ドイツ派のMethode
Hauseのエチュードより新しいSturmやWarneckeのメソードもフィンガリングに関してはHauseの物と殆ど同様であり、ただポジション名だけが異なる。Sturmもポジションは]までで、この]ポジションはF,Fis,G(G線)を@ACととる。これより高いFis,G,Gisは@ABでとり親指は指板横におかれる。サムポジションはG−4より高い音をとる場合に使われる。Warneckeのメソードは\ポジションまでで、その第\ポジションはE,F,Fis,G(G線)が@ABCでもたらされる。この両者のメソードで特筆すべきはG−4がCでとられる事であり、これはシマンドルには見られない物である。
HrabeやLaskaのメソードもシマンドルと同様なフィンガリング、ポジション名を有し、やはりHarseのメソードを基礎とした物である。フレンチ派のCharles Labroの物も又、@ACというフィンガリングが基礎でG−4はBを用いる。しかし彼の物はドイツ派と若干ことなり、G−4,Gis,A,Bをとるポジションにおいて、AとBが共にBでとられ、またハーフポジションに於いてもGis(3),AがACでとられる。(ドイツ式では@A)
イタリア・スペインのMethode
イタリアやスペインでは、ドイツやフランス式の@ACを用いるフィンガリングではなく、@BCという物が使われた。Italo CaimniやIsaia Billeのメソードでは常に@BCというフィンガリングが用いられ、そのポジション名も特異である。第7ポジションの上は7th extendedや第8ポジションがあり、@BCやサムポジションでとられる。
ドイツにおいても変わったフィンガリングを唱えたもいた。
Karl Frankeがそうで、彼は全てのポジションにおいて4本の指を用いる事を提唱した。即ち第1ポジションはGis(3),A,Ais,H(G線)が@ABCによってとられるのである。
ロシアのコントラバシストZdahnoffにより開発されたフィンガリングはMax KunzeやPhilip Skalarにも用いられた物で、それはドイツ式とFranke式との混じったフィンガリングである。低いポジションではドイツ式の@ACのフィンガリングが、セカンドポジションより上ではfranke式の@ABCが用いられる。
Warneckeのバス・バリトンのためのSkizze neuen Methodeでは第Vポジション(Ais,H,C,Cis)以上に@ABCが用いられる。
イギリスでは長い間、半音をとるにも一音をとるのにも@Cだけを使うフィンガリングが行われていた。1890年に出版されたA.C.Whiteのメソードにおいても、ローポジションでは殆ど@Cのフィンガリングが使われている。Echlinは「@Cだけのフィンガリングは半音をとる場合に面倒で、しばしばBがそれに使われたが、いずれにしても極めて不完全なフィンガリングである。」としている。
BottesiniのMethode
ボッテジーニのMethode de Contrabasseによると彼は半音間にも一音間にも@Cのフィンガリングを用い、イギリス式の様に時々Bを用いたようである。Warneckeは「ボッテジーニのメソードは決して満足のゆくものでなく、学生にこれを教授する事は殆ど不可能である。」と述べている。このフィンガリングは多くのバスの権威達を困惑させたのであるが、Echlinは結局次のように述べるのである。
「彼の大いなる天賦の才はそのフィンガリング、メソード等、遙かに凌駕してしまう物である。ボッテジーニの技巧の秘密はそのたぐい無きボーイングの技術によってもたらされる物であり、彼の左手はその驚異的なボーイングにより霊感を授けられ指板上を動き回ったのであろう。」