埼玉県南部のヒラタクワガタ |
このたび、埼玉県南部で採集・観察したヒラタ成虫データが合計100個体に達したので、
多少の分析を加えながら報告しておきたいと思う。
当初から100という数字が目標だったわけではなく、採集効率をより高めるために、個体
発見時の樹種・気温・体長等をエクセルに記録し始めたのが端緒であるが、60〜70体ほど
集まった時点で、合計100個体になれば統計的にも有意になるだろうとの考えに至った。
ただ、あくまで恣意的な活動の結果で、ポイントの選定基準や観察時間が不規則である
ことなどを考えると、生態学的調査としては不十分であることを付記しておきたい。
【100個体までの道のり】
採集年月日と体長(♂のみ)、雌雄、樹種、発見した位置を下表に示した。
後述する【概要】、【データ分析編】の基礎資料となっている。
*2000〜01年の発見時の詳細は、[ポイント画像つき]ヒラタクワガタの観察記録を参照ください。
*埼玉産ヒラタの平均体長に関しては、本土ヒラタワイルド♂体長データ(都道府県別)を参照ください。
*採集のヒントに関しては、ヒラタクワガタの採集にチャレンジ!! を参照ください。
累計 | 年 | 月日 | 体長 | 雌雄 | 樹種 | 位置 | 累計 | 年 | 月日 | 体長 | 雌雄 | 樹種 | 位置 |
1 | 2000年 | 6月16日 | 48 | ♂ | シラカシ | 樹液 | 51 | 2002年 | 8月28日 | 42 | ♂ | クヌギ | 洞 |
2 | 2000年 | 6月21日 | 30〜 | ♂ | シラカシ | 樹上 | 52 | 2002年 | 8月29日 | 34 | ♂ | クヌギ | 樹上 |
3 | 2000年 | 6月26日 | 44 | ♂ | シラカシ | 樹上 | 53 | 2002年 | 9月21日 | 35 | ♂ | クヌギ | 洞 |
4 | 2000年 | 6月27日 | 30 | ♂ | シラカシ | 樹液 | 54 | 2003年 | 5月29日 | 37 | ♂ | コナラ | 洞 |
5 | 2000年 | 7月3日 | 37 | ♂ | コナラ | 樹液 | 55 | 2003年 | 6月11日 | 未計測 | ♂ | クヌギ | 洞 |
6 | 2000年 | 7月10日 | 34 | ♂ | コナラ | 樹液 | 56 | 2003年 | 6月11日 | 未計測 | ♀ | クヌギ | 洞 |
7 | 2000年 | 7月16日 | 41 | ♂ | クヌギ | 洞 | 57 | 2003年 | 6月16日 | 42 | ♂ | クヌギ | 地中 |
8 | 2000年 | 7月19日 | 30 | ♂ | シラカシ | 樹上 | 58 | 2003年 | 6月17日 | 49 | ♂ | シラカシ | 樹上 |
9 | 2000年 | 7月21日 | 46 | ♂ | コナラ | 樹上 | 59 | 2003年 | 6月18日 | 44 | ♂ | クヌギ | 洞 |
10 | 2000年 | 7月22日 | 28 | ♀ | コナラ | 洞 | 60 | 2003年 | 6月19日 | 50 | ♂ | コナラ | 洞 |
11 | 2000年 | 7月26日 | 37 | ♂ | クヌギ | 樹液 | 61 | 2003年 | 6月23日 | 46 | ♂ | クヌギ | 洞 |
12 | 2000年 | 7月28日 | 40 | ♂ | クヌギ | 樹液 | 62 | 2003年 | 6月27日 | 未計測 | ♀ | クヌギ | 地中 |
13 | 2000年 | 7月30日 | 30 | ♂ | クヌギ | 洞 | 63 | 2003年 | 6月27日 | 46 | ♂ | クヌギ | 洞 |
14 | 2000年 | 7月30日 | 48 | ♂ | クヌギ | 洞 | 64 | 2003年 | 6月27日 | 未計測 | ♀ | クヌギ | 洞 |
15 | 2000年 | 8月7日 | 50 | ♂ | クヌギ | 地中 | 65 | 2003年 | 6月27日 | 38 | ♂ | コナラ | 樹上 |
