2003年8月19日 |
クヌギの樹液にカブトとチョウがいるな・・・、と近づいてファインダーを覗くと
なにやらカブトによく似たシックな色合いのハチが、すぐそばにいることに気づいた。
大きさはオオスズメバチほどはないが、どう考えても形はスズメバチなので、
突然変異により黄と黒のシマシマが変化した個体なのかな? と想像をめぐらせる。
無知と先入観は恐ろしいもの。さらに地味な体色が温厚な性質を連想させてしまうため、
思わずぐっと身を乗り出し、至近距離で眺めていたのだった。
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▲カブトの存在も脅威に感じないチャイロスズメバチ。右はサトキマダラヒカゲ。
だがしかし,But! あとで調べてみると、コイツは”チャイロスズメバチ”であることが判明。
北方系のスズメバチで、山梨や長野ではそこそこみられるものの、関東地方では希少種とのことだ。
埼玉の雑木林を歩いて5年ほどになるが、はじめてお目にかかった。
・・・しかも、その生態は極めて異色なものだった。
チャイロスズメバチの女王は、モンスズメバチやキイロスズメバチの巣に浸入し、その女王バチとタイマン勝負。
刺し殺して女王の座を奪うと、他種の働きバチを従え”植民地支配”をして巣作りを進めさせる。
自らも産卵しはじめ、しばらく両種が混生した状態ののち、ついにチャイロスズメバチだけのコロニーになってしまうのだそうだ。
これを「社会寄生」と呼ぶらしい。なんとも人間社会の一面を見ているようで、興味深い。
この樹液に来ていた個体は働きバチだから、近くに乗っ取った他種の巣があるはずである。
自宅でも昨年、コガタスズメバチが生垣に巣作りをはじめて驚いたが、最近、都市近辺でスズメバチの被害報告が多い。
こうした”乗っ取り相手”を追うように、チャイロスズメバチも平野部へテリトリーを拡大してきたのだろうか?
外国産クワガタの放虫問題ばかりスポットを浴びられがちだが、本来の繁殖地が開発等で失われた故の都市進出だとすれば、
”刺された人間が被害者”という近視眼的な視点だけではいけないんだろうな・・・と思う。