裏板
コントラバスの裏板はBrecia派の頃からフラットバックとアーチドバック(日本では一般にラウンドバックと呼ばれることの方が多い)の両タイプで製作されてきた。イギリスのコントラバス奏者Echlinは次の様に述べている。
「アーチドバックのコントラバスをどうしても求める というほど、この型のコントラバスの音には特性は無い。実際、私はフラットバックのコントラバスの方が良く鳴るということを経験を通じて知っているし、又他の多くのプロのコントラバス奏者も私と同じ意見を持っている。」
Echlinのこの発言は、当時のコントラバスの世界に実に多くの波紋をもたらした。
・楽器の他の部分と関連して裏板の機能とは何なのであろうか?
・コントラバスの二つの形態(フラットとラウンド)の構造の相違は?
・両者の長所と短所は?両者の優劣は?
製作に関する事以外の事柄についての意見、特に音の出方や音質についてはかなり多様な意見が述べられてきており、実際に意見の一致が見られているのは、空気の容量の重要性についてだけであった。
裏板の役割
・Giltayの意見
「裏板の唯一の効用とは、ヴァイオリンの中に含まれる空気の量を限定するのみで、音の形成には何の影響も持たない。」
・Ottoの意見
「音の形成に関して、裏板は表板よりも遙かに大きな影響力を持っている。裏板は楽器の様々な部品の中でも非常に重要な部分であり、それは胴部の振動による音を受け取り共鳴させるという働きをするのである。」
・Abeleの意見
「裏板の目的とは、ヴァイオリンの腹部で起こる振動に対しある種の抵抗を与えるということである。この抵抗とは振動がある限界を超えることを防ぐということである。」
また、Abeleは、裏板はある程度まで腹部を振動させるのではないか?とも述べている。
Giltayは、「音質は裏板の振動によって微量ではあるが変化するが、あくまでも裏板はこの件に関しては重要な役割は果たしていない。」とし、裏板の主なる働きを、空気の量を限定する事だと考えたのである。
裏板も重要?
数多くのヴァイオリン製造者の中では、唯一Bagatellaのみが裏板の大きな重要性を信じた。
彼は表板をただの音形成の一要因としかみなさなかった。この説は他の人々からの同意を得られず、又、バスの裏板に多くのヴァリエーションが存在するという事も、この説に不利にはたらいた。古いフラットバックのバスの中には、裏板が新しい素材に(ベニヤ板も用いられている)何ら大きな変化を与えずに取り替えられている物がある。又、もとはアーチドバックのバスが音質に対し悪影響を与えることなく、フラットバックに改造されている物もある。どの程度、音質に影響があったかを述べる事は難しいが、とにかくこれらの楽器は、充分に満足のゆく音色と音量を備えているのである。
 フラットバックにしろアーチドバックにしろ、両者とも2あるいはそれ以上の部材により成り立っている。
slab cutのものでも、wedge cutのものでも、木材はヒールからテールブロックまで中心をとおるラインで結合される。wingやその他の部材が下胴のかなりの部分にわたり付けられることも幾人かのマイスターが行っている。フラットバックの場合暑さは7ミリほどで、大きな楽器である場合幾分集めに、小型のものや何回も修理されているようなバスの裏板は薄くできている。