da Salo ,Amati の弦楽器
1580年代初等の da Salo のヴァイオリン、ヴィオラ、1576年製作の Andrea Amati の ヴァイオリン(年代は Jalovecに依った。但し、Heron Allen は1566年作としている。)が現存する。これらの楽器は粗末なつくりであるが近代的な真のヴァイオリンであり、 da Salo の3台のバスも今日の弓弦楽器の中で最も初期にできた物なのである。da Saloのバスは、viol (gamba)の特徴を基礎とし、それに viola da braccio の要素を加えて作られている。現在のバスも、 f 孔、渦巻のある糸巻箱、アーチドバック(ラウンドバック)、の3点を採用した gamba の1つと言えよう。従って viola da braccio のグループの中で最も gamba の特徴を示すのは当然で、それは gamba族の最も大きな楽器 violone からの模倣によるものなのである。
 Kathleen Schlesinger も同様な意見であり次のように述べる。
「バスは、ヴァイオリン、チェロよりも後の物かも知れないし、又、弦の数が相違し f 孔を保った、viol の分枝かもしれない。従って、最も理にかなう仮説は、今日のバスは、ヴァイオリンの出現により、そのグループに入るまでに発展した bass viol da gamba なのだというものである。」
 Panum は「violone あるいは、 contrabass violone と元はよばれたcontrabass viol はそれが最も viola da gamba に近い物で、もしヴァイオリン族でないなら gross−bass viola da gamba と考えざるを得ない、という条件付きで初めてヴァイオリン族に加えられた楽器である。」と述べている。
 かくして Praetorius の Theatrum Instrumentorumに、gross viol da gamba と名付けられ紹介された楽器は、5弦、4度調弦の gross contrabass geig へと変化した。この楽器は、前述したように、フレットとサイズの2点を除けば、現在のバスと本質的に等しいものなのである。
マリーン・トランペット
 バスの歴史について語る時、一言付さねばならない物で、 Marine trumpet (tromba marina, trumnbscheit)という風変わりな古楽器がある。その大きさ全長7フィート、操作hが立って弾くというその持ち方などで、バスに直接つながる祖先とも考えられる。12世紀の彫刻にもそれが初めて見られるのであるが、胴は長い三角錐状で糸巻箱に向かってだんだん細くなっており、ほぼ胴全体の長さに渡って一本の弦が張られている。主にハーモニクスが用いられ、左手は弦に軽く触れるだけであった。駒は片方の足だけが表板に固定されており、もう一方は自由に振動してガタガタ音がする。Sachs は「この駒から発する太鼓のような音の為にドイツ語の trumbscheit (木の太鼓)という名が付けられた。この楽器の鋭い金属のようなハーモニクスの音はトランペットを思い起こさせる。又、この楽器は海上での信号として用いられたとされているが、どんな使い方をしたかは不明である。」と述べている。
 Eagle は「ポーランド、特にクラカウ周辺で、一種のバスとして用いられた。」としている。ドイツでは、教会の修道女によって奏された為に Nun’s Fiddle という名もある。又、 Francois Fetisは、「Marine trumpet と呼ばれる楽器が、しばしば rebec のカルテットのバスパートに用いられた。」と述べる。フランスではこの楽器にヴァイオリン型のネックと渦巻、共鳴弦が取り付けられ、胴にも改良が加えられた。この改良型 marine trumpetは 1780年頃、 Contrabass viol に替えられるまで、フランスのオーケストラに於いて活躍していたのである。
参考文献
1.Hyacinth Abele, The Violin(London:William Reeves,Ltd.,1907)
2.Nicolas Besseraboff,Ancient European Musical Instruments(Cambridge,Mass;The Harvard University Press,1941)
3.Isaia Bille, Nuova Methodo per Contrabaso, Part 1, edited by I.Pizetti(Milan: G.Ricordi and Company.1922)
4.Adam Carse, The Orchestra from Beethoven to Berlioz(Cambridge,england:W.Hegger and Sons, Ltd,1948)
5.Adam Carse,The Orchestra in the 18th Century(New York;Broade Brothers,1940)
6.F.A.Echlin”Divbersiform Double Bass Bow and Technique” The Strad,49(Dexember,1938)
7.F.A.Echlin”The Multiform Double Bass”,The Strad,49(November,1938)