プロポーション
ヴァイオリンの各部を測量する為にBegatellaによって初めて用いられた数学的な計測法は現在多くの製作者(特にバスの表板に関して)に用いられている。彼の方法によると、表板は縦に72の均等な部分にわけられ、その1つを1パートと名付ける。この単位を用いて湾曲の具合、胴の幅、板の厚さ、F孔の位置等が表され又決定されるのである。例えばバスの駒はF孔の内側の切れ目の横に又表板の上端部から40パーツの所に置かれるべきなのである。表板、裏板用の板は削られる前に4パーツの厚さでなければならないのである。
同様な方法を用いてOttoは以下の様に説明している。まず胴の上端から40パーツの所に中心がある二つの円を描く。まず初めの円はF孔のちょうど真ん中にあり、直径4パーツ、厚さ2/3パーツであり、もう一つの円は8と1/2パーツの直径、1/2パーツの厚みを持つ。この後者の外側にある大きな円から表板の厚さは徐々に減少してゆき、エッジの内側に於いてそれは1/3パーツとなる。
Don Blatler(アメリカのバス製作者)も前記と類似した方法を用いバスを製作している。彼のバスではF孔の中心の切れ目は胴の上端から42パーツの所に位置し、大きい方の円は幅が9パーツである。(楕円を用いる。)この中心の楕円の所では表板の厚みが17/64インチであり、エッジに近づくにつれこの値は15.5/64〜13/64と減少し、エッジの内側においては12/64インチとなる。da SaloのバスはJalovecによってミリ単位で調査されている。この楽器の場合、内側の小さな円は楕円形で、そこに於いての表板の厚さは8.5ミリ。これより外側に向かって厚さは減少し7ミリ、5.5ミリ、4ミリという値をとる。
(上の写真はハーラー氏所有のイタリアンです。)
バスバー
魂柱や駒がただ単に表板に接するだけでそれに抵抗するのに対し、バスバーはその下面に糊づけされているという点を見るだけでこのバスバーが極めて重要な部品であると容易に察せられよう。バスバーの本来の役割は確かに表板を補強する事にある。かつてはバスバーも表板と同じ一片の木より削り取られて出来ていた。ストラディバリはキズのついた表板を再び使用するために、今日のような別の木材より作った、中で糊づけするバスバーをこの表板に取り付けたのである。すると以前よりも遙かに良い音を出すようになったという。ストラディバリのこの経験以来、一片の木より表板とバスバーを一緒に削りとる方法から、今日のような別個のバスバーを新たに内側に糊付けする方法に変わったのである。Vidalは、バスバーは単に表板を補強するのみでなく、駒から得る振動を楽器全体に行き渡らせる働きを持つ、と考えた。(Giltayの調査によると、表板の振動は駒の左足付近、即ちバスバーの所が最も強く、魂柱付近が最も弱いという)。
バスバーはざらつきの無い松、あるいはスプルースより作られる。Fetisは「弓で弾くときに木の共鳴は最も大きくなるのであるが、この共鳴はバスバーの構造の決定要因となる」と述べている。
ヴァイオリンやチェロの物と同様にバスのバスバーは表板の弓型の湾曲にきちっとあてはまっておらず、又その両端では3−16インチの厚みを持つ。これによって表板の張力は増し、又その振動も増すのである。Ottoによると、バスバーは36パーツの長さ、幅は1と1/5パーツで、厚さは駒の下にあるその中心部で2パーツ、この厚みは両端に行くに従い減少する。バスバーの重さや厚さは表板やバー自体の木の密度によって異なった値をとる。
ScherlやRothによると、3/4サイズのバスのバスバーは86pの長さがある。駒の左足の直下をとおり、バーの上端においては表板の真ん中の継ぎ目に近づくようになっている。即ちバーと表板の継ぎ目とは平行になっていない。
Heron Allenはバスバーに関して次のように述べている。
「バスバーはF孔をカットすることにより生ずる音質の相違を完全に償うと同時に、我々はバーの寸法を変えることによって音の高低を扱う事ができるのである。つまりバーが強ければ強い程音は高くなり、バーの寸法が減少すればするほど音は低くなるのである。
F孔
F孔は通常考えられているよりも重要な働きをする物である。即ち単に音を放つのみでなくHeron Allen が語るが如く、振動に関して表板全体に影響を及ぼし、又ひいては楽器全体の振動の鍵を握る物なのである。製作者により様々な形の孔が作られているのだが、とにかくF型が弓を用いて音を出す楽器には最も適した型であるとされている。Giltayはこの件に関し次の様に述べている。
「借りに、F型ではなく他の形の音孔が用いられた場合、表板の様々な部分の構造も、弦の振動との関連性やその他の問題によって変化するであろう。」