプー  「オプー」というのは1950年代に制作されたインド映画の名作『大地のうた』『大河のうた』『大樹のうた』3部作の主人公の名前でもある。
 しかし、上の欄に書いた『野生の少年』という映画の存在をつい最近まで知らなかった私としては、同作品に登場する少年の名がなんであったのか、気になって仕方がない。 (この少年の名はヴィクトールであったことが確認できた。ということは、いよいよ上記の映画の主人公から採られた名である可能性が高いように思える。2002年4月17日追記)

 蛇足をひとつ。
 オプーがBJ氏のことを「モグリ」呼ばわりするシーンがある。この部分を読むと、なんとなく『ジャングル・ブック』の主人公「モーグリ」を思い出してしまうのだ。

ルナルナ  いうまでもなく『ジャングル大帝』をモチーフにしたエピソードである。原典にも「ルネ」なんてキャラクターが登場していた。
 こうした疊語的な名前は上野動物園に贈られたパンダの「カンカン&ランラン」から流行しはじめたものではなかっただろうか?
白いライオン
ゴルゴサウルス  p88に出てくる。これ自体はごくまっとうな恐竜の種類。この台詞をしゃべっているのが「ゴルゴ13」(さいとうたかを作)であるところが最大のポイントである。 デベソの達
伴俊作  ヒゲオヤジ氏、本名での出演。「マリリン・モンローの家のトイレからナメクジの化石を発見した学者」という役どころ。
日角商事の田中丸栄  「田中角栄」元総理のもじりである。 鬼子母神の息子
田良福物産  「たらふく」食べて、思いっきり太っちゃった悪徳商人のイメージである。
下田警部  もちろん「下田(げた)警部」自身が出演。
姥本琢三  姥…「姥捨て山」を連想してしまうが、元ネタは分からない。 二人目がいた
物野毛先生  「もののけ」に取り憑かれる、なんてぞっとしない。今だったら無条件に『もののけ姫』を連想してしまう人が多いのだろう。

 p157で展開される「ネコも杓子も野次馬になっちゃう」シーンは、なかなか笑える。

密室の少年
ハリ・アドラ  心霊手術なんてものが信じられてた時代もあった。
 ハリ・アドラ(『海のトリトン』のイボリロ出演)の場合、純粋な超能力者として描かれており、初出時にブームとなっていたアヤシイ超能力者「ユリ・ゲラー」をもじったものではないかと思われる。
その子を殺すな!
週刊秘密  雑誌の名前。こんな感じの雑誌は今でも実在するように思う。
矢口冬造と矢口夏江  「夏と冬」で兄妹。いかにもなネーミングである。「冬は来るべき春を待てるが、夏は帰らない」という展開がなんとも悲しい。
 矢口という苗字から『釣キチ三平』で名高い漫画家「矢口高雄」を想像してしまうのは考え過ぎか?ただ、矢口高雄自身が猛烈な手塚ファンで、手塚死後に『ぼくの 手塚治虫』と題する自伝的漫画を発表していることを忘れることはできない。
クマ
丹沢突平  『バンパイヤ』の主演者である「トッペイ(立花特平)」が、似たような役名で出演。 霊のいる風景
凡骨大学  「ポンコツ」な大学。かの山田野先生の出身大学「ポン骨大学」とは別の学校だろうか?
割込先生  「割り込み」はいけません!
南京豆先生  そのまま「南京豆」(~_~;)
理学博士 お茶の水…  p248の立て看板に見える。
 『ブラック・ジャック』にはお茶の水博士その人がしばしばゲスト出演しているが、本名で出てくることはない。
帰ってきたあいつ
ジョーズ  もちろん、スピルバーグ監督の映画『ジョーズ』から。
ゲラ  大声で「ゲラゲラと」笑いこけるところから作中でつけられた名前。だが、猛烈に哀しいエピソードである。p290に出てくるタモリすら浮いて見える……。  笑い上戸
井美利商事  「いびり」倒して金を巻き上げる悪徳金融業者なわけだ。
13 名  前 由    来 エピソード名
 

 

 

