クワガタはどんな色が好き?
大空にかかる美しい虹。思わず見とれてしまいますが、
太陽光線のうち、人間の目で見える可視光線はプリズムにより
の7色に分けることができます。
そして、赤より波長が長い
赤外線、紫より波長の短い紫外線
がありますが、これは肉眼では見えません。
さて、もし昆虫が虹を見たとしたらどのように映るのでしょうか。
ハチなどは赤を区別できないといわれていますし、夜行性の
甲虫類も赤い光に対しての反応は非常に鈍感なようです。
また、モンシロチョウが羽根に反射する紫外線を見て♂♀を
判別するのは有名な話ですし、灯火採集でクワガタが飛んで
くるのも紫外線が見えるからですよね。
人間と同じように微妙な色調は感じないでしょうが、きっとクワガタ
にも何色か、識別できる色があるはず。
今回は「クワガタが反応する色、しない色」について調べてみようと
思います。
レインボーカラーの洞で実験!
クワガタが識別できる色は、可視光線のなかで何色くらいあるのでしょうか? 
ここではカラー厚紙で七色の洞をつくり、クワガタが入る頻度を調べることで色覚を探ってみることにします。
100円ショップで購入したトレイに洞を並べ、クワガタが滑らないようにコルク板を敷きます。
スタート地点が常に左右のセンターだと距離・角度が不公平になるので、A・Bの2ヵ所からスタートさせることにします。
▲さあて、どこへ入るとしますか? ▲クワガタ目線では、こんな感じだが・・・。
実験方法と予想
実験は直射日光が当たる屋外で行います。Aから2回スタートしたら次はBから2回、というように2回ずつ交互にスタート。
A・B各50回、計100回試してみることにします。
昼光性のハチやチョウと違い、カブトやクワガタは
夜行性のため、ほとんど明確な色覚を持たないの
ではないか、という推測も成り立ちます。
右の画像は、モノトーンにしたもの。あるいは、光の
三原色・
のうちR(赤)を除いて、紫外線を追加
した世界が見えているとも考えられますが、これを
画像で表現するのは困難です。
またこの実験の場合、より「暗い洞」に見える方を選ぶ
ことが予想されますが、各色とその影が作り出す微妙
なコントラストに影響されるかもしれません。

また、スズメバチが黒い色を攻撃するのは天敵の熊
に対する防衛本能からといわれます。こんな習性も
関係するかもしれません。カブトやクワガタはスズメ
バチと樹液の取り合いをします。とすると、ハチの体色
(黄色)は認識されている可能性が高いのでは???
紫外線に誘われる、ということは近い波長である紫は
よく見えているとも考えられますね。

……さて、みなさんはどのように予想されますか?
一番人気の洞の色はなんだと思います?
ヤマカン、第六感等々働かせて、掲示板にどうぞ!
[【虹洞賞】虫屋さんたちの予想 二児の
パパ
マイ
ティ
みつ
まめ
ヤマト かぶ
ちん
1      ドルクスシラズ 採集時は重宝してます!
2 ヨウチュウヘッド 我が子の顔色ぐらいは・・・
3 シマシマブンブン 宿命のライバルの姿?
4 ジュエキシーズン そこらじゅう葉と草ばっか
5 スカイトップガン ヒメとアカは見上げてる空
6 サンセットビューティ お食事時の世界はこの色
7 トウカイチバン 一番敏感に感じてる?
さあ!各色ゲートインからいっせいにスタート!
20回のトライを終わったところで先頭は、赤と橙色! まだまだ勝負はわかりません!
しかし、予想で不人気の緑が0回とは・・・みなさんさすがカンが鋭い! 
▲各色の境界でごっつんこ! 区別のつきにくい色の組み合わせがあるようですね。
▲今回は、いったん青〜紫系に近づいても、赤方向へ動くような行動が目立ちました。
1      ドルクスシラズ ●●●●●● 6回
2 ヨウチュウヘッド ●●● 3回
3 シマシマブンブン ●●●●●● 6回
4 ジュエキシーズン 0回
5 スカイトップガン ●● 2回
6 サンセットビューティ 1回
7 トウカイチバン ●● 2回
追加テスト80回・・・、さて結果はいかに!?
10月27日午後2時、晴れ。気温19℃。前回と同じコクワをケースから取り出します。
最近寒くなってきたがまだ完全な越冬態勢ではありません。今日は動きが活発に見えます。
では、どの色の洞にはいったかを、1回ずつ順番に追ってみることにしましょう。
なお、全身が洞のなかへ完全に入った場合のみカウントしています。
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
▲暗闇から取り出したばかりはけっこうバラつきがあるが、徐々に黄色に入る頻度が増してきた。
31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60
▲自然光にさらされて約1時間経過。明順応?してくると圧倒的に黄色が優位なのか。
しかも体温が上がったからか、一直線に黄色をめざすことが多くなり、実験ははかどった。
このまま続けても黄色を目指すことが明らかになったので、いったん中断し
30分ほどケースに戻して潜らせ、暗順応させてから再開することにした。
61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80
▲やはり先程と結果は同じで、一定時間経つと黄色ばっかり。
総合成績発表!
前回 今回 合計
1着 シマシマブンブン 6回 47回 53回
2着 ヨウチュウヘッド 3回 11回 14回
3着 ドルクスシラズ 6回 7回 13回
4着 ジュエキシーズン 0回 8回 8回
5着 スカイトップガン 2回 4回 6回
6着 サンセットビューティ 1回 2回 3回
6着 トウカイチバン 2回 1回 3回
実験を終えてみて・・・
基本的にクワガタはすんなりと洞に入ることは少なく、
@立ち止まったまま
A洞に入らずうろうろと歩き回る
B洞の上によじ登ろうとする
C洞に頭を少し突っ込んでしばし考え、向きを変える
などの行動が目立った。そのたびにスタート地点に戻してやり直した。

【色に対する反応について】
@日光にあたっている時間が長くなるほど、黄色を選ぶようになった。
 明らかにスタート直後から一直線に黄色をめざして早足で進むことが多く、
 この7色の中では、
距離が離れていても一番識別しやすいと思われる。
 まるで、黄色い花を見つけて飛んでくるチョウのようであった。
 スズメバチの体色などは、大変よく見えているのではないだろうか。
A緑から紫にかけての色は、洞の入り口で覗き込むようなしぐさをするが、
 なかなか入ろうとせず、その後左に向きを変え、黄〜赤方向へ移動する
 傾向が見られた。
B各色の境界線である側壁に頭楯をぶつけることもあり、色の判別はしづらい
 ようだ。
【今後の課題】
@夜行性のクワガタが暗色を選ばず、黄、オレンジを選んだのはなぜか?
 という疑問が残るが、
黄色と黒色の洞で二者択一させる実験をしてみると
 面白いと思う。
A赤色は、本当に見えていないのか? 印象では緑に対する反応も鈍いようで
  あった。暗闇のなかで緑のLEDを照射してみて反応を見てみたい。