コントラバス?
今オーケストラで使われている一番大きな弦楽器。
ジャズや、流行のピアソラ等のタンゴ、フォークでも使われています。
弦長が長く、弦も太いので、すごく低い音がでますが、実はとっても
高い音もでます。(フラジオレット、ハーモニクス=倍音を使うと。理論的には、低い
音が出せる分だけ、弦楽器の中で一番音域が広いのです。)
ヴァイオリンからチェロまでの弦楽器と違って、ヴィオールという昔の弦楽器
の特徴をよく残しています。(肩がなで肩だったり、裏板が平らだったり)
形にはいろいろなヴァリエーションがあり、イタリアの楽器はヴァイオリンに
似た形がおおく、ドイツはヴィオールに似たものが多いし、こぶがついている物もある
(クロッツやプレスコット)、洋なしのような形をしたものもある(ストリ
オーニのように)、ウィーン・ハンガリー等の楽器は糸巻きに大きなかんざし
がついていたり、表板、裏板が横板と接地するところで出っ張っていないで
平らなものがおおい など 枚挙にいとまがありません。


調弦・弦の数は?
調弦も、他の弦楽器が5度なのに、コントラバスだけは4度で、ギターに似て
います。(音程のつぼの幅が広いので、5度調弦だと、スケールをひく時すら
隣りの弦に移動してもポジションチェンジが必要で演奏しにくいのです。)
芸大の故江口先生は、晩年、5度調弦を弟子に進めていましたが一般的
ではありません。
ただ、モーツァルトやハイドンの頃は3度や5度を取り混ぜて調弦していたよ
うで、チューニングを換えると、難曲であるモーツアルトのバスアリア(KV
612)やシュペルガーのソナタもかなり楽に弾けるようになります。

他の弦楽器は皆な弦が4本ですが、コントラバスには5弦の楽器も
あります。
現在使われている5弦のコントラバスは、その昔(19世紀)ライプツィヒ・
ゲヴァントハウス・オーケストラのカール・オットーという人が最初に作り
ました。
この頃の有名な指揮者のハンス・フォン・ビューローは、自分の指揮する
ベートーヴェン・チクルスでこの5弦のコントラバスを用い、さらに数多くの
オーケストラにこれを紹介して広まっていきました。
 また、アメリカ・イギリスなどでは、Cアタッチメント(Cマシーン、Cエクステ
ンション)と呼ばれる、ドイツのマックス・ポイケという人が発明した道具をつ
けて、4弦のまま低いCの音まで出せるようにしている楽器を使っています。
 ベルリン・フィルのシェフだった、クラウディオ・アバドは、かつてロンドン・
シンフォニーのシェフになったとき、オーケストラに4弦のコントラバス
しかなかったので、5弦のコントラバスを使うように指示したそうです。
(音の厚みがでるのですね。)
 一番低い音は、5弦のもので、ピアノの一番下の「ド=C」の音になりま
す。これをその下の「シ=H」の音に調弦することもあります。


当家のコントラバス
当家の主なコントラバスは次の通りです。

 1.Antonio Pedrinelli,Crespano, 1850
 2.Enrico Marchetti,  Turin, 1895
 3.?のWienerische,       1800年頃の作
 4.Marino Tarantino, Napoli, 1983
 
1のペドゥリネリと、2のマルケッティは、スカラ座のソロ・コントラバス奏者
エツィオ・ペデルツァーニ氏から譲り受けた物です。

ペドゥリネリは、きれいな表板をしていて(なんと無傷)、高い音だけでなく、
ふつうヴォルフで鳴りにくいA線もズーンという音を出してくれます。
また、やはり鳴りにくいネックの付け根辺りの「レ」から「ファ」(一番線で)辺
りの音もよく鳴ってくれます。
なおかつ、野蛮で粗野な音がしないので、オーケストラにも、室内楽
などにも重宝な楽器です。

マルケッティは、同じモダン・イタリーですが、一番線(高い音)が極めて明
瞭であり、ソロにはもってこいの楽器です。
いつも、ソロチューニングを施し、ソロの演奏会で用いています。
色は、塗り直して黒いのですが、楽器のクォリティとしてはかなりの物で、
そこいらの名前ばかりのイタリアンとはちょっと違うと思っています。
日本に持ってきた際に、いつもお世話になっている、園田信博氏(ドイツのマ
イスター資格を持ち、日本人で、初めてクレモナの国際ヴァイオリン製作者
のコンクールで1位を獲得した日本弦楽器製作者協会の副会長。泉氏のヴ
ァイオリンの弓、尭氏のヴァイオリンも製作していただきました。)に、調整を
お願いしてから現在絶好調です。
ペドゥリネリも、マルケッティも、弦長は106.5cm程です。

3.はイギリスのオークションで入手した物です。
かつてウィーン・フィルの主席奏者だった、ルートヴィヒ・シュトライヒャー氏
が、クリスタ・ルートヴィヒのご主人であるバリトン歌手のワルター・ベリーと
レコーディングした、モーツァルトのコンサート・アリア「この美しい瞳のため
に」のレコードジャケットの表に写っている楽器とほぼ同じ作者のものと思わ
れます。(形、F字孔等そっくり)
レンベックあるいはガイゼンホフではないでしょうか?
音は、イタリアンとは、全然質が異なりますが、典型的なウィーン風の音が
します。
さが国際音楽祭で、ザンクト・ペテルブルク・フィルの主席奏者アレクサンダー
シーラにこの楽器を貸して音楽祭でソロを弾いて貰いました。
彼にもまた、聴衆にも大変に好評でした。

4.は、サンタ・チェチリアのコントラバス奏者から譲り受けた物で、5弦の
楽器です。
タランティーノとしては、私は2台目の楽器です(前の楽器は京響のプレイヤ
ーに譲りました。)。
まだ、新しいのですが、オーケストラでよく使われていたためか、タランティ
ーノにありがちな、線ははっきりしているものの、キンキンとしすぎて、胴全
体がよく共鳴しないといったものでなく、響いてくれますし、低い音域も十分に鳴ります。
表板は板目でなく、きれいな柾目で、裏板もきれいな虎目がはいっており、
ラウンドバックです。

このほかに、子供用のかわいいチェロ位の大きさのバスがあります。
ゲーリー・カーが幼少の頃、小さなコントラバスで練習したことを聞き、日本
のメーカーがそれを再現すべくかつて試験的に作った物です。
泉氏が幼稚園に行く前に、チェロ用の1/8の弓を用いてマーラーの巨人の
ソロを弾かせてみましたが、とても可愛かった。
大きさはチェロ位でも、コントラバスの楽器としての特徴は、完全に備えてい
ます。難点は、交換する弦がないことです。
今は生産されていないようで、見かけることはできません。