2006年


10月7日 必死に 思うて何が悪い

 2006年9月半ば。
  長いこと放置状態(私のサイトの手塚コンテンツよりは遥かにマシだが…)であった映画『どろろ』の公式サイトが久々に更新され、ようやく予告編やTVスポットなどがアップされた。
 私はこれまでにテレビで流されてきた(らしい)事前情報を全く見ておらず、非常に新鮮な思いでこれらを見ることができた。
 1分余りの予告編を見る限り、それなりに頑張っていることは窺い知れた。
 しかし、「予告編がいちばん面白かった」という場合が少なくないのが劇場公開映画の常であることを考えると、本編の出来具合への不安が募る。

 やはりいちばん大きかったのは、百鬼丸が実写で動いていることに対する違和感。これはもうどうにもならない。諦めるとしよう。
 懸念を覚えたのは、徒にグロテスクな描写に偏っているのではないかということだ。
 原作は両主人公の生い立ちを始めとして思い切り残酷な内容の作品なのだが、それがために読む者に嫌悪感を抱かせるような事態には陥っていない。
 それは手塚の絵柄によるところも大きいとは思う。だが、決してそれだけではない。
 主人公たちの生き方に対する共感を呼び起こさせるストーリーがあるからこそ、読者は眼を背けずに凝視せねばと思わされるのだ。
 そのあたりのことを映画製作者がきっちりと把握し、消化しているかどうかがいちばんの問題であると、原作の1ファンとしては思わないでいられない。
 少なくとも、予告編からはそれが伝わってこなかった。(むしろ容易に伝わってきてしまうようでは、先に述べた「予告編がいちばん面白い」映画の列に加わってしまうことになると言えなくもない。)
 今回アップされた予告編で強調されていたのは血飛沫や異形の者たちの造形。予告編というものの性質からは当然の措置だろう。
 本編が、単なるグロ映画(或いは観客の失笑を買うような作品)に終わらないことを祈るばかりだ。
 

 『どろろ』を人生のバイブルとまで思う私としては、同じ名前を関する映画が魅力溢れる作品――ポスターに刻まれた「必死に生きて何が悪い」という惹句は十分に魅力的だ――として完成してほしいと素直に願っている。
 公開日は2007年の1月27日。
 刮目(観念)して待つべし。