クロスブレイス(CROSS BRACE)
フラットな裏板は曲げようとする力に対して殆ど抵抗力がないために、楽器の内側に張られたクロスブレイスにより補強されている。最も大きく幅のあるクロスブレイスは魂柱の下の中胴の下部に備えられる。これは幅が厚みよりずっと大きなものである。
 もう一つ中胴に設けられるクロスブレイスはかなり上の方にあり(角におかれる物も多数ある)。
これは厚みの方が幅よりも大きい。このブレイスは最も短い。最も長いブレイスは、下胴の真ん中を横切る物である。もう1つ、第4のクロスブレイスは上胴の真ん中あたりに備えられる。この第4のブレイスの所で裏板は内側に曲がっている為、補強という点においてこの第4のクロスブレイスは極めて重要である。
クロスブレイスは全てその端において薄くなっており、横板の内側のライニングに接触するまで延びている。又、通常松等の裏板よりも柔らかい木で出来ている。尚、裏板の傷を修理する為に時々短いクロスブレイスが用いられることがあるが、通常このような修理には小さなパッチ(つぎあて程度の小さな木片)の方が好んで用いられる。
(上の写真は、元ORFのコントラバス奏者で、ウィーンのアカデミーでシュトライヒャーのアシスタントとして教鞭をとっていた、ウォルフガンク・ハーラー氏一家と氏所有の楽器たちです。ハーラー氏はkoch-schwanからBottesiniのソロアルバムも出してますね。)
アーチドバック(Arched Back,Round Back)
アーチドバックの裏板の継ぎ目はダイアモンド方をした小さなパッチによって補強されている。(これはフラットバックの裏板のクロスブレイス間にも着けられている。弓形の湾曲の程度は、ヴァイオリンやチェロ等他の弦楽器同様種々存在する。板の厚さは湾曲の程度、木の密度等により異なってくる。即ち大きく湾曲しているものはよりフラットなものよりも薄くできるのである。1つの楽器においてその最も厚い部分は裏板の中心部から円状あるいは楕円状に中胴のエッジあたりまで広がった部分である。この部分の厚みは1/4インチから5/16インチ程で、この最も厚い部分からエッジに近づくにつれてその厚みは次第に減少していき、エッジの内側では1/8インチほどとなる。そしてエッジ自体の厚さ(横板に直接に接している部分)はまた1/4インチにまで増加する。
Heron Allenは裏板の厚さについて次のように述べている。
「どの程度の木を用いるかについて確固たる法則等を見いだすことは非常に難しい。というのは、それに用いる木の質によるからであり、木目がつんでいて素材が堅ければ堅い程木は薄くてよいのである。」
アーチドバック(その2)
前述のように、昔から横板と同様楓材が裏板にも用いられてきた。Abeleは「あまり斑点のない良質の木材が良い音を放つようになる。」としているが、一般に木の中心部近くからとられた材が最も値が高い。梨、プラタナスの一種であるシカモーア、樅の木、ポプラ、ブナ等も良く横板や裏板に用いられるが、これは手に入りやすいことと安価という要素もある。古いドイツのフラットバックのバスの中にこのブナを用いた物が良く見られる。da Salo の Storch Bassの裏板はシカモーアで出来ている。
裏板は通常音の振動に関しては、重要な役割を果たしていない、と考えられているが、Gilty は以下のような興味をひく説を述べている。
「平坦な板の場合、曲がっているものよりも音を振動させやすい。従ってSavartによるとストラデヴァリのヴァイオリンは(彼の楽器はシュタイナーの物より平坦な板を使っている。)シュタイナーのヴァイオリンよりも力強い音を出すのである。」
アーチドバックの場合、膨張や収縮の結果生ずるひび割れ等に強く、又、ヴァイオリンに似た外見は見場が良い。このため、フラットバックの方が安価、かつ容易に製造しうるのであるが、最近では殆どフラットバックのバスが作られなくなって来たのである。