ポイントは刻々変化する。
樹液が出たり出なくなったり。新たに捲れが作られていったり、剥が(さ)れたり。
そのたびに一喜一憂する人も多いだろう。
ムシを引き付ける能力がない木に取り付け、ムシを誘引するための罠が「トラップ」である。
ふつう、「トラップ」はストッキングなどに入れたバナナを発酵させ幹に取り付けるか、
黒砂糖などをベースに煮込んで作製した蜜を幹に塗ることが多い。
しかし上記の方法ではいくつかの問題点が残る。
@すぐ乾いたり、雨に流され地面に落ちてしまう。
Aチェックするのは夜に限定される。
B自宅から至近距離に設置しないと不便。
C他の採集者に、獲物を採られてしまうリスクがある。
今回考案したものは、いったんクワガタを誘引したら、そこに滞在してもらう仕掛けである。
ホームスティ・タイプと言ってもよい。
捲れや洞の機能を付加しておき、1週間ごと、しかも昼間にクワガタをチェックすることを
念頭に置いて製作した。
下記に、「滞在型トラップ」の概観を示す。
【構造の解説】
ペットボトルの上部を切り、蓋のついているほうを下に向け差し込む。
ここに誘引物質として、酢を貯めている。
ペットボトルの中程に帽子のつばのような「テラス」を設け、飛来したクワガタの足がかりとする。
テラスに接したボトルの側面3箇所にスリットを作り、ここからクワガタがボトル内に入れるようにする。
ボトルの中には、このスリット部分までマットを敷き詰めている。
スリットの幅は、スズメバチやカナブンが入らず、クワガタが入ることを期待して6〜7ミリほどに。
マットにも酢をたっぷり混ぜ、いわば寿司飯のようなぐじゅぐじゅの状態にし、”樹液にまみれた洞”と擬似的な環境に
仕上げた。(つもり)
当然このマットからも強烈な匂いを発し、スリットから外に放出されている。
また、上部に雨水がたまりあふれると、適当に薄められた「樹液水」がスリットからマット内に流れ込み、
乾燥を自動的に防ぐ仕組みにもなっている。(まさか)
【設置場所】
他の採集者の目につきにくいよう、高所に銅線で固定。
この木は、過去に樹液が豊富に出ていた捲れがあったが、
樹液も自然枯渇し、捲れも崩壊した。
ここではヒラタの実績があり、かつ周辺の発生源は維持されている。
よって、成虫が発生後ココにたどり着き、トラップ内に忍び込む可能性は十分にある! と判断。
上の写真を見て思わず噴き出してしまった方、正解です。
もちろん、ほとんどウケ狙い&遊びであります。
きっと、「もしかしたら大物が入って・・・」というワクワク感が、クワカブライフをより充実させて
くれるからでありましょう。
さて、結果はいかに!
【第1回目の結果】
●設置日 6月27日
●確認日 7月4日 (設置後1週間経過)
上部の「酢だまり」にカナブン2匹、ヨツボシケシキスイ2匹、蛾1羽が溺死していた。
直接飛来し突入したか、幹から足を伸ばし滑落したかは不明。
ところで私は見たことがないのだが、ケシキスイにも飛翔性があるのだろうか?
この状況から、市販の酢(穀物酢)には一定の誘引効果が認められた。
はたして、「酢マット」にも何らかの昆虫が、もぐりこんでいるだろうか。
「酢マット」を袋に掻き出しながら注意深く探ってみたが、
残念なことに生物の影はいっさい認められなかった。
そこで、第2段階として次のような変更をして設置しなおした。
@酢をフィルムケース2本に入れ、ペットボトル内のマットに埋めた。
Aマットは水と撹拌し、上部に少量の酢を染み込ませるにとどめた。
B昆虫ゼリーを2個カップから出し、マット上に置いた。
(写真は次回チェック時に公開予定)
昆虫をペットボトル内に誘引し、一定期間定着してもらうことに力点を
おいてみたのだが、はたしてどうなるであろうか。
【第2回目の結果】
●設置日 7月4日
●確認日 7月9日 (設置後6日間経過)
マットに埋めた酢入りのフィルムケース。
蛾と小さい黒い点のような甲虫がおぼれていたが、これはスリットから入ったものだろう。
マットにはゴキブリが1匹いたが、すぐに脱出してしまった。
肝心のマット中は、またしてもスカ。
マットに置いたゼリー2個分は、跡形もなくなっている。
これは何らかの生物が食したからであろうか? 自然消滅とは思えないが・・・。
まもなく降雨の恐れがあったので、とりあえずトラップを撤収することにした。
さらに策を練り直して出直すつもりだ。