タイトーがアーケードで出していたゲームの移植版。
いまの 10 代の方などは想像できないかもしれないが,当時,ゲームセンターは不良のたまり場というイメージが強く,また実際店内は薄暗い照明に照らされて煙草の煙が立ちこめているという,まさに場末という言葉がぴったりの場所だった(余談だが,ゲームが大衆化しゲームセンターへの来場者が多様化するにつれて,従来の「ゲームセンター」という言葉のままではイメージが悪いということで,セガやナムコ系列の店舗を中心に「アミューズメントセンター」という言葉が使われるようになったのは有名な話である)。
当然そのような場所にくるのはほとんどが男性で,置いてあるゲームもシューティングなどといった男性好みの作品が中心だった。そんな中,タイトーが投入してきた本作品はかわいいキャラクターにメルヘンチックな設定と,女性を対象にしてきたとも思える異色な存在だった。
それでは簡単に内容を紹介しよう。ストーリーはこんな感じだ。
「恋人同士である“ミスターちゃっくん”と“ミスちゃっくん”。ある日のこと,いつものように二人でデートをしていたところ,“もんすた”が現れて二人の愛の証しである“ハート”を盗んでいってしまいました。ミスちゃっくんは叫びます。『私たちのハートを取り返して!』 ミスターちゃっくんはもんすたを追って,穴の中へと飛び込んで行くのでした」
ゲームは面クリアタイプの構成で,各面ごとに檻に捕らえられた「ハート」を助けることが目的となる。ちゃっくんの唯一の武器は「爆弾」(実はもう一つ,スペシャルアイテムを取ることにより,一定時間無敵の“スーパーちゃっくん”に変身できる)。これで迫りくる「もんすた」を倒しつつ,檻を破壊して「ハート」を救わなければならない。とはいえ,各面は迷路のような構造でなかなか思うようには進めない。その上時間制限もあったりして,あわてて爆弾をばらまいているうちに自分自身も爆発に巻き込まれてしまったり...。
とまあ,一見能天気に見えるゲーム内容も,実際に遊んでみるとけっこうシビアだったりする。それでも極端に難しいというわけではないので,落ち着いて遊んでいれば全面クリアもそう難しいことではないだろう。
ところで PC-6001mkII 版の本作品,実はちょっとした問題点がある。本体機種の機能の制限があるのか,アーケード版などではちゃっくんのキャラクターは 1/4 キャラ分ずつ移動するところを 1/2 分ずつ移動してしまうのだ。その結果,キャラクターの移動速度が速くなってしまうということのほかに,爆弾を落とすタイミングが取りづらくなってしまっているのだ。どちらも移植作品という意味ではオリジナルのゲームバランスを大きく崩してしまうものだけに,何とかしてほしかったところである(PC-6001 版だけを遊ぶ分には,そういう作品だと思っていれば別段何ともない)。
具体的には,下の図をご覧いただきたい(等幅フォントを使用のこと。なお,Netscape Navigator ではうまく表示されない場合もあるので注意)。これはちゃっくんが天井に張りついていて,中に入っていけない場所に爆弾を投げ込みたいという場面を表したものである。
■...床,天井,壁
○...ちゃっくん
■■■■■■■■■■■■
■ XXXX■
■■■■ XXXX■
○○○○ XXXX■ ←ここに爆弾を投げ込みたい
○○○○ XXXX■ (中には入れない)
○○○○ ■■■■■■■
■
この場合,普通はこのようにして簡単に爆弾を投げ込める。
■...床,天井,壁
○...ちゃっくん
◎...爆弾
■■■■■■■■■■■■
■ XXXX■
■■■■ XXXX■
○○○○ XXXX■ ←ここに爆弾を投げ込みたい
○○○○◎◎ XXXX■ (中には入れない)
○○○○ ■■■■■■■
■
ところが PC-6001 版では,同じことをやろうとしてもこうなってしまい,爆弾は下に落ちていってしまう。
■...床,天井,壁
○...ちゃっくん
◎...爆弾
■■■■■■■■■■■■
■ XXXX■
■■■■ XXXX■
○○○○ XXXX■ ←ここに爆弾を投げ込みたい
○○○○◎◎ XXXX■ (中には入れない)
○○○○ ↓ ■■■■■■■
落ちてしまう
結果として,PC-6001 版の場合,次のようにして爆弾を投げ込まなければならない。慣れないとタイミングを取るのが難しいうえに,当然この場合,投げ込むのに成功しても失敗してもちゃっくんは下に落ちてしまう。
■...床,天井,壁
○...ちゃっくん
◎...爆弾
■■■■■■■■■■■■
■ XXXX■
■■■■ XXXX■
○○○○ XXXX■ ←ここに爆弾を投げ込みたい
○○○○◎◎ XXXX■ (中には入れない)
○○○○■■■■■■■
↓ ■
落ちてしまう