16 | 2000年 | 8月7日 | 30〜 | ♂ | クヌギ | 地中 | 66 | 2003年 | 6月27日 | 未計測 | ♀ | シラカシ | 樹上 |
17 | 2000年 | 9月2日 | 30〜 | ♂ | クヌギ | 洞 | 67 | 2003年 | 6月27日 | 32 | ♂ | シラカシ | 樹上 |
18 | 2000年 | 9月2日 | 30〜 | ♂ | クヌギ | 洞 | 68 | 2003年 | 6月30日 | 44 | ♂ | クヌギ | 洞 |
19 | 2001年 | 6月5日 | 50 | ♂ | コナラ | 樹上 | 69 | 2003年 | 7月4日 | 53 | ♂ | クヌギ | 洞 |
20 | 2001年 | 6月10日 | 38 | ♂ | クヌギ | 洞 | 70 | 2003年 | 7月10日 | 53 | ♂ | クヌギ | 洞 |
21 | 2001年 | 6月19日 | 47 | ♂ | シラカシ | 樹上 | 71 | 2003年 | 7月22日 | 58 | ♂ | クヌギ | 洞 |
22 | 2001年 | 6月19日 | 未計測 | ♀ | シラカシ | 樹液 | 72 | 2003年 | 7月24日 | 未計測 | ♀ | シラカシ | 樹上 |
23 | 2001年 | 6月20日 | 48 | ♂ | シラカシ | 樹上 | 73 | 2003年 | 7月31日 | 47 | ♂ | クヌギ | 樹上 |
24 | 2001年 | 6月23日 | 40 | ♂ | シラカシ | 樹上 | 74 | 2003年 | 8月1日 | 37 | ♂ | クヌギ | 洞 |
25 | 2001年 | 6月26日 | 50 | ♂ | クヌギ | 樹液 | 75 | 2003年 | 8月4日 | 41 | ♂ | クヌギ | 洞 |
26 | 2001年 | 6月27日 | 36 | ♂ | コナラ | 洞 | 76 | 2003年 | 8月20日 | 41 | ♂ | クヌギ | 洞 |
27 | 2001年 | 6月29日 | 40〜 | ♂ | クヌギ | 洞 | 77 | 2003年 | 8月20日 | 38 | ♂ | クヌギ | 洞 |
28 | 2001年 | 6月30日 | 43 | ♂ | クヌギ | 洞 | 78 | 2003年 | 8月23日 | 37 | ♂ | シラカシ | 樹上 |
29 | 2001年 | 6月30日 | 27 | ♀ | クヌギ | 洞 | 79 | 2003年 | 8月26日 | 34 | ♂ | クヌギ | 洞 |
30 | 2001年 | 6月30日 | 33 | ♀ | クヌギ | 洞 | 80 | 2003年 | 9月26日 | 30〜 | ♂ | クヌギ | 樹液 |
31 | 2001年 | 7月6日 | 41 | ♂ | クヌギ | 地中 | 81 | 2003年 | 9月26日 | 未計測 | ♀ | クヌギ | 洞 |
32 | 2001年 | 7月10日 | 36 | ♂ | クヌギ | 樹液 | 82 | 2004年 | 5月17日 | 31 | ♂ | シラカシ | 樹上 |
33 | 2001年 | 7月10日 | 41 | ♂ | クヌギ | 樹液 | 83 | 2004年 | 5月21日 | 未計測 | ♀ | シラカシ | 樹上 |
34 | 2001年 | 7月10日 | 53 | ♂ | クヌギ | 洞 | 84 | 2004年 | 5月29日 | 52 | ♂ | クヌギ | 樹液 |
35 | 2001年 | 7月10日 | 58 | ♂ | クヌギ | 洞 | 85 | 2004年 | 6月10日 | 44 | ♂ | コナラ | 樹液 |
36 | 2001年 | 7月21日 | 43 | ♂ | クヌギ | 樹上 | 86 | 2004年 | 6月14日 | 50 | ♂ | シラカシ | 樹液 |
37 | 2001年 | 7月24日 | 39 | ♂ | コナラ | 洞 | 87 | 2004年 | 6月17日 | 31 | ♂ | クヌギ | 樹液 |
