趣味人の放言 周辺(じゃないものも含む?)映画編


  ここには、私が鑑賞してきた映画の感想を書き記していく予定です。一応『指輪』コンテンツの中に属しているため、ファンタジー系の映画に関するものが中心となるはずですが、「これは面白かった」と思った作品であれば、ジャンルにこだわらず書き散らしていくことになるでしょう。(なにしろ、夫婦割引でひとり1000円で1本。観なきゃ損、てな気分になってますんで。)


パイレーツ・オブ・カリビアン  ワールド・エンド』(200 7年5月28日)
 5月27日に劇場で鑑賞。
 
以下、ネタばらしがあるのでこれから鑑賞予定の方は注意。


 正直な感想を述べれば、「かなりダルイ」作品。3時間近い長尺でありながら、盛り上がる場面が少ない。
 なんたって各登場人物の行動原理が分かりにくいというのが最大の難点。脚本の狙いとしては「裏切りに次ぐ裏切り、先の読めないスリリングな展開」を目指したつもりだろうが、さっぱりスリリングじゃないんだ、これが。サオ・フェンなんてただのアホだろ、あれじゃ。
 それ以外にも脚本の不備が目についた。ラスト近くの海戦シーンなどはその典型。
 女神カリプソは大渦作って見せただけ?
 残りの海賊長たちは見物人かい?
 あれだけの大艦隊を率いて出動してきていながら、旗艦だけがノコノコと最前線に出てきてあっさりと撃沈されるに至ってはもはや噴飯もの。どんなクソゲーでもラスボスはいちばん奥の部屋でふんぞり返ってるもんですよ、ベケットさん。
 どこかの映画批評サイトで「まるでアトラクションのような映画」とか書かれていたような気がするが、まさにそのとおり。それ以上でもそれ以下でもない作品であった。

 個人的にはキャプテン・バルボッサが出ている場面だけが楽しめた。あの人だけは文句なくいい。さらに続編作るつもりなら、ぜひ彼をメインにしてやってくれ。よろしく頼む。(ありえないけどね。)

『フラガール(2007年3月19日)
 3月18日、DVDにて鑑賞。
 なるほど2006年度の映画各賞を総なめにしたというのが納得できる作品。
 物語には特に捻りがあるわけでもなく、ほぼ予想通りに展開していく。
 ある技芸の習熟に情熱を傾け、それを実現していく主人公の姿を描くストーリーというのは、古典的とさえいえるもの。
 吹き替えや特殊撮影などに頼らず、俳優自身が実際にその技術を習得していくというのも、『ウォーターボーイズ』や『スウィングガールズ』などの流れを汲むもので、とりたてて新鮮味があるわけではない。
 それでもなお十分な説得力があるのは、やはりダンスシーンの迫力ゆえだろう。
 蒼井優は演技もダンスも実に上手い。
 彼女が大きな注目を集めているのも当然といえるだろう。
 極論すれば、彼女を見るためにだけでも鑑賞する価値のある作品といってよいと思う。

 

 『 ナイトミュージアム(2007年3月19日)
 3月12日、先行上映にて吹き替え版を鑑賞。
 映画紹介サイトなどでは「爆笑コメディ」なんてアオリがつけられていたが、鑑賞後の感想はちょっと違った。
 どちらかといえば、クスッと笑える映画。
 後味はなかなかよい。
 で、絶賛できるかというと、必ずしもそうではない。
 「毒」が足りない気がしてならなかった。
 これは、飽くまでもひねくれた人間の感想。
 ファミリー映画として安心して見られることだけは間違いないと思う。

 

『プラダを着た悪魔』(2006年11月19日)
 たまには映画でも見に行こうか、というノリでなんとなく鑑賞。
 「女性映画」という触れ込みだったので、大して期待もしていなかったが、思ったよりはるかに面白かった。
 よくあるタイプの「キャリア・ウーマンのサクセス・ストーリー」ものなのだが、それでも面白く感じたのは登場する女性たちがそれぞれに魅力的であったからだ。
 主人公の変身ぶりも見事だし、彼女の先輩もなんとなく可愛かった。
 そして、「悪魔」のような上司を演じるメリル・ストリープが圧巻。さすがにアカデミー賞女優である。
 (気になって彼女の過去の出演作をチェックしてみたら、大学時代に映画館で鑑賞して大いに感動した覚えのある『ジュリア』が彼女のデビュー作だった。どんな役で出てたんだっけ。)

 主人公が最後の決断を下す瞬間の描写がいま一つ説得力がなく、そこが消化不良のままに唐突なエンディングを迎えてしまったような気がしてならないのが残念といえば残念。

 

ゲド戦記』(2006年8月8日)
 公開初日(7月29日)、京都にておおくまねこさんとゲド鑑賞OFFを敢行。
 一般公開以前からネットでは酷評の嵐。(公開後もその流れは基本的に変わっていないようだ。)

 鑑賞してみた結果、私も以下のようなことを感じないわけにはいかなかった。
 何より、テーマ――であると監督が考えているらしいもの――が台詞として登場人物の口から何度も語られていて、くどい。それ以前に、映像作品の表現手法としては稚拙。
 世界が乱れてしまった理由が明確に示されず、作品の最後に至ってもその問題が解決されたかどうか語られない。
 重要な登場人物に関する伏線が十分に張られているとはいい難い。
 登場人物の名前以外は原作の面影もないほどのアレンジが行われており、原作好きからすれば、これは同人誌レベルの二次創作にしかなっていないように思えてしまう。

