2003年9月26日 

採集者養成のための学校があったとしよう。
生徒が教室で授業を受けている。
先生「ここ6日間連続、気温が20℃を割っていますね。
   これで今シーズンの樹液採集は終わった・・・そう思う人は手をあげて!」
生徒一同「はーい!」
むろん私も、周りをキョロキョロ見回しながらも、手を天井に向かって突き上げているであろう。

しかし、午後から気温が上がり始めた。雨上がりで湿度もある。なんとなく気になる皮膚感覚。
帰りにチラッと寄ってみるか・・・という気になったものの、採集道具やカメラがない。
ロッカーにペンライトと昔使っていたデジカメがあったので、それだけ持ち出すことにした。
駅前の売店でデジカメ用電池を買い、車内で挿入。
首からデジカメをぶら下げペンライトを持ち、薄暗い小道をポイントへ向かう背広姿の怪しい男・・・、
一般の感覚ではこういう風体の人を「○質者」と呼ぶ。
雑木林横の立て看板には、極太の筆文字で「ちかんを見たら110番!」と書いてある。
近所の人に咎められても、「カブトムシ採りに来ました」なんて言い訳は、もう誰も信じてくれまい。

さて、予想通り樹液場はゴキとコクワ、スズメバチの御三家が占拠している。
ただ、低温続きと雨の影響からか、今夜はハチが少ないようだ。

▲クヌギ根元の樹液にはコクワの群れ。

まさに枯渇へのカウントダウンが始まり、悪あがきしている樹液場を7〜8本見て、
これで引き上げるか・・・と最後に見たクヌギには予想もしないヒラタの姿。

▲定規やノギスもないので?だが、30ミリ台の新成虫か。

このクヌギは4年間見てきたが、ヒラタは初めて。
今月初旬にもヒラタの影はなかった。
頭上をブーンと旋回するハチを気にしながら、すぐ上のめくれを覗くと、
なんか、奥にもう1匹いる。
はは〜ん、これは♀だろう。

▲さすがに♀は、姿を見せないね。

この小さなスペースのめくれに、血気盛んなヒラタ♂が複数で入居できるはずがない。
掻き出し棒の類もないので、木の枝で代用する。


この時期のリリースは、ある意味で実に気持ちがよい。
もう採集者も訪れないだろうから、このままごく自然に、そして静かに越冬体制に入るのを
待つばかり。
今期の樹液シーズンの締めくくりとしては、いいシーンかもしれない。