ランランとリンリン  p15でのBJ氏の台詞。
 「リンリンランラン」とかいう芸名の双子の外国人アイドルがいたなぁ。
水とあくたれ
マリリン・スワンソン  往年の大女優「マリリン・モンロー」と「グロリア・スワンソン」とを足して2で割ったもの。 あるスターの死
JACK NICOLSON IN
DO TE KABOCHA…
 p65の看板。「ジャック・ニコルソン主演 ドテカボチャ」…絶句!
千代子  我がヒロイン、和登千代子(『三つ目がとおる』)が実名で登場。 小うるさい自殺者
四十二号線  p152に記されている。「42=死に」という連想が働く。 山小屋の一夜
山上投手  描かれた顔が「がきデカ」そのもの。「山上たつひこ」をもじった名前だと断定できる。 本間血腫
エラーズ  山上投手の所属チームということ。早朝野球のチームじゃあるまいし、「エラーズ」はあんまりだ。
堀医長  浪岡家の家老「堀一康」(『百物語』)が演じている。
白野  エピソード中でも明かされるとおり、「シラノ・ド・ベルジュラック」から。別名「鼻のシラノ」と呼ばれる人物を猿田(『火の鳥 宇宙編』)に演じさせるあたり、 手塚の配役の妙といえるだろう。原典での猿田は全くもてなかったけれど…。 気の弱いシラノ
栗須  これも「クリスチャン」からの命名であることがエピソード中で明記されている。
落目プロ  「落ち目」なんだろうなぁ。浪岡の殿様(『百物語』)が社長じゃ、落ちぶれるのもやむなし、か。 動けソロモン
はなじる、わらじ、うじ、ぶたのへそ、みみず、しりもち  全部、食堂のメニューなんだけどね(~_~;)
 私は、いらない。p250を参照されたし。
家出を拾った日
やぶれ荘  見るからに「やぶれそう」なアパートである。 幸運な男
14 名  前 由    来 エピソード名
 

 

 

越前病院院長  「エチゼンガニ」(『日本発狂』)出演。既に「焼け焦げた人形」(第4巻)で登場していたが、その際は名前は明記されていなかった。命名の由来は顔の形から明白である。 コルシカの兄弟
タンとヤオ  二人合わせて「タンヤオ」…。以前にも書いたとおり「マージャン」用語ですな。これで架空の3人目の兄弟が「チュー」だったりしたら完璧だったのだが。
青鳥ミチル  メーテルリンク作『青い鳥』の主人公のひとり「ミチル」から。分かりやすいネーミングである。
 松本零士の『銀河鉄道999』にも「メーテル」という名のヒロインが出てきてたなあ…。

 なお、このエピソードには「桑田このみ」(ブラック・クイーン)と思しき女医が登場しているが、BJ氏との間にそれらしい会話はなされない。

かりそめの愛を
久磨富士夫  初出掲載誌の編集者の名前らしい。(『手塚治虫キャラクター図鑑 2』よりの情報)
品1589  上記「久磨さん」のオンボロ車のナンバー。数字のほうは「ひどいやく」と読めてしまう(~_~;)
丸桐商一  「まるっきり商売が第一」ってところか?「¥」マークのネクタイがいかす。 満月病
ケネス大尉  「サターン」とあだ名されている。演じているのが『鉄腕アトム』『リボンの騎士』などで名高い「サターン」その人であるから、このあだ名は当然。エピソード名も必然と言える。