38 | 2001年 | 8月16日 | 58 | ♂ | クヌギ | 洞 | 88 | 2004年 | 6月22日 | 37 | ♂ | クヌギ | 樹液 |
39 | 2002年 | 5月27日 | 47 | ♂ | クヌギ | 樹上 | 89 | 2004年 | 6月22日 | 未計測 | ♀ | クヌギ | 地中 |
40 | 2002年 | 6月19日 | 37 | ♂ | クヌギ | 洞 | 90 | 2004年 | 6月22日 | 33 | ♂ | クヌギ | 洞 |
41 | 2002年 | 7月2日 | 40 | ♂ | クヌギ | 樹上 | 91 | 2004年 | 6月22日 | 未計測 | ♀ | シラカシ | 樹液 |
42 | 2002年 | 7月4日 | 39 | ♂ | クヌギ | 地中 | 92 | 2004年 | 6月23日 | 34 | ♂ | シラカシ | 樹上 |
43 | 2002年 | 7月8日 | 48 | ♂ | クヌギ | 洞 | 93 | 2004年 | 6月29日 | 45 | ♂ | コナラ | 樹液 |
44 | 2002年 | 7月11日 | 27 | ♂ | クヌギ | 洞 | 94 | 2004年 | 6月29日 | 未計測 | ♀ | コナラ | 樹液 |
45 | 2002年 | 8月12日 | 40 | ♂ | クヌギ | 洞 | 95 | 2004年 | 6月29日 | 41 | ♂ | クヌギ | 樹液 |
46 | 2002年 | 8月12日 | 34 | ♂ | コナラ | 洞 | 96 | 2004年 | 6月30日 | 未計測 | ♀ | クヌギ | 洞 |
47 | 2002年 | 8月14日 | 41 | ♂ | クヌギ | 地中 | 97 | 2004年 | 7月5日 | 49 | ♂ | クヌギ | 洞 |
48 | 2002年 | 8月14日 | 33 | ♂ | クヌギ | 地中 | 98 | 2004年 | 7月12日 | 32 | ♀ | クヌギ | 洞 |
49 | 2002年 | 8月22日 | 51 | ♂ | クヌギ | 洞 | 99 | 2004年 | 7月14日 | 34 | ♂ | クヌギ | 洞 |
50 | 2002年 | 8月25日 | 未計測 | ♀ | クヌギ | 洞 | 100 | 2004年 | 7月23日 | 28 | ♂ | クヌギ | 樹上 |
【概要】
●調査地域
自宅から徒歩で行ける場所を含め、半径約10`の範囲。100個体のうち99は埼玉県内で確認された個体。1個体は
東京都内だが、埼玉県境にほど近い地点であり、調査地域を「埼玉県南部」と一括することに異存はないであろう。
●調査時期
2000年6月〜2004年7月。毎年5〜6月、気温上昇に伴い発生した成虫が、9〜10月に越冬をはじめるまでの期間にあたる。
樹液場の形成と消滅という変化の中で、移動と定着、交尾と産卵が行なわれる。
●地形・植生
標高は40〜180m。
いわゆる「武蔵野の雑木林」と呼ばれる平地林、屋敷林、丘陵地の二次林(クヌギ・コナラ主体)であり、河川敷の
ヤナギは対象としていない。したがって、埼玉県南部やその周辺のヒラタ生息環境を網羅したものではない。
●個体のカウント方法とその正確性
2000年こそ大半を採集したが、01年以降は、最小・最大個体など標本的価値がある個体を除き、体長計測後に
リリースすることに徹した。したがって、越冬個体をダブルカウントしないよう留意した。前年に発見した木とそれに
隣接する木で翌年に発見された同サイズの個体は、データに含めていない。
●調査地域への人為的な影響
チェックした木のうち9割は他の採集者も訪れているため、本来確認されるべき個体数は、このデータを上回ってい
るはずである。住宅地に隣接したポイントが多く、管理者による伐採、大規模開発に伴う雑木林の喪失による影響は
大きい。しかし、これらの要因が生息個体数の逓減とどれほど相関関係があるかについては、簡単な議論では終わ
らないだろう。(後述)