 とまあ、文句をつけようと思えばいくらでもつけられる内容。
 しかし、時間が経ってくるとともに、不思議にもう一度見たくなってきている自分がいたりする。

 いずれにしても、映画鑑賞後に「タイトルが『ゲド戦記』である理由が分からない」という声をあちこちで上げていらっしゃった原作未読の方々、これを機会にぜひとも読んでみてください。(これが一番言いたいことだったりして)

 

パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト』(2006年8月8日)
 7月19日(月)、先行上映にて鑑賞。
 最初から第3作と完全につながる形で企画されて2作同時に撮影されており、正直な話、この作品だけで評価することは難しい。
 それでも無理矢理単独の作品として比較した場合、第1作ほどの面白さはないような気がした。
 もちろん、部分的にはツボにはまる場面もあったりはしたのだが。
 とはいえ、前作の主要な登場人物や印象的だった脇役が概ね再登場する形になっており、前作が楽しめた私にとってはそれだけでもうれしかった。
 逆に言えば、第1作を見ないでいきなりこの作品を見ることだけは避けたほうがよい。(ジョニー・デップやオーランド・ブルームの顔を見ているだけで満足できるという人は例外だが…って、そういう人は絶対第1作も見てると思うが。)

 

M:i:3』(2006年8月8日)
 7月8日(土)鑑賞。
 この映画の見所はなんといってもトム・クルーズのランニング・フォームの美しさである。
 私にとってはそれだけでも見る価値があった。

 

『ダ・ヴィンチ・コード』(2006年6月12日)
 6月10日(土)鑑賞。
 私としては珍しく、原作を読まずに見に行った。
 で、感想。
 「強いぞ、ガン爺!!凄いぞ、ガン爺!!」
 とにかく、イアン・マッケランがいい。私は彼が登場してからずっと、いつ魔法を使ってくれるのかとワクワクしながら画面を見つめ続けていた。(未だに中毒症状から抜け出してなかったのね…。)
 結局、トム・ハンクスもジャン・レノも完全にぶっ飛ばしてしまっていて圧倒的。イスタリの威力――分からない方、置いてけ堀にしてごめんなさい――をまざまざと見せつける堂々の快演ぶりであった。
 で、映画そのものはどうだったのかと言われると、これがかなり困る。面白いことは確かだ。でも、もう一度見たいかと問われれば、「ガン爺の杖の一撃だけは見てみたい」と答えるしかないのだ。

 もうひとつ感じたことを付け加えておこう。
 「こういうストーリーなら、敢えて原作を読んでみる必要はないな。」

 

『陽気なギャングが地球を回す』(2006年 6月12日)
 5月27日(土)鑑賞。
 伊坂幸太郎の原作が大変気に入っていたので、ある意味不安を感じながら見た。
 もっと面白くできたはずなのだが、なんて思わされたのは事実。また、「原作を既に読んでいる観客まで騙してやろう」という製作者の意図が透けて見えたのもいささか残念ではあったが、総合点をつければ合格ラインには到達していたのではないか。何よりもキャストがなかなか。特に佐藤浩市演じる響野はよかった。
 原作は既に続編が出版されている。もし映画でも続編が作られればきっと見に行くことになるだろう。興行的にはイマイチだったようなので望み薄だとは思うが。

 

『ナルニア国物語 第1章 ライオンと魔女』(2006年2月27日 /3月9日補足)
 2月25日(土)、先行上映にて鑑賞。
 前評判どおり、手堅い作りの作品。佳作であると感じた。
 原作はずっと以前に一度読んだだけで鮮明に記憶に残っているとはいえない状態だったが、映画を見ている最中、「ああ、こんな場面あったような気がするぞ」と思い出すことがしばしば。
 ほぼ、原作に忠実な映像化だったのだと思う。
 激しい戦闘が描かれていても過度の残虐シーンはなく、誰でも安心して観られる。
 一方で、予告映像などから海外の大作映画独特のこけおどし(私は結構好きだ…)を期待していた人は肩透かしを喰わされた気分になるかもしれない。
 数年前からファンタジーものの大作映画が続々と公開されているため、時おりどこかで見たようなシーンが展開されることがあるのもやむをえないところか。
 いずれにしても、原作とともに迷走を続ける某魔法学校映画よりははるかに見応えがあった。
 北米での興行収入は、爆発的ではないものの十分な数字をたたき出している。
 第2作の制作も決定――どころか、既に第2作は撮影が完了、第3作の制作まで決定しているようで、まずはめでたい。
 この際、全作の映画化が実現されるに越したことはないもんね。

 ところで、本作品の前にはスタジオ・ジブリの新作アニメ『ゲド戦記』の予告編が上映された。
 私としてはナルニアシリーズよりもこちらの原作のほうに思い入れが強いので、ついつい見入ってしまった。
 で、分かったこと。
 どうやらこの作品、制作発表の際に紹介された内容から予想していた原作の第3部にあたる「さいはての島へ」を中心としたストーリーではなく、全シリーズのエッセンスを取り込んだものになっているようなのだ。
 第1部「影との戦い」におけるゲドの立場をアレンに担わせていると思しきナレーションが入っていたばかりか、テナーとテハヌーも登場していた。
 さすがに第2部「こわれた腕環」の内容を盛り込むことはできないだろうけれど、テハヌーが登場する――それも外見的にはミドルティーンぐらいに設定されている様子――からには、第4部「帰還」はおろか、ひょっとしたら第5部「アースシーの風」まで網羅してしまうつもりなのではないかと思わされる予告映像だったのである。
 2時間かそこらの上映時間でそんなに欲張っていいものかしらと不安になる。
 しかし、観てみたいという強い気持ちを呼び起こさせるには十分な数分間であった。
 ここまではお見事というしかない。
 続報が楽しみである。