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熱気球フリーフライトの巻

ユースの熱気球,”マッキンリー”号
ユースの熱気球,”マッキンリー”号
以下,特に注記のない限り,写真は筆者撮影です。

XCスキーを楽しむために清里入りした前回の冬,ユースではいつの間にか熱気球のフリーフライトなんてものを始めていました。その時は気球に対する思い入れも特になく,天候に恵まれなかった(3泊4日の滞在中,飛べたのは最終日だけだった模様)こともあって,クロカンだけをやって帰ってきました。が,夏の係留フライト(ユース前で,ロープに繋いで気球を上げる)を見たり,スタッフの気球に対する情熱(?)を見ていると,しだいに自分も乗ってみたい気分に・・・というわけで,冬のフリーフライトを体験してきました。(取材:1999年2月20日)


〜プロローグ〜

2月19日,いつもの連れの石原氏を名古屋駅で出迎えた後,空港バスで名古屋空港へ。午前中の便で(っていうか,冬はこれしかない)名古屋空港を飛び立ち,いつものように女満別空港へ到着。網走駅前まで路線バスで移動した後,ダシの匂いに誘われて駅の立ち食いソバを食べることに。が,屋外にあるソバ屋にいると,風もないのに異様に空気が冷たく,ソバをすするのにもノドが痛くなってむせるほど。ソバ屋のおばちゃんの話によると,ここしばらくずっと暖かかったが,昨日からこの冬一番の冷え込みになったのではないかとのこと。うーん,北海道の冬をナメてはいけないな・・・

網走から清里町へはJR(釧網線)で移動。途中,斜里までの区間でオホーツク海沿いを走るのだが,どこまでが海でどこまでが空かわからない程の流氷が押し寄せており,車内の観光客から歓声ともため息ともつかない声が漏れる。僕もジッと窓の外の景色に見入っていた(が,隣の石原は寝ていた)。日も完全に落ちた午後5時半頃,清里町駅へ到着。陽子さんのお出迎えをいただき,いよいよ2度目の清里の冬・・・!


熱気球フリーフライト

翌日。もうこれ以上は望めない,という程の快晴。ペアレント石田氏はじめ,ヘルパー岩本氏・”はるちゃん”氏,ホステラー達の総勢10名程でユースを出発。2台の車に分乗し,ワゴンの方は”はるちゃん”が運転しホステラーが乗車,石田・岩本両氏の乗るもう1台のトラックに気球を積んでの移動となった。

まずは扇風機で風を送る

出発地点である小清水ランチサイトに到着。トラックから機体を降ろし,気球を立ち上げる作業に入る。

丸めて小さく折りたたんであった球皮(気球上部の風船状の部分)を地べたに広げ,ゴンドラ部分とをハーネスでがっちりと接続。次に気球をふくらます作業に入るのだが,最初はバーナーは使わず,扇風機で風を送ってある程度までふくらませるとのこと。風を送りやすいように,球皮の下のフチの部分を左右から引っ張って広げるために,参加のホステラーから手近にいた二人が要員として立った。

気球をふくらませるために,バーナーをもっと早くから使うのかと思っていた。が,意外や意外,ほぼ完全な気球の形になるまで扇風機の風だけでふくらませてしまった。まだ火を入れていないので,横倒しになったままではあるが,見た目は立派な気球の形である。

しかしこの間,結構な時間がかかるもので,入り口を広げている二人以外,やることがない人たちは気球の回りをウロウロ回ったり,写真を撮ったり・・・(そりゃ僕か)

反対から見るとこんな感じ
いよいよバーナーで火を入れる

さて,ある程度,気球の形になったところで扇風機を止め,いよいよバーナーを使って火を入れる。ゴンドラ内に設置されたガスボンベを燃料にして,石田Pの操作によりバーナーがゴーッと音を立てて炎を吐き出した。炎の大きさはハンパではなく,さっきからずっと球皮を持っている二人にも届かんという勢いで,結構びびってたかも・・・

バーナーで何度か火を入れると,さっきまで横たわっていた球皮がだんだんと持ち上がってきた。最後は石田Pがバーナーを小出しにして微調整をして,完全に垂直に立ち上がったところで準備完了!

今回は参加したホステラーの人数が多かったので,2回に分けて飛ぶことになっている。僕は1回目の組に入ったので,「急いで,急いで!」という声に急かされて(早くしないと浮き上がってしまう)あわててゴンドラの中へ。

ゴンドラは見た目以上にかなり狭く,しかも全員が防寒対策で着ぐるみ状態で,おまけに中にはガスボンベが何本も入っているものだから,5人乗ったらもうギチギチ。石田Pが「途中で中の場所,替わってもいいからね」と言うが,これじゃ身動き取れないと思うんですけど〜(^^;