●「埼玉南部でヒラタ100個体」の客観的難易度
ヒラタの場合5シーズンを要したが、他種を同じエリアで100個体確認するまでに要する時間(予想)は、コクワなら
1日、ノコギリなら1〜2シーズンで十分であろう。
また、同じヒラタで他地域と比べてみると、関西では1〜2シーズンか? また逆に関東北部ならば、埼玉南部より
はるかに困難になると思われる。端的に言えば埼玉県南部は、個人の愛好家レベルでそこそこ努力すれば、
「希少種感覚のヒラタを採集する達成感が味わえる地域」ではないだろうか。
【データ分析編】
@樹種別採集個体数
100個体を確認した樹木は、この3種類。埼玉にとどまらず関東平野全体で考えても、「樹液採集に適した樹木の
御三家」といっても過言ではない。とくにクヌギはコナラに比べて樹液付きの捲れや洞が生じやすく、格好のホスト
木となっている。
武蔵野台地の雑木林における絶対数はコナラが圧倒的に多いが、やはりポイントの安定感、確実性を考えるとク
ヌギがナンバーワンである。ただ、小学生時代に採集したヒラタはすべてコナラ洞か捲れであったことを考えると、
採集圧の有無や木の生育環境によっては、コナラもクヌギと同等のパフォーマンスを発揮する可能性を秘めて
いるといえよう。健闘したのはシラカシ。樹液の噴出は気まぐれでかつ微量であるにもかかわらず、ヒラタが好む
ようである。また、上記3種以外にも樹液を出す樹種はあり、注意深く観察すれば思わぬ樹種でも発見が期待でき
るであろう。
A発見場所
さすがに、潜洞性の強いクワガタの代表である。地中と洞・捲れを合わせると、57%が「人間から見えない場所」
にいたことになる。「樹上での発見」が23%で、一見、上記の性質と矛盾するのでは? と誤解されがちである。
が、こうしたケースのほとんどは、出現したばかりの新成虫や越冬成虫が樹液場へ移動(飛翔)する前段階に
すぎず、隠れ場所として適した捲れや洞を求めているほんのわずかな時間でもある。
樹液採集の時期でありながら、樹液場で体を露出させているところを発見したのは2割。
よく、「ヒラタが見つからない→ここにはいない」と断定する方がいらっしゃるが、樹上に張り付いているカブト、
コクワ、ノコと同様の生態をヒラタに対して思い描いていると、こうした隘路にはまりやすいのではないだろうか。
しかし、こうした生態をWebで公開することによって、樹皮を剥がす悪辣な採集者が増加するとしたら、甚だ遺憾
なことでもあるのだが。
*樹上…樹液が出ている木にいても、樹液から約1m以上離れていた場合は、
「樹上」とみなしてカウントした。
B♂♀の比率
「なぜ♀が見つからないのか?」
ヒラタ採集における最大の疑問は、これに尽きるのではないだろうか。
コ、ノコはほぼ♂と同数の♀を樹液場で観察でき、しかも樹上で人目をはばからず(?)交尾中であることがほとんど
である。結局この5年間で、交尾中のヒラタを野外で見ることは一度もなかった。洞や樹皮めくれ内でペアを発見する
ケースは時々あるが、♀は♂以上に警戒心が強く、♂より最深部に潜んでいることが多い。また、産卵活動に入ると
いっそう樹液採集は困難になる。まず確実なのは発生の時期。そして頻度は低いが、越冬前の9月に一部個体が樹
液場に姿を見せるときが最後のチャンスであろう。
C生息していた樹木の現状
下の表は、個体を確認した樹木を樹種別にナンバリングしたものである。「クヌギ1」とは、最初に個体を確認した
木で、「クヌギ27」は最近に個体を確認した木を表している。また、それぞれの木で年度別に確認された個体数を
数字で示している。実際に採集・観察された樹木の本数は、クヌギが27本、コナラ10本、シラカシ5本の計42本。
このうち、なんらかの要因で採集が不能もしくは著しく困難になってしまった樹木は、計20本(表の赤アミ部分)に
達し、全体の約半数を占めている。毎年、あたかも年中行事のように新規ポイントを探さざるを得ないのは、まさに
このようにして採集に適した樹木が失われていくからである。
「採集に不適な樹木」になる自然的要因は、風害による倒壊、幹の全面で樹液が噴出したことによる枯渇→枯死
