1993年衆院選特集「政治学者10人」
(2)総選挙が問うもの

「政策選ぶ政治」確立を

朝日新聞朝刊: 1993年(平成5年)7月4日(日曜日)

白鳥 令
(東海大教授)

 混乱の中の今回の選挙でわれわれは何を選択すればよいのだろうか。重要なことは状況を正確に確認することである。いわゆる政治改革論者が目指していた二大政党制の可能性は、現在跡形もない。自民党はさきがけ、新生党と三分し、日本新党、社会党、公明党、共産党、民社党、社民連と数えていけば、状況はあきらかに多党化へ進んでいる。
 多党化状況のなかで可能なのは連立政権のみである。自民党の一党支配を終えることには意義がるが、政権獲得のためだけの、「政策なき連立」を容認するわけではいかない。「利権を求める政治」を捨てるだけでなく、「政権を選ぶ政治」を確立する必要があるからだ。政策の優先順位という点では、選挙制度の改変よりも政治資金の浄化がはるかに緊急の問題である。建設業界と癒着にみられるような政治の腐敗は、これ以上放置しておくことができない。
 企業・団体の献金の全面禁止が無理としても、英国で行っているように、企業の政治献金は株主総会で承認を求め、労組・団体の献金は政治資金特別会計を作って透明化することは直ちに行われなければならない。各党に望まれることは、政策を基礎にその構造と体質を作り直すことである。