搭乗記念写真(写真提供:石原氏)
球皮内に炎を吹き出すバーナー

全員が無事に乗ったところで,いよいよ空へ舞い上がる。

パイロット石田氏の操作によってバーナーが再び大きな炎を吐き出すのを見上げていると,「あれっ,いつの間に?」とぜんぜん気付かないうちに地上を離れていた。空に飛び立つときはもっと感動的かと思ったが,あまりに呆気なくて拍子抜けしてしまうほど。その間にもグングンと地上を離れていくが,飛行機なんかと違って体にG(重力)を感じないので,飛んでいるという感覚がない。もし「実はこれ,クレーンで吊り上げてるんだよ〜」と言われても納得してしまっただろう(しないか)。

高度がそこそこ出てきたあたりで下を見ると,地表の雪原に我々の乗る気球の影が見えた。上空から自分達の影を見るというのは何となくヘンな感じ。特に雪のおかげで真っ白なスクリーンになっていて,ゴンドラに乗っているとよくわからない気球全体の形がよくわかる。

だんだん離れていく影を見ていると,幅太の「」(エクスクラメーションマーク)に見えてきてしまった。地表に浮かぶびっくりマーク・・・うーん,なんだか巨大影絵みたいだ。

雪原の中のマーク
斜里岳を正面に見て

バーナーの音がしなくなると,一気に静寂の世界が訪れた。上空はわずかながら風が吹いているのだが,その風といっしょの方向に流れて行っているので風をほとんど感じない。気温自体はかなり低いはずなのだが,風を感じないのと日差しが強いのとであたたかいほど。かなり高いところを飛んでいるのに,ゴンドラの中で足をついているから安心なこともあって(ゴンドラがなくて,足が空中にブラブラ出てたら怖いだろう),とてものんびりした気分になった。ああ,なんて平和なんだろう・・・

フライトの最高高度に達した(3200フィート≒約976m)。

正面には雄大な斜里岳がすそ野まで全部を見渡すことができ,振り返ればオホーツク海にびっしりと押し寄せた流氷。海岸沿いに奥に目をやれば,雪に煙る知床連山までが見える360度の大パノラマ。いやすごいすごい。

場合によっては斜里岳の高さ(1545m)まで上昇することもあるとのことで,これで登山したら楽だろうな〜(それは登山とは言わない?)

左にオホーツクの流氷,奥に知床連山
地上で待機するチェイスカー

上空の風というのは高さによっていくつも層のようになっていて,それぞれ向きが異なっているらしい。風に流されることでしか動けない気球が目的の方向に飛ぶためには,自分の行きたい向きの風を見つけてそれに乗っていくわけである。

その風の変わり目の境に来たのか,急に風を感じるようになってきた。上の球皮が受けている風の向きと,下のゴンドラが受けている風の向きが違うためで,やはり上空の風は地上以上に冷たい。

地上の風の向きなどを下で待機するヘルパー岩本氏と無線で連絡。下りる体制に入る。

上空では地表近くの風向きがわからないので,無事に下ろすために地上とのコンビネーションが必要になる。また,フライトが終われば気球を回収する必要もあるので,車で追いかけ続ける必要がある(チェイス,と呼ぶらしい)。我々が無事に飛んでいられるのは,こうした地上のサポートがあるからなのだ。

連絡を密に取りながら着陸場所を探し,しだいに高度を下げながら着陸した。ずっと下で追いかけまわしていた後発隊のメンバーと入れ替わり,今度は下から眺めることになった。うーん,上からも下からも気球が見れるなんて,ちょっとトクした気分?

斜里岳をバックに,降下場所を探す
球皮をたたんで回収完了!

後発隊がフライトを楽しんでいる間,下から写真を撮ったりしながら見ていたが,そろそろ下りてくる頃なのになかなか下りてこない。どうしたのかな?と見ていると,どうやら適当な降下場所になかなか下りられない模様。降下と上昇を繰り返しながら,先発隊のフライト時間を大幅に超えて無事に着陸した。うーん,確かに気球は不便な乗り物だ(^^;

あれほど大きかった球皮も,上部から空気を抜いてしまえばあっという間にぺしゃんこに。それをグルグルと畳んでいくと,ゴンドラの中に入ってしまうほどコンパクトになってしまった。車に積み込み,無事に終了!


〜エピローグ〜

空を飛んでみたい,というのは前からの夢でもあったが,気球で空を飛ぶというのはイメージしているのとはちょっと違った。飛んでいるというよりも,浮かんでいるという感じ。風もなく,音もない世界で,白く輝く大地を見下ろしていると,神様というのはこういう気分なのかな・・・と思ってみたり。イーハトーヴの取り揃えた激しいアクティビティの中では異色の存在かもしれない(笑)。

風が出ている時にはフライト自体が中止になってしまうので,乗れるかどうかは運任せ(日頃の行い次第?)ではあるが,連泊して待ち続けてでも乗ってみる価値はあると思う。逆に,気球に乗る気がなくてイーハトーヴに来た人でも,翌日がフライト可能なのであれば,それは運命だと思って乗って行ってください。お時間はそれほど取らせませんから。


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