力率(ワットとボルトアンペア)

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また専門的っぽいタイトルになってしまいました。誘導電動機の項目で登場した“コイル”には不思議な性質があります。コイルに交流を加えると、そこに流れる電流が少しずれるのです。ほかにも電源の周波数によって抵抗値が変わったりもします。これらはどれも電流とそのまわりにできる磁界で説明することができます。磁界は1本のまっすぐな電線に電流を流したときでもできますが、コイルは1本の電線のすぐ隣にまた電線があり、そのすぐ隣にまた電線があって同じ向きに電流が流れるために、磁界どうしが影響しあうためです。ここらへんを詳しく書くと電気磁気学の講義になってしまうので省略。
それで、コイルの電圧と電流がずれるという話に集中しましょう。とにかく、そういう性質があるんだ、というふうに考えてください。直流ならたとえずれても(コイルにだって、直流をずらす性質はありませんけど)問題ないです。ところが交流の電圧と電流がずれるとなかなかたいへんなことになります。
“100ボルトは100ボルトじゃない”のページをもう一度見てください。
見てきましたか?…いや、別に空改行しなくてもいいんだけど。そこでは、交流の電圧と電流が一致して増減しているときの図が載っています。これです。
…だったら、さっきの空改行は余計だろって>自分。
直流はこの際関係ないので、交流の1サイクル分(50分の1秒または60分の1秒)を1つのグラフにまとめました。
電圧と電流は同じラインで、それぞれ100V1Aとすると、電力は太線のようになり、平均で100Wになります。
もし、電流が1サイクルの4分の1遅れたらどうなるでしょうか。
電流は点線で表してあります。電力は太線のようになり、平均電力はなんと0W。100Vで1A流れているのに、電気を消費しない、つまり何も仕事ができない機械となってしまいます。ま、現実世界にこんな機械はありませんが(うちの社員に、いる!という話は別のサイトでお願いします)、1サイクルの12分の1くらいずれることはあります。
100V1A流れているのに約83Wの機械ということになります。
加えた電圧と流れる電流の単純な積を「皮相電力」といい、「ボルトアンペア」という単位で表します。100Vで1A流れる機械は100VA。これに対する消費電力の割合を「力率」といいます。83W÷100VA=83%(パーセントなので100を掛けるのを忘れずに)。
力率がなぜ大切なのかというと、100Vで1A流れているわけで“鉄塔はなぜ高い”のページに書いたように、途中では1A分の損失があるのに工場では83W分の仕事しかできないということです。1Aだからいいようなものの、全部の工場や家庭がこんな調子では、電力会社の施設での損失が大きくなって何のための発電所かわからなくなってしまいます。そのために工場などの電気料金には力率割引(割増)があり、力率の低い工場は電気代が高くなるという制度になっています。
なお、「力率」を英語で“Power Factor”といいます。割とそのまんまですね。っていうか、英語をそのまま日本語に翻訳したのでしょう。他に専門用語で「cosφ」という表現もあります。交流の1サイクルを360度の円で表現したとき、電圧と電流のずれた角度の余弦が力率になるためで、これはベクトル図を書くとそっち方面に強い人にはすぐわかるのですが、そっち方面に強い人がわざわざこんなページを読むとは考えられないので、先ほどの約83Wの状態を図示するだけにします。
また、エクセルに強い人用に電圧と電流のずれを角度で入力するとグラフが描ける表も用意しました。

エクセルファイル

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