 このエピソードで忘れてはならないのが、ベトナム戦争において、「ソンミ村虐殺事件」という惨劇が起きている事実である。その首謀者の名は「カリー中尉」という…。

魔王大尉
春秋社  似たような名前の出版社が実在するけれど、それを意識したものではないだろう。 ペンをすてろ!
NAIテレビ  そんなの「ない」テレビ局。
水上ケン  もちろん『キャプテンKen』のヒロインその人が実名で出演している。そして、相手役の「猪谷純一」を演じているのが同作品の主人公「キャプテン・ケン」であることはいうまでもない。
(越前医師)  なぜか「越前医院」から「中央病院」の院長に転身している。
青森県西津軽郡一ツ森村  失踪した「猪谷純一」が住んでいるらしい村の名。いったいこれは何なんだ?
 「青森県北津軽郡金木村」が太宰治の出身地。
 「宮城県登米郡石森町」が石ノ森章太郎の出身地。
 どちらも関係なさそうだ。
 ひょっとしてこれも「猪谷」という編集者の出身地だったりして(^o^)丿
七人の乞食  日本映画史上に残る名画『七人の侍』から。 フィルムは二つあった
鼻紙家の人々  横溝正史原作のミステリー映画『犬神家の一族』から。
脱毛地帯  山崎豊子原作の映画『不毛地帯』から。
野崎舞利  「野崎参り」ですな。
 ヒゲオヤジ演じるこの監督、サングラス姿から巨匠「黒澤明」を連想させる。
 p196で「大物だァ!!」と叫んでみせているのは、当時のテレビCMのパクリ。
ナイショ殺人事件  アガサ・クリスティー原作のミステリー映画『ナイル殺人事件』から。
変奇堂  p218の看板。
 初出誌において同時期連載されていた『ブラック商会変奇郎』から。
鯨にのまれた男
月とスッポン屋  p218の看板。
 初出誌において同時期連載されていた『月とスッポン』から。
アザラク商店  p218の看板。
 初出誌において同時期連載されていた『エコエコアザラク』から。
マカロニほうれん草青物店  p218の看板。
 初出誌において同時期連載されていた『マカロニほうれん荘』から。
時計チョッキン  p218の看板。
 初出誌において同時期連載されていた『チョッキン』から。
(ラ)イダー石井  p218の看板。
 初出誌において同時期連載されていた『750(ナナハン)ライダー』および、同作品の作者「石井いさみ」から。
白鯨丸  ハーマン・メルヴィルの名作『白鯨』から。
永井先生  漫画家「永井豪」のキャラクター、ヒヤヤッコ(この名もp229に見える)がパクられている。
チヨコ  『ドン・ドラキュラ』のマスコット・キャラである「チョコラ」が出演。 B・Jそっくり
黒松  後ろの字から読めば「まっくろ」である。
 あだ名は吸血鬼医者…したがって、演ずるのは「ドン・ドラキュラ」氏本人。ひとりでは心もとなかったのか、娘と共演の形。
15 名  前 由    来 エピソード名
 

 

 

杉並井草  いかにもクサイ名前なんだが。決定的な元ネタが浮かんでこない。エピソード名にもなっている映画『スター誕生』の主演女優は「バーブラ・ストライサンド」だったっけ。「スギナミイグサ」と「ストライサンド」…響き的には似ているけれど。
 実名と思しき「チコ」という呼び名も気になるし。

 下田警部殿からの情報! 
「第15巻の「杉並井草」ですが、これは地名です。東京の杉並区に井草というところがありまして、 手塚先生が、虫プロの練馬の次に一時住まわれた場所です。」
 とのこと。なるほど、地名だったわけだ。田舎者には分かりにくい…。

スター誕生
ばばねっこ  え?アナウンサー?
 「ねっこ」とは「根っこ」だろうか?
「ばば幹子」とか「ばば葉子」というような名前のアナウンサーがいたという記憶はないし…。

