パフリング(Purfling)
裏板や表板の周囲にあるパフリングは装飾とエッジの木材の繊維質をくっつけ合わせるという二つの役目を果たしている。時々。裏板に用いられている木が堅い為に省略されパフリングの無い物もある。このような場合は普通2〜3本の線が飾りの為に描かれる。この偽造パフリングは、ドイツやサクソン系の古いフラットバックのバスに良く見受けられる。ベニヤ板製伸ばすも、ただ線が描かれるのみでパフリングはない。
(上の写真は、当家所有のWiennerlischeです。200年位前の楽器で、イギリスのオークションで入手しました。とても弾きやすく、いかにもウィナリッシュって音がします。)
表板
他の弦楽器同様、表板は楽器の最も重要な部分とされている。Abeleは「最も重要であり、かつ最も困難な部分が表板であり、あらゆるヴァイオリンは全て表板の正確な製造という事に最も重点を於いている。」と述べる。製作者がその手腕を最も発揮しうるのは表板の製作に於いてであろう。音を作り出すという点における表板の重要性についてGiltyは以下のように述べる。
「良い結果を得る為には表板が、弦が放つであろうあらゆる振動を取り上げ、そしてそれを皆等しく同じように再生産する事、又ヴァイオリンが出す1つ1つの音全てに反応を示すようでなければならない。」
又彼は「駒を用いる結果、表板は弦が起こしたどんな音にも同時に振動する。仮にそうでなかった場合、即ち表板が振動に対して何の反応も示さなかった時には音は非常に弱く、それは使い物にならぬ楽器である。」とも述べている。
表板(その2)
楽器全体の中でも、振動を扱うという非常に重要な機能を表板は持っている。従って表板が作られる木の質という事が必然的に問題となってくる。この点に関してOttoが次のように述べる。
「もみやウェブスター松による板が他のどの木よりも表板に適している。それはこの木の低い密度と弾力性の為である。曲げようとする力に対するこの木の抵抗力は単に他の木材よりも大きいだけでなく、数多くの金属体よりも大きいのである。」
彼は松ともみをあげたが、このうち、松は殆どのいわゆる良い楽器に用いられている。Heron Allenはスイスやチロルの白い松を指定している。(もみは松の一種であるが、著名なマイスター等の用いるチロリーゼパインに比べれば、遙かに劣る材である。)近年ヨーロッパ産の年の経た松は極めて少なくなっており、現代の製作者達は土着のスプルース等を用いている。
バスの表板は常に2片よりなり(一枚板のものも極まれにあるが)、その継ぎ目はF孔の間を縦に真っ直ぐにとおっている。表板用の木は木の外側から中心部近くにかけてwedge cutによってとられたものを用いる。切り取られた後、このウェッジは真ん中が一番高くなるようにウェッジの厚い方同志が合わせられる。この真ん中の高い所が最終的には表板のアーチの頂上部となるのである。
表板の湾曲の様子、厚さの寸法等については、個々の楽器からの測量や観察による他はない。この点については、バスの外形をいくつかの部分についてその厚みを詳しく調べたJalobecの表を参照されたい。