自民の後退に構造的要因

2000年6月衆議院選挙

読売新聞夕刊: 2000年(平成12年)6月26日(月曜日)

白鳥 令
(東海大教授)

 自民党の大幅後退は、森首相の発言の影響もあっただろうが、それ以上に構造的なものに起因すると考えるべきである。自民党経済運営の神話は10年にわたる不況で消えており、農民層にしても産業界にしても現在の経済状況下では利害が多様化して、締め付けても自民党支持で一本化出来る状態にはない。今回与党3党で安定多数議席を獲得出来たのはむしろ善戦であって、選挙協力の効果が出たものと見なければならない。
 民主党は、今回の選挙で、自民党に対抗する野党第一党としての地位を不動のものとしたと考えて良い。
 前回比例による救済で当選した民主党前議員の、小選挙区における勝利が、今回特に顕著であった。これら民主党前職は、年齢が若いだけでなく、弁護士であったり医者であったり市民運動のリーダーであったり、さまざまな分野における専門家が多い。かれらが、国会での活動を通して、小選挙区で自民党候補に競り勝つだけの力をつけてきた。これに対し、自民党の候補者は、既得の権益の上に乗って当選する二世議員が多い。かれらは権益の台座をはずされてしまうと以外に弱い。この両党若手候補者の経歴の差が、両党の将来に微妙な影を落としそうだ。
 与党3党で安定過半数を獲得したといっても、65議席も議席を減らし、森総理の政治指導者としての能力に不安のあることが判明した後では、来年7月の参議院選挙まで森総理で進むことは困難かも知れない。

衆議院選挙の結果
(2000年6月25日)

政党名 小選挙区
(300)
比例代表
(180)
合計 解散時議席
自民党 * 177 56 233 271
民主党 80 47 127 95
公明党 * 7 24 31 42
共産党 0 20 20 26
保守党 * 7 0 7 18
自由党 4 18 22 18
社民党 4 15 19 14
改革クラブ * 0 - 0 5
無所属の会 5 0 5 4
自由連合 1 0 1 1
無所属 15 - 15 5
合計 300 180 480 499
欠員 1

与党議席総計

与党合計 *

191 80 271 336