エアー・マス
弦楽器の胴内に含まれる空気の量についてHeron Allenは次のように述べる。
「ストラディヴァリの技術は、彼自身が得た楽器製作における経験や知識によって支えられているもので、彼はその腕で、ヴァイオリンの湾曲、大きさ、横板の深さにより、楽器の中の空気の量を一定にする事が出来た。チェロの内部の空気の量もヴァイオリンと同様に、チェロが放つべき音の深さに対し科学的につりあわなければならないのである。もしチェロをヴァイオリンと同じ形に作ると、その内部に含まれる空気の量が多きため横幅が演奏に不向きになる程大きくなってしまう。そこで彼はチェロの横板の深さを増したのである。」
ヴァイオリンのプロポーションによるとチェロの横板の深さは現在の物の用に4インチではなく3インチとなり、胴も長さ35インチ、幅20インチにもなってしまう。そこでストラディヴァリは前述の様な操作を行い、チェロの横板の深さを4インチに決定したのである。(仮に演奏上の問題を無視するのであれば、3インチの横板の深さを持つチェロは極めて良い音をもたらすであろう。)
チェロの横板の深さがヴァイオリンに比較して異常に深いのと同様に、コントラバスもチェロより横板の深いプロポーションとなっている。4/4サイズのコントラバスの横板の深さは4/4サイズのチェロのそれの2倍はあるのだが、胴長はチェロの4/3倍程でしかないのだ。Heron Allenは「多くの著者達は、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスのプロポーションが全て同じでなければならないとはっきり述べていない。これは嘆かわしいことである。」と述べている。
Savartの実験
Savartはピストンによって空気の量が自由に変わるヴァイオリンによる実験で、容積が大きすぎる時は、低音は弱く内にこもった様な音となり、高音はかん高い音を出すという事実を発見した。
Savartの実験はフラットな形の楽器により行われたが、これに対しGiltay は共鳴する音は、楽器の容積のみではなく、楽器の形自体(アーチの具合等)にもよるものではないかと考えた。
外形、横板の深さに至る湾曲の部分と空気の量との関係は以下に紹介するHerpn Allenの説によくまとめられている。
「上記の寸法(横板の深さは下胴では1.25インチ、上胴で1 5/32インチとなる)によると、最も望ましい空気の量を得られるであろう。特にストラディヴァリやグァルネリ・デル・ジュスの作になる素晴らしい楽器についてそれが言える。外形が大きく湾曲が高い時、両サイドの横板はマジーニの楽器の用に浅くなっている。」
従ってこれらの法則をコントラバスの構造に当てはめて見た場合、フラットバックの楽器の横板はラウンドバックの横板よりも深くなければいけないということになる。多くの楽器を良く見えると、このフラットバックの楽器は深い横板を持たねばならないという原理が当てはまっていることが良く判ると思う。
中胴のエッジの形
中胴の角(コーナー)について、コントラバスには以下の3タイプが存在する。
まず第1に中胴の所で上胴の横板と下胴の横板がほぼ90度につけられているもので、ViolタイプとかGambaタイプと呼ばれる物。
第2に横板の継ぎ目がのみの様にとがったバイオリンタイプ。
第3に、あまり見かけない型であるが、円又は小さなカーブを描いたような形で、中胴と下胴の横板を付けている物。このタイプはPrescott やKlotzのコントラバスに見られる。
バスの横板で最もViol的な要素は、ネックにかけての横いたのスロープと、上胴の裏板の上部が内側に曲がっている為に生ずる横板の深さの減少である。これはフラットバックの弦楽器に一般的な物であり、今日のアーチドバックの弦楽器には殆ど見られないものである。