2005年2月13日 東京都 |
底抜けに明るくなった林の脇で、子供たちが互いの影法師を追いかけながら
『影ふみ遊び』に興じている。
私も冬枯れの木々を相手に、地面にできた細長い幹の影を踊るように踏みながら
進んでいく。
彼らは人間とは違い、決して逃げることはない。
一見私が容易に勝てそうではあるが、彼らの影は無数にある。
一生かかっても私が勝つことはないだろう。
もう陽射しは春だ。
実際、今日の日の入り時刻は17時20分頃で、10月初旬と同じ。
晩秋よりはるかに下見に時間を割くことができるわけだ。
▲西日がやわらかく照らす丘陵の斜面。
▲いかにもヒラタ好みの木が2,3本あった。
丘陵の尾根道をはずれ、谷筋へ降りる。
赤茶けた源流の流れと落葉、倒木、そして静寂。
尾根道へ戻り小道を進んでいくと、やや開けた谷の源頭に
大目玉のようなクヌギが現れる。
ここらのご神木的な存在だろうか。
広葉樹の二次林に混じり、原始植生ともいうべきモミの巨木もちらほら。
樹齢200年ぐらいはあるのではないか。
今日の目的地が近づく。
遠く離れたところから見えていたクヌギ林だが、
車で近づけず、こうして1キロほど徒歩にて遠回りを強いられた。
こんな面倒なアプローチは、単独行でないとできない。
同行者がいると、大はずれでくたびれもうけになった場合に申し訳なくて、
とかく遠慮してしまいがちだ。
勘をたよりに斜面を下ると、クヌギ巨木の密生地だ。
どれか1本でもいいから、ヒットすれば苦労も報われるのだが、
判で押したように皆電柱タイプである。
▲唯一の期待は樹液痕をもつコナラ洞だろうか。
さらに目の前がパッと開け、見るからに立派なクヌギの幹が多数、
四方八方に倒れている。
来るのが1年遅かったか。
先程は一生かかっても雑木の影など踏みつくせぬと思ったが、
このように踏むべき影が消失してしまうと、なんか空虚な気持ちにもなる。
気がつくと、近くで農夫が作業をしている。
伐採を責める権利など毛頭持たぬ肩身の狭い闖入者は、すごすごと退散せざるを
得ないのであった。