Viola da braccio
 viola da gamba に加え、この頃成立した楽器に Lira と Viola da braccio がある。
 viola da braccio ( arm viol )は Lira da braccio や rebec の持った特徴を多く引き継いだ楽器である。 Lira da braccioからは、アーチ状の裏板と表板、そして表板、裏板のエッジよりも内側に横板が取り付けられている点を、rebec からはフレット無しの指板、渦巻のある糸巻箱を継承している。f孔がc孔にとって代わった時期もはっきりとは判っていない。
 Basle の John Oporinus が描いた1530年の木版画にある6弦のヴァイオリン型の楽器について Heron Allen は tenor に極めて近い物としているが、この楽器にははっきりとf孔が見て取れる。イタリアの画家 Ferrare 作の1535年に描かれた絵には、一連の violetto da braccio senza tasti (小型のフレットの無い arm viol )が見て取れる。これらの楽器は3弦ではあるが、浅い横板、ヴァイオリン型の角、丸い肩、アーチ状の表板と裏板、f孔、渦巻等の特徴を持っており、現在のヴァイオリンと非常によく似ている。
 今日viola da braccio 族の中で生き残っている楽器はヴァイオリンとヴィオラの2つであるが、Geiringer によると元は6種存在し、その中で最大の楽器が前出の gross quint bass である。
Lira da braccio
 Lira da braccio は Panum曰く、バスのように立って演奏する弦楽器をも含む、今日の全ての弦楽器の原型となった楽器である。この Lira のバス は ヴァイオリン型で共鳴弦(ネックの中にあり、擦る事は出来ないが上部の弦の振動により共鳴する)を含む12本の「弦を持ち、Panum が Lirone あるいは Lyra perfetta と読んだ楽器である。( Praetorius の図版では、 Italianisch Lyra de bracio とされている。)
この図を見ると、12本の弦、扁平な糸巻箱が目に付くが、Warnecke は この楽器をItalian gross lyra bastarda と呼び、Kontrabass da gamba の支流の楽器と解釈している。
16世紀まで
 これまで見てきたように、16世紀には viola da braccio からの ヴァイオリン族の発展と、 viola da gamba の標準化が成された。このbraccioやgambaの両種族の中にも、バス、コントラバスのような大きな楽器が存在したが、16世紀の時点においては「今日のバスと様々な類似点を持つ楽器」に止まっており、今日のバスとは別個の楽器と理解すべきであろう。
15世紀から16世紀初頭にかけて音楽の中心が南ヨーロッパに移ると共に、楽器製造の中心もNurunberg, Koengserg, Hamburg 等のドイツの都市から、イタリアに変わっていった。そして弓弦楽器の呼び名もイタリア語になっていった。古いドイツの呼び名Geige、 Fiddelから viola, violetta, violoneへと。