 ふと思い当たった。これって「ネコババ」のもじりなんじゃなかろうか?いずれにせよ「アナウンサー」とは結びつきようがないが…。

坂東四津五郎   歌舞伎役者「板東三津五郎」をもじったものだ。
青木幹男  「青葉茂れる木の幹」ですね。
 このエピソードと似たモチーフで描かれた作品に『夜よさよなら(アディオス・ノーチェス)』っていう短編があった。
木の芽
青木茂  「青葉茂れる」ですな。
葉斑(はまだら)しげり  「葉が斑になって茂っている」…。なんともはや植物的な名前である。 ドラキュラに捧ぐ
間武田(まぶた)  解剖実習なんかやったら「まぶた」を閉じちゃうのが普通の人間。
 某作品には「須武田」なんて博士が出てきたなぁ…。
死者との対話
ヤケッパチ  『やけっぱちのマリア』の主人公、「焼野矢八」が登場。そもそも、この名は「ヤケのやんぱち」という言葉からきている。 望郷
綿引十枝子  「十枝子」という名からピンと来る方も多いはず。そう、これを演じているのは『人間昆虫記』の主人公「十村十枝子」その人なのだ。彼女、「臼場かげり」などというスゴイ名前――ウスバカゲロウのもじり――の持ち主でもあったりする。 きたるべきチャンス
チン・キ博士  手術中に音楽を流すなどという「珍奇」な趣味を持っているからか?
 しかし、「ヨードチンキ」とか「タムシチンキ」などという薬からの命名説も捨てがたい。
音楽のある風景
ルーツ  患者の名前だが、これは初出当時に話題となっていたテレビドラマ『ルーツ』からの命名だ。 闇時計
THE ROOTS of PINK PANTHER  p214に見える。
 『ピンク・パンサー』は、有名な映画のキャラクター。描かれたヒョウがその「ルーツ」であるというわけだ。上にあるとおり、「ルーツ」は当時の流行語なのである。こういうギャグをかまさないと気がすまないところが、いかにも 手塚らしいといえるだろう。「ROOTS」の部分が太字になっているあたりも微笑ましい。
永湖清水  「えいこせいすい」と入力して変換してみれば答えは一目瞭然。「栄枯盛衰」…なるほど、花の命ははかない。
 彼の娘である「ソノ」が松本零士のキャラクター風――手塚自身がバラしている――なのも笑える。
命を生ける
浅草上乃  「浅草・上野」…。私のような田舎者にも分かりやすいネーミングだ。演じているのは「ヒゲダルマ」氏。 20年目の暗示
大和多摩士  「大和魂」からのネーミングだが、「子供だまし」のニュアンスもあるか。上の「浅草上乃」という名前からすると、「多摩」というのもなんとなく気になる字の当て方だ。
 ということで、更に考えてみると、東京には多摩市や東大和市、神奈川にも大和市が存在する。
 上の名前とともに、地名を織り交ぜたダジャレと見るのが適当だろう。
16 名  前 由    来 エピソード名

 

 

 

メイスン大佐  古くからの大スタアのひとり、「ジェームズ・メイスン」が演じている。彼ほど軍人役が似合うスタアも少ないといえるだろう。 アナフィラキシー
ベン  この名の由来は残念ながら分からない。ヒロインである中西ミユキも同様だ。
 だが、そんなことなどどうでもよい。本エピソードは「百鬼丸」が「どろろ」とともに出演しているというだけでも、ファン垂涎の一作なのである。
ミユキとベン
ゼット・リング  これはアメリカ映画『ジャイアンツ』(1956年公開)において、あのジェームズ・ディーンが演じた「ジェット・リンク」をもじったものに間違いない。
 映画の中での彼の役柄は、大金持ちの家の美しい人妻に心を寄せる牧童。彼は石油を掘り当てて一気に億万長者になる。
 「石油王ゼット・リング」にピッタリ当てはまっているではないか!

 残念ながら、私がこの映画を観たのは中学生のころ、それもテレビの名画劇場でだった…。内容はもちろんのこと、登場人物の名前もうろ覚え。とはいえ、こんな有名作品にヒントを得ていた事実を今日まで気がつかなかったなんて情けない…(>_<)

 考えてみたら、手塚はこの映画からヒントを得た『アリと巨人(ジャイアンツ)』なんて漫画を描いたりもしていたんだった。いやはや…。

 そして、更なる発見。(というよりも、リアルタイムで読んでいたときに気づかなかっただけのことなのだが)、かの石森章太郎の名作『サイボーグ009』の登場人物である002の本名が「ジェット・リンク」であったことに思い当たった。 手塚も石森も件の映画を見て影響を受けた世代だったのだ…。
(2002年4月27日追記)