(立ち枯れ)、形成層の生長による洞の閉鎖などである。いっぽう人為的要因には、大規模開発によるポイント
そのものの喪失、採集者による樹木の破損、管理者による伐採などがある。
確認された個体数 | ||||||
識別 | 00年 | 01年 | 02年 | 03年 | 04年 | 樹木の現状 (不適事由) |
クヌギ1 | 1 | |||||
クヌギ2 | 2 | 伐採 | ||||
クヌギ3 | 2 | |||||
クヌギ4 | 2 | 1 | 2 | 3 | ||
クヌギ5 | 1 | 破損 | ||||
クヌギ6 | 1 | 破損 | ||||
クヌギ7 | 2 | 枯渇 | ||||
クヌギ8 | 1 | |||||
クヌギ9 | 5 | 1 | 破損・枯渇 | |||
クヌギ10 | 1 | 1 | 枯死 | |||
クヌギ11 | 2 | |||||
クヌギ12 | 1 | |||||
クヌギ13 | 3 | 2 | 2 | |||
クヌギ14 | 1 | 1 | 倒壊 | |||
クヌギ15 | 2 | 1 | ||||
クヌギ16 | 3 | |||||
クヌギ17 | 1 | 枯渇 | ||||
クヌギ18 | 1 | 3 | ||||
クヌギ19 | 3 | 1 | 破損 | |||
クヌギ20 | 5 | 伐採 | ||||
クヌギ21 | 1 | 破損 | ||||
クヌギ22 | 1 | |||||
クヌギ23 | 2 | 破損 | ||||
クヌギ24 | 1 | |||||
クヌギ25 | 2 | |||||
クヌギ26 | 1 | |||||
クヌギ27 | 1 | |||||
コナラ1 | 1 | 1 | 破損・枯渇 | |||
コナラ2 | 2 | 倒壊 | ||||
コナラ3 | 1 | 破損・枯渇 | ||||
コナラ4 | 1 | 枯渇 | ||||
コナラ5 | 1 | 枯渇 | ||||
コナラ6 | 1 | 枯渇 | ||||
コナラ7 | 2 | 洞閉鎖 | ||||
コナラ8 | 1 | 破損・枯渇 | ||||
コナラ9 | 1 | |||||
コナラ10 | 2 | |||||
シラカシ1 | 1 | 1 | 1 | |||
シラカシ2 | 1 | 3 | 2 | 3 | ||
シラカシ3 | 3 | |||||
シラカシ4 | 1 | |||||
シラカシ5 | 2 | 1 |
このテーマはとても奥が深い。
(発見した樹木がなくなる)=(採集できなくなる)
という単純な図式では語れない。
なぜなら、樹液の枯渇は立ち枯れの前段階でもあり、数年後には発生源として生態系の重要な役割を担う
ことになる。また、樹皮めくれが派手で幹が抉れているほど風害によって倒壊しやすいが、これもいずれは
発生源となる。
有力な木が伐採されると、採集者心理としてはかなり落ち込んでしまうものだが、冷静に考えると切り株さえ
残っていれば、「根食い」のヒラタにとっては格好の産卵場所を提供することにもなろう。
蛇足だが、武蔵野の雑木林における萌芽更新は根元から伐採するためノコやヒラタなどにとっては好都合
であるが、管理が行き届いているほど立ち枯れが少なくなり、オオクワの生息にはやや不向きだったのでは
ないだろうか。
要は、「自然なポイント消滅」と「自然なポイント発生」の均衡(トータルバランス)が保たれていることが、生息
環境の存続にとって不可欠だ。
雑木林管理の一環としての伐採や倒壊、枯死が進行する傍らで新たな樹木が樹液を出し始め、数年間かけ
て新たな樹皮捲れが生成されていく。こういう新陳代謝が可能になる「最低限の単位」とは何か?
雑木林ではなく、一見並木のようにクヌギがあるだけでも、生息環境として適す場合もある。
極端なことを言えば、樹液を出し洞を持つ大木が一本しかなくても、その根部が発生源となり累代を重ねる
ことも可能であろう。
広大な雑木林ではヒラタがあまり採れず、意外にも住宅地の貧弱な緑地で採れる・・・という話をよく耳にする。
前者ではポイントが絞りにくく後者はその逆、という理由も大きいだろうが、「必要最小限の生息環境とは?」
という疑問に対する解答のひとつとして興味深い。
【トピック編】
(作成中)