樹液ポイントの定点観測
樹液の出具合を見て、採集者が一喜一憂する季節になった。しかし、樹液が出るメカニズムや法則性などはどうもよくわからない
そこで今回は、下記のような疑問点を解明すべく数ヶ月のスパンで調べてみようと思う。
@樹種(クヌギ・コナラ)によって樹液の出る季節、期間、量などには違いが見られるのか?
A気温がどのくらいあればカブトやクワガタは隠れ家から出て、樹液を吸いに来るのか?
(20℃以上なら出てくることが多いようだが、さらに正確にわかれば無駄足を運ばなくてすむ)

観測地点は、比較的樹液の出る木が集まっている場所を選んだ。昨年もこれらの木は樹液を出していた。
▲武蔵野だけでなく、全国どこでも見かける典型的な雑木林。
南東の畑に面して、帯状に100mほど広がっている。
▲左の写真の林を上空から見た図。そのうち30mほどの区間で調べる
と、樹液の出ている木が6本確認できた。(02/5/8現在)
2002年5月8日20:00 気温16.6℃気温の変化を見る
樹液にはクワガタの姿は全く見られない(めくれには潜んでいる)。日中は25℃以上になっても、17℃以下になるとかなり厳しい条件である
ことがわかる。この地点では現在、コナラの方がクヌギに比べ圧倒的に樹液の出方が活発である。
コナラA コナラB クヌギC クヌギD
▲ジュッという音を立てて噴出! 近くのめくれにはコクワが待機 ▲樹皮の谷間に出ている ▲ほんのわずか染み出た程度
2002年5月13日20:00 気温14.1℃
4本とも5月8日と同じ樹液の出ぐあいなので画像は省略。もちろんクワガタは出てきていない。ゴキブリとケシキスイのみ。
2002年5月14日20:00 気温19.5℃気温の変化を見る
コナラA,Bともコクワが2〜3匹ずつ樹液に来ていた。クヌギは相変わらず樹液の出方が悪く、クワガタはいない。
2002年5月21日20:00 気温15.4℃気温の変化を見る
4本とも樹液にムシの姿はなかったが、近くの木にはカブト・コクワが見られた。カブトはこのぐらいの気温でも十分活動できるようだ。
2002年5月28日20:00 気温18.1℃気温の変化を見る
4本ともコクワを発見。半月前に絶好調だったコナラAの元気がなくなったが、クヌギDは急に樹液を出し始めコクワがたくさん集まっていた。
コナラA コナラB クヌギC クヌギD
▲やや出方がにぶったようだ ▲広範囲ではげしく出ている ▲ほとんど乾いてしまっている ▲数ヶ所から出て流れ始めている
2002年6月10日20:00 気温21.6℃気温の変化を見る
コナラAはコクワが数匹、コナラBは多数のコクワとノコ、クヌギCはゼロ、クヌギDはコクワが多数集まり活況を呈している。
コナラA コナラB クヌギC クヌギD
▲黒部分は樹液痕になりつつある ▲泡の量が少なくなっている ▲少し垂れ始めてきた ▲泡を吹き広範囲に出てきた
2002年6月28日20:00 気温22.8℃
梅雨入りして半月ほど経過した。雨量も増えコナラ樹液ももうひとがんばりするかと思われたが、あっさり乾き始めた。いっぽうクヌギは2本とも
ジュージュー音を立てて泡を吹いている。この林では、明らかにコナラとクヌギで1ヶ月〜1ヶ月半ほどピークがずれているように感じる。
コナラA コナラB クヌギC クヌギD
▲ほとんど乾いて、コクワが一匹。 ▲白い泡もなく全盛期を過ぎた。 ▲泡を吹き全盛期の様相だ。 ▲ノコやコクワも喜ぶいい状態。
2002年7月18日20:00 
コナラA コナラB クヌギC クヌギD
▲一筋だけしっかり流れている。 ▲かなり乾いてしまった。 ▲蜜のよう。カブト2匹とカナブン。 ▲前回同様安定し、ノコとコクワ。
2002年8月12日20:00
コナラA コナラB クヌギC クヌギD
▲最後の踏ん張りか、どっと噴出。 ▲粘り腰で左右2条の流れに。 ▲明らかに衰退期に入った感じ。 ▲何とか持ちこたえている。
2002年9月2日20:00
コナラA コナラB クヌギC クヌギD
やや乾いて7月と同じような状態 ほとんど乾いて7月と同じような状態 樹液はさらに減少しめくれの中だけ ほとんど乾いてしまった
2002年10月2日20:00
4本とも9月と同じような状態。樹液が出ているのはほとんどめくれの内側のみ。コナラにはコクワが数匹ずついるが、クヌギには何もいない。