フレンチ・ボウをジャーマンスタイルに
日本ではジャーマン・ボウを用いるプレイヤーが多くなっています。
日本は明治維新以来、法律・行政・医学を初め、ドイツに留学し当地での
研究成果をもとに近代日本の礎を構築してきました。
これは、音楽の面でも同様で、古くは作曲の滝廉太郎のように、日本のコ
ントラバスの演奏家の草分けであった教育者達も、ドイツやチェコなどに
留学して彼らの奏法を習得、これを音楽大学で教えたことによるものと言
えます。
従って弓については、必然的にフロッシュの大きな、ジャーマンスタイル
の弓をもちいるのですが、近年では、フレンチ・ボウにジャーマンスタイ
ルのフロッシュを付け、これを用いるプレイヤーが増えています。
なぜフレンチなの?
これは、一般にいわゆる銘弓といわれるオールドの木質のよい弓がフレン
チ・ボウには残されているからだと思います。
値段も高いのですが、材質の面から、また竿の太さからも、古いものでも
ジャーマン・ボウにありがちな「腰が抜ける」といった状態になっていな
い素晴らしいものがフレンチには残されているのです。
コントラバスは、低い音をだすために、太い弦を用いこれを振動させ演奏
するには、かなり強い圧力で弓を弦の方向に押しつけることが必要です。
従って、竿が細いジャーマンスタイルの弓ですと、かなりよい材料(ペル
ナンブーコと呼ばれる南米産の木を用います)をつかっても、弓の反りが
使っていく内にだんだんとなくなってしまう状態になってしまいます。
反りがないと、弓の弾力性がなくなり、張った毛の弦を捉える能力が落ち
てきて、演奏しにくくなり、音色もよくないものになっていしまいます。
楽器屋さんで、修理して反りを入れ直してもらっても、悪い材質のもので
すと、直ぐにまた反りがなくなってしまうのです。
これを俗に「腰が抜ける」といっています。
フレンチ・ボウはオールドでも「腰が抜け」ていないものが多いので良い
ものが使えるのです。
また、竿の長さが短いのがネックですが、フレンチはしっかりした材質で
できていること、シュピッツも大きく、弾いていて軽薄な子音が少ないと
いう傾向が多いように思います。
どんなものがあるの?
フレッチナーのようなジャーマンのメーカーでもフレンチ・ボウは作ってい
ますが、やはり名前の通りフランスの弓が多くてよいようです。。
「ペカット」「サルトリ」のような、ヴァイオリンでも著名なものも残されていますが
他にも「ラ・ピエール」「トマサン」「ジレ」「モリツォー」等の著名な弓が
使われているようです。
値段は、コントラバス用としては非常に高い数百万円のものもあります。
イタリア製の弓は、品質もよく、値段も手頃なものが多いようです。