架空地線と架空接地線

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街の中で電柱を眺めていて、突然そんなことばを思い出しました。私がまだ若くて、学んだことがどんどん頭に入っていた頃に習った用語です。「架空地線」と「架空接地線」は名前も似ているし、空中に張られたアース線ということも似ているが、役割が違うものだからちゃんと区別しなければいけない、というお話。普段の生活にはまったくい関係のない、どうでもいいことですけど思い出したついでに書いてみます。
そんな前置きをして・・・
「架空地線」とは「架空」の「地線」です。この場合の「架空」とは「架空戦記」の架空ではなく、文字そのまま、「空に架かった」という意味なので念のため。そして「地線」とは「大地(アース)につながった線」です。送電線に雷が落ちたときに、送電線やそこにつながった変電所などを守るためのもので、「送電線の避雷針」といえばわかりやすいでしょうか。でも送電線の上に空に向けた避雷針をツンツン立てるわけにはいかないので、横にしてみたら、電線と同じように鉄塔から鉄塔に電線を張るだけですんだ、ということでしょう。この架空地線は鉄塔とつながっているので、雷が落ちた時の電流は送電線に流れることなく、鉄塔から地面に流れるので送電線を守ることができます。
もう一つの「架空接地線」ですが、これは「架空」の「接地(アース)線」です。この場合の「架空」も(以下略)。
電柱の上には、場合によって柱上トランスや区分開閉器などの機器が取り付けられています。これらの機器のケースは安全のためアースしなければなりません。また、低圧の単相3線式配電線(家庭などにつながる100/200Vの電線)の中性線もアースしなければなりません。通常であればアース線を電柱に沿って下へ伸ばし、電柱の根本あたりの地面に埋めれば地面とつながってアースとなります。しかし世の中そんなに都合のいい地面ばかりとは限りません。どうやっても電線を地面に埋めただけではつながらない、電気の流れない場所が存在します。そんな場合には、地面の都合の良いところまでアース線を伸ばします。どうやって伸ばすかというと、電線と同じように隣の電柱まで空中に張ります。都合の良い場所の電柱に届いたら、そこで下に向きを変えて地面に埋めてやります。ついでに付近の電柱の上にある機器のアース線も一緒にまとめてしまうこともあります。このときは「共同架空地線」という名前になって、なぜか接地線なのに「接」の字が消えてしまうのも、架空地線と混同する原因かもしれませんね。
こっちは機器のアース線で、雷の電流を逃がすものではありませんので、接地抵抗(地面とのつながりよさ)も電線の太さも「架空地線」とは違います。
ところで、“機器のケースや中性線は安全のためにアースする”ってどういうこと? と思ったあなた、たいへん優秀な人です。安全のためといっても、人が感電して危険なのは、電圧の違う部分を触って体の中に電流が流れるからです。たとえトランスの端子に直接触ったとしても電流が流れなければ何ともないはずです。鳥が高圧送電線にとまっていても感電しないのと同じです。
ということで、高圧と低圧の混触とか、接地の基本的な理屈について書き始めてみましたが、けっこう難しい話になってしまうので、すぐにはうまくまとめられません。「いずれ」ということでご容赦いただき、今回はここまでとします。

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