失われた青春
「アラン・ドロンと郷ひろみと加山雄三と山上たつひこの顔をモデルにさせてもらった」  p62におけるBJ氏の台詞。これはもう爆笑モノである。

 いささかの解説を加えるならば、アラン・ドロンはフランスの超二枚目俳優。郷ひろみは当時絶大な人気を誇ったスーパー・アイドル。と、ここまではよいとして、加山雄三はこのころTVでBJ氏を怪演して 手塚に呆れられた張本人であるし、山上たつひこに至っては超絶キャラクター「こまわり君」を生み出した漫画家である。実際、この直後にゼット・リング氏の顔が「こまわり君」状態になったりしているのだ…(^_^;)

書き置き  p64参照。第16巻サイコーのダジャレ爆発!である。どうやったらこんなにショーモナイことを考えつけるのだろう。まさに絶句!
ブラッドストーン  ブリジストンみたいだが、関係はないだろう。訳したら「血の石」…。半村良のSFに『石の血脈』なんて名作があったりもしたなぁ。
アブラハム石油  これは当然「アラビア石油」のもじりだろう。
ハンス・エンゲル  『ビッグX』の敵役が実名で出演。 もう一人のJ
ジョナサン  なんてことない名前だが、p112でのBJ氏の言葉から、当時のベストセラー『かもめのジョナサン』を意識した名前であることが分かる。
1976号室  ハンスが泊まっていた部屋の番号。むろん、初出掲載年が意識されている。
哲夫  なんということのない名前に思えるが、そうは問屋が卸さない。
 いじめられっ子である「哲夫」少年が、ある出来事をきっかけにして「番長」と仲良くなっていくという設定に注目。「番長」を演じているのが『ゴッドファーザーの息子』出演の「明石」その人であることからも、この少年が「 手塚治虫」本人を意識した人物であると推測できる。つまり、「哲夫」は「てづかおさむ」を縮めたものなのだ。
 なお、エピソード名は同名のSF小説――映画にもなっている――からいただいたものである。
光る目
スッポ先生  響きからもまともなネーミングとは思いにくい。しかし、元ネタは特定できない。 リンチ
阿古(あこ)警察官  老俳優「アッゴー」が演じている。 猫上家の人々
猫上氏  エピソード名からも分かるとおり、横溝正史の『犬神家の一族』を意識している。作品の内容もミステリー仕立てである。
大平芳正主将  当時の総理大臣「大平正芳」をいただいたものである。しかし、手塚がこうした名前をつけた経緯を想像すると、思わず笑いがこみ上げてくる。
 このエピソードの主人公である彼は柔道部の「主将」なのだ。その語呂合わせで「首相」が思い浮かび、それがさらに「大平正芳」につながっていったに違いないからである。
浮世風呂

「ちょいと猿の惑星さん」  p197に見える。『猿の惑星』といえば、SF映画の大傑作。何度も続編が作られ、テレビドラマ化もされ、日本でも明らかなパクリが横行。とにかく大ブームだったのである。
張保手(はりぼて)一家  やくざとはいえ、「張りぼて」だからね。あんまり怖そうではない。
「ブラック・ジョーイ」  映画プロデューサー、パーキンソン(「ノタアリン」出演)氏が作ろうとしている映画の題名。当然、「ブラック・ジャック」を意識した名前ではあるが、当時『ジョーイ』という名の映画が話題になっていたことも忘れるわけにはいかない。 裏目
サミー  取り立てて珍しい名前ではない。だが、手塚の意識の中に世界的な黒人エンターテイナー「サミー・デービスJr」があったのは間違いないと思う。
今村健平  どうしたって映画監督「今村昌平」の名前が浮かんでしまうのだが、このエピソードと今村昌平作品との接点が見つけられない…。 過ぎさりし一瞬
ファスナー神父  「FATHNA」と綴ることから、まともな名前かもしれないが、「ファスナー」はファスナーだろう。
マリア  ストーリーの展開から明白なように、「聖母マリア」から採られたものである。
17 名  前 由    来 エピソード名
 

 

 

