1993年衆院選特集「政治学者10人」
(3)国民の選択どう生かす

選択肢提示怠った社党

朝日新聞朝刊: 1993年(平成5年)7月20日(火曜日)

白鳥 令
(東海大教授)

 自民一党支配の流れを変えようという今回の選挙で、社会党はなぜ惨敗したのだろうか。
今回の解散劇が、内閣不信任案への自民党羽田派の賛成投票と分党から始まった点を考えると、社会党は初めから政治の主導権を握っていなかったといえる。
 それでも社会党は、流動化した政治状況を日本の政治の政策的点検点にすることができたはずである。
 だが社会党は、羽田氏を首班とする非自民連立政権を唱え、選挙の枠組みを自民党対新政党、梶山氏対小沢氏という旧自民内、旧田中派内の権力闘争へと固定してしまった。
 たとへ実現しなくても野党第一党への政権移行を主張すべきなのに、この政治的判断の悪さは救いようがない。
 しかもこの間に社会党は、非自民政権の樹立のためには現自民党政権の政策を継承するとまで宣言してしまった。
 野党第一党のなすべきことは、常に、政権党が実施している政策とは違った別の政策的選択肢を選挙民に提示することであるが、この義務を社会党は放棄したのである。別の選択
肢を選びたい国民が、第三の道を唱える日本新党や「さきがけ」へ投票することになったのは当然といえよう。