2003年7月11〜12日    栃木・福島夏合宿

「2泊3日の泊りこみで、思いっきり虫取りを満喫しませんか?」 
----こんなふれこみで、KOMAさんとヤマトさんが「夏合宿採集旅行」を企画した。

金曜の夜、東北道のPAに集合した参加者は、KOMAさん、Pさん、もんさんと私の計4人。
残念なことにヤマトさんの姿がない。今朝体調を崩した娘さんのため、遠征という”男のロマン”を棒に
振ったのである。なんともすばらしい家族愛ではないか。
我々4人は、こみ上げてくる熱いものを必死でこらえながら、「ヤマトさんの分までがんばって採集するぞ!」 
と健闘を誓い合うのであった。

さて、栃木の里山に到着したのはもう、深夜12時近くである。
しかも、途中で降り出した雨はいっそう激しくなり、ついに土砂降りになった。
ふつうの人達なら、あきらめて宿に直行するところだが、欲深い我々は、クワカブやタガメの実績がある
水銀灯に立ち寄ってみる。
が、この雨ではほとんど虫が飛んでいない。あたりまえだ。虫の方がよほど常識を持っていることがわかった。
カブト1匹だけ確認後、今夜の宿に到着する。
布団を敷いて素直に寝ればいいのに、樹液のミヤマを狙いに、雨の中をふたたび発進。
30分ほどで、通称「ボコボコクヌギ地帯」の一角についた。

去年もここで夕方、ミヤマを採集した。
今年はどうだ・・・? と記憶を頼りに樹液をさがすと・・・、やはりいた。

▲雨に濡れながら、我々を歓迎してくれた。

さらに奥へ進むとミヤマのペアがいた。

▲オスは落ちてしまい、写っていない。

いったん車に戻り、KOMA さんとヤマトさんが探索したという「ボコボコクヌギ」ポイントへ。

▲こんな木が無数にあるのだが・・・。          ▲地上も樹上もカエルばっかり。

雨が激しく、びしょ濡れになったので早めに退散。ここではなぜかボウズ。採集圧が高いのか?
宿へ帰る途中、コンビニでビールを買うことに。これも今回の楽しみ。普段の採集では飲まないからね。
ここでもしぶとく街灯を見る4人。

▲カブトが飛んでいる。蛾もいっぱい。

深夜2時だというのに、ミヤマを囲んで盛り上がる。
まあ、これで明日に期待が膨らんできた。
午前3時すぎ、雨が止むことを祈りながら布団に横たわる。



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???誰かの物音で目を覚ますと、なんとPさんがカーテンを開けて外をうかがっている。
6時50分。すごい、やる気満々だ!
しばらくして、みんな目を覚ますころには、なんと明るい陽射しが燦燦と降り注いでいるではないか。
昨夜は梅雨前線の真下にいたが、どうやら今朝は南に下がってくれたらしい。
(ホントは北上してくれた方が好都合なんだけれど・・・)
とりあえず、ボコボコクヌギ地帯をもう一度探索し、そのあと檜枝岐方面へ足を伸ばすことにした。

ボコボコクヌギ地帯は、典型的な里山だ。
田んぼと緩やかな丘陵地の雑木林が延々続いている。


▲田んぼの方が気になるのか、ズブズブ入っていくKOMAさん。


▲クヌギをチェックするもんさん。           ▲こんな根台場も多い。 


▲コクワよりスジのほうが多い。


▲朝の光を浴びてまぶしくないのか、ノコペア。

ここは、ノコとミヤマの棲息分布の境界線らしい。
昼はノコ、夜はミヤマというように活動時間帯をずらして衝突を避けているのかな?
できれば、両種が同時に樹液場にいるところを見てみたかった。

さて、水生昆虫好きのもんさんと、子供時代に田んぼで遊んだ記憶が蘇ったKOMAさんが、
何かを発見して興奮しているぞ!
タガメでもいたのかな?