内外総合病院   「内外」という言葉そのものには、「内部と外部」とか「国内と国外」という意味があるが、ここでは、「内科も外科も全部ひっくるめて」というような意味が込められているように思う。 ピノコ再び
ピック   ピノコを引き取った病院長夫人が可愛がっていた犬の名前。『魔神ガロン』の重要キャラクターを連想させられるが、実際の姿が描かれているわけでもないのでなんとも判断しがたい。
成田以香留(イカル)  名前の「イカル」のほうは、本編でも語られているようにギリシア神話の登場人物イカロスから採られているものだろう。苗字のほうの由来は今のところ分からない。 いちばんありそうなのは「空を飛ぶ」→「飛行場」→「成田空港」という連想である。確かに初出掲載当時は既に「成田空港問題」が大きな話題となっていた時期ではあるが…。

 先日、たまたま野鳥の図鑑を見ていたときに思わぬ発見をしてしまった。
 「イカル」という名の野鳥がいるのだ。
 極めてポピュラーな鳥で日本中どこででも見られるという。それも漢字で書けば「斑鳩」となるというのだから、一般の認知度も高い鳥であるに違いない。
 そんな鳥の名前をこの歳まで知らなかった私って…。情けない思いとともにここに追記するものであります。(2006年1月28日)

人間鳥
東西電鉄  いかにもどこかにありそうな名前の会社だ。 ふたりの修二
織田修二  他の登場人物たちの名前から判断して、苗字のほうは間違いなく戦国の英傑「織田信長」に由来している。名前のほうはなんだろうか?姉の久美という名前も気になるが。
明智光秀   東西電鉄副社長のフルネーム。「織田」家に対して謀反を企てるなんて、そのまんまな役柄ですな。
 『リボンの騎士』の敵役ジュラルミンが演じているのがご愛嬌。
斎藤道三  明智副社長の腹心の部下。やはり戦国武将の名前なんだが、織田信長とは義理の親子関係だったはず。まあ、信長の命を狙ったこともあったあったりしたから、いいか。
 演じているのは、やはり『リボンの騎士』の敵役ナイロン卿である。
柴田  これも織田家の家臣、柴田勝家から採られたものだろう。
損得寺  いくらなんでも、こんな名前の寺は実在しないだろう。住職は損得勘定ばかりしているような人なのだろうか?
秋田神社  上の寺の名前と同じく、遊びでつけられたものだろう。とすれば、版元である「秋田書店」をもじったものに違いない。
阿久津信通  p76で「名将」と紹介されているが、私の知識にはそのような歴史上の人物の名はない。文脈から考えて、これも手塚のジョークであると解するほうが自然な気がする。例によって、担当編集者の名前とかではなかろうか?
パク船長  この船長を始めとした人物が「隣国」から逃れてきたという表現があることや、「おれの国は自由が禁じられている」という船長の述懐があることなどから、北朝鮮を十分に意識して付けられた名前であろう。このエピソードが長く文庫に入らなかった理由も、このあたりにあるのかもしれない。 パク船長
プロミネンス  「太陽の周りに生じる炎」のこと。手塚がどうしてこの名前を馬に与えたのかは分からないが、速そうな感じはする。
 実際、現役で活躍している競走馬にも「なんとかプロミネンス」という名の馬がいるようだし。
化身
天馬先生  『鉄腕アトム』の生みの親、天馬午太郎博士がそのままの役名で登場している。ちょっと白髪交じりになっているところが物悲しい。なにしろ、自分の娘の名を呼び違えてたりしているのだ(^_^;) 金!金!金!
カスミ  天馬の娘。演じているのは『鉄腕アトム』のウランである。p155では本名で呼んでもらったりしている(^_^;)
六鹿(ろくしか)  天馬先生のライバル。おそらく、『「馬」とくりゃ「鹿」しかないだろう』といったような遊び心から付けられた名前だろう。実際、馬鹿馬鹿しい権力闘争が描かれているエピソードであるし。
可仁博士  第1巻の解説を見られたし。 おとずれた思い出
マニー白毛(しらけ)  清純派アイドルの名前としてはあまりにもひどいセンスに思えるが、エピソード中の設定ならば納得もできる。15歳で妊娠しちゃったりすれば、そりゃファンは「しらけ」るよなぁ。
 「マニー」のほうは「マネー(money)」のもじりだろうか?
台風一過

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