▲卵を背負ったコオイムシ。メスがオスの背中に産卵する。
う〜ん、なんだか育児に精出すお父さんの姿だな〜


▲タイコウチ(太鼓打)。田んぼのオタマジャクシを食べている。


▲シマゲンゴロウ。小さいくてかわいらしいヤツ。

しばらく散策したがミヤマは発見できない。
なんと、Pさんがオオムラサキを撮影したそうだ。
まるで山梨みたいに、ここは昆虫の種類が豊富でいい場所だ。
栃木が庭のようなKOMAさんもここの田んぼがいたく気に入ったようで、
こんどはスーツ姿のまんま、網を持ってタガメを採りに来ると意気込んでいた。

気がつくとすでに、12時を回っている!
すっかり福島のことを忘れていた。
あわててラーメン屋に立ち寄り、一路檜枝岐方面を目指す。

檜枝岐へは夏に1回来たことがあるが、ほとんど冬にスキーでお世話になっている。
もちろん昆虫採集で来たのははじめてだ。
雪道をトロトロ、イライラ走るのに比べると、とても速く感じられ快適である。
なんとか4時ごろには、ヒメオオのいる奥地の林道にはいった。
ブナを中心とした原生林が、どこまでも続いている。

▲ところどころ枯れたような木が見えるが、酸性雨の影響による立ち枯れだろうか?


▲車で抜きつ抜かれつ、ヤナギをルッキング。

林道の奥からは、採集を終え満足げな様子の親子連れや四駆が戻ってくる。
朝から先行者がかなり入ったらしく、先行きちょっと不安になってきた。
気温は何とか20℃をキープしているが、日没が迫っている。
Pさんがまずミヤマを見つける。ずいぶん標高の高いところにもいるので驚いた。
ほどなく、先行者取り残し?のヒメオオを発見。ここまで来た甲斐があったと、ホッと一息。

▲地上1mほどなので網も不要。きっと先行者は上ばかり見ていたのだろう。体長51ミリ。


▲これも低い位置にいて楽々手づかみ。45ミリ。

途中からヤナギには、大きなケムシが大量発生していて思わず逡巡してしまう。
ところがふしぎなことに、いちばん数が多いと思われたアカアシがいない。
しかたがないので、洞も覗きながらいくとやはり中に潜んでいた。


林道を走りきるころ、ちょうど日没となる。
街灯回りをしてから宿に帰ることにしたが、良さげな自動販売機や水銀灯の下には、
まるで番人のように採集者が張っている。
丹念にバイクで街灯を一つ一つ見て回っている地元住人らしき人も。
月齢が悪く、しかも蒸し暑くないという理由からか、発電機使用の灯火採集者はいない。
夜9時で気温は約17℃。街灯下にいた生体は、ノコ♀とアカアシ♀だけであった。

夜12時近くに宿に戻り、持ち帰り分を記念撮影。

ほんとうは翌日まで合宿は続くのだが、体力の限界?で私はあえなく離脱を宣言。
残るレギュラー3人は、ふたたび「ボコボコクヌギ地帯」へ向かうが、私は途中で別れ、
真夜中の高速で一足先に雨の東京方面へと向かった。

帰宅して2日後の月曜日の夜。会社から帰ると、怖い顔をしたかみさんに呼ばれる。
昼間、階段にゴキブリが転がっていて、あわてて殺虫剤をかけなきゃ!とよく見たらクワガタだったという。
おかしい。1匹も持ち帰ってないので、唯一家の中にいるネブトが逃げたのかと思い容器を見ると、
アカアシ♂であった。どうやら記念撮影時に這い出して、近くにあった私のバッグの中にもぐり込み、
そのまま部屋まで”ヒッチハイク”してきたらしい。
平地の雑木林にアカアシを放すわけにもいかないので、飼うことにした。
アカアシくんは、特別にもらったバナナをおいしそうに食べている。

-----最後に、遠路そしてハードスケジュールのなか、みなさんお疲れ様でした。いろいろありがとうございました。
遠征もたまにはいいですね。ぜひまた、面白そうな企画を